茨城・日立市、福島へ避難訓練 東海第2事故想定 5キロ圏260人参加

広域避難訓練で県外にバスで移動した児童たち=福島県いわき市中央台飯野

日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村白方)の重大事故を想定し、同県日立市は5日、広域避難訓練を実施した。事故時に直ちに避難する半径5キロ圏内(PAZ)の坂下、久慈、大みかの3地区の住民約260人が参加し、避難先の福島県まで初めてバスで移動。学校から避難した児童を保護者に引き渡す手順も確認した。

同市や避難先自治体の職員、関係機関も含め約470人が参加。東海第2の使用済み核燃料プールの配管から冷却水が漏れて水位が低下し、冷却機能を喪失したとの想定で行われた。

原発から約4.5キロの市立坂本小(同市南高野町)には3~6年の児童22人と保護者、住民約30人が集まり、甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤について市職員から「服用のタイミングが重要。必ず指示があった場合に飲んで」などと説明を受けた。

バスは、3地区の一時集合場所となっている小学校や交流センターから出発。常磐自動車道を通って最初の目的地となる避難中継所へ向かった。坂下、久慈両地区の住民は同県いわき市の公民館や体育館まで約80キロ、大みか学区は同田村市総合体育館まで約130キロ移動した。

一部児童の保護者は別の車両で避難所に向かい、引き渡しまでの流れを確認した。小学1年の長男と参加した大内勇志さん(30)は「実際には道路渋滞も想定されるし、訓練だけでは見えてこない面がある。これを機に備えを考えたい」と振り返った。

坂下地区コミュニティ推進会長の大貫健さん(75)は約1時間半の移動を終え「マイカーでここまで来るのは大変。高齢者が多い地域なので避難にもう少し時間的な配慮があるといい。経験は地域に伝えていく」と語った。

日立市は市域全体が原発から半径30キロ圏に収まり、住民は福島県の17市町村に受け入れてもらう予定。市は本年度中の広域避難計画の策定に向けて作業を進めている。

小川春樹市長は訓練後、現場の状況把握や関係機関との連携などを課題に挙げ「これまでより一歩進んだ訓練ができた。教訓を実効性のある計画に生かしていく」と述べた。

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