五島・小田池に特定外来生物「オオフサモ」 投棄禁止を啓発 関係者ら、環境への悪影響懸念

小田池で繁茂している特定外来生物のオオフサモ=五島市大荒町

 長崎県五島市大荒町のため池「小田池」で、南米原産の水草で特定外来生物に指定されているオオフサモが増えている。投棄された可能性があり、在来種や農業への悪影響が懸念される。市内には他にも、問題を引き起こす外来種が生息しており、関係者らは「島の生態系を壊してしまう」と強く警鐘を鳴らす。外来生物への理解や一層の周知、啓発が求められている。

■違反者に罰則
 小田池で、水面に縦横最大5メートルほどにわたって確認できるオオフサモ。その周辺でも繁茂しているのが分かり、先月よりもその範囲が広がっている。
 関係者らによると、昨年までは確認されておらず、今年に入って投棄されたとみられるという。大荒町や近隣の平蔵町でも水路などに捨てられて、そのまま生育しているという。
 「在来種が生息しにくくなるほか、水流が滞り水質の悪化にもつながりかねない。投げ込みなどは絶対しないでほしい」。環境省五島自然保護官事務所は注意を呼びかける。
 オオフサモは多年草。国は外来生物法に基づく特定外来生物に指定。栽培や保管などを禁止しており、違反すると懲役などの罰則がある。
 ため池は市有地で、先月通報を受けた市農林課は国のマニュアルに沿って駆除し、投棄を禁止する看板の設置を検討している。
 同市内では他にも個人の無人販売所で、他の水草などとともにオオフサモが並んでおり、同法違反の恐れがある。

■「青い悪魔」
 市内では、さまざまな「侵略的外来種」が生息。五島の動植物を調査している五島自然環境ネットワーク代表の上田浩一さん(53)は「島では外来種が侵入すれば爆発的に増えてしまいがち。生物多様性は簡単に危機に陥る」と強調する。
 特定外来生物のアゾラ・クリスタータを福江や岐宿の一部地区の水路などで確認。特定外来生物の指定はないものの、南米原産の水草ホテイアオイは繁殖力が強い。「青い悪魔」と言われるほど生態系や農業施設などに被害を及ぼす。同省などによる生態系被害防止外来種リストの重点対策外来種に位置付けられ、世界的にも悪影響の報告数が多い。ペット店などで流通しているアマゾントチカガミも福江島各地で投棄され、野生化しているという。
 上田さんは、五島の魅力である自然風景が失われてしまう恐れに触れ、「地域の生き物が外来種に駆逐されれば風景は変わる。状況を常にチェックし保全する部署が市役所にも必要だ」と指摘する。


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