沖縄の「トートーメー」って何? 中南米の県系人研修員、伝統的な信仰と習俗学ぶ 浦添市

 沖縄にルーツのある中南米の県系人研修員を対象にした「沖縄の伝統的な信仰と習俗」に関する講義が10月16日、浦添市のJICA沖縄で開かれた。沖縄国際大学などで非常勤講師を務め、年中行事に詳しい稲福政斉さんが、ヒヌカン(火の神)やトートーメー(位牌・いはい)について解説した。(浦添西原担当・比嘉直志)

 稲福さんはヒヌカンについて「古くからあった火への畏怖と中国のかまどの神信仰が融合してできた」と歴史をひもといた。健康や豊作、出産や入学の報告など、日常におけるあらゆることで拝まれ、「一家の守護神として位置付けられている」とした。

 まつり方は、3個の石を置いてかまどに見立てたが「沖縄戦の後、かまどそのものが消え、コンロの近くに香炉を置いた棚でまつるようになった」と変化について触れた。

 トートーメーは「『尊いもの』を示す言葉で、日本の仏教と中国の儒教の祭(さい)祀(し)の影響を受け、独自に発展した」と紹介。15世紀末から首里や那覇の上流階層で位(い)牌(はい)をまつり始め、庶民には18世紀以降に広がったという。「戦後からまつるようになった家庭もあり、地域により時代差がある」と指摘した。

 枠の中に複数の札を並べてはめ込む位牌は「沖縄以外ではあまり見られない」と特色を挙げた。

 研修員からは活発に稲福さんへ質問が寄せられた。「ヒヌカンは宗教か」との質問には「沖縄独自の発展を遂げた自然崇拝で、生活に結び付いた信仰」と答えた。「先祖は神様なのか」と聞かれた稲福さんは「子孫はウチカビを燃やして、あの世でもお金に困らないように願うので、宗教上の神様とは違う」との見解を示した。

 アルゼンチンやボリビア、キューバなどの中南米からの研修員8人は10月いっぱい、県内に滞在。文化講義や視察のほか、県立図書館で資料からルーツを探るなどして学びを重ね、帰国後は地域活性化事業に取り組む。

熱心に聞き入る中南米からの県系研修員ら=10月16日、浦添市・JICA沖縄
沖縄の信仰や習俗について解説した稲福政斉さん=10月16日、浦添市・JICA沖縄

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