【憧れの茅乃舎レストランに行ってみた】福岡の里山にある「御料理 茅乃舎」のコースメニュー全部見せます!

「茅乃舎だし」で有名な茅乃舎ブランドは、そもそも福岡の1軒のレストランから始まっていること、知っていましたか? 茅乃舎の総本山、福岡の「御料理 茅乃舎」は、いつか行ってみたいと思っていた憧れのお店。今回念願叶って訪れることができました。茅乃舎だしを愛用している人ならきっと気になる「御料理 茅乃舎」の人気コースを、一皿一皿余すところなく実食ルポで紹介します!

里山に抱かれた「御料理 茅乃舎」

福岡・博多駅から車で約40分、里山の風景にとけこむように佇む「御料理 茅乃舎」。初めて見るのに懐かしいと感じてしまう、日本人にとっての原風景のようなレストランです。

親子のように寄り添う母屋と離れを眺めながら、猪野川にかかる橋を渡ると……

「御料理 茅乃舎」の暖簾が出迎えてくれます。

店内のホールは落ち着いた雰囲気。高い天井に大きな梁が渡り、開放的な空間です。ひとつひとつのテーブルに小さな野の花が飾られ、奥には三連竃が並んでいます。他に個室が5つ、さらに離れもあり。メニューは、ランチタイム、ディナータイムともに各種コースから選びます。

隣接するテラスを備えた喫茶スペース「茶舎(ちゃや)」では、こだわりの珈琲はもちろん、ビーフシチューやステーキ重などの軽食や、甘糀と焦がし醤油のバームクーヘン、きび餅ぜんざいなどのデザートをいただけます。

※軽食メニューは数量限定で11:00〜15:00まで

今回は離れの「楽舎(らくや)」でディナーをいただきます。こちらは、還暦など人生の節目やお誕生日など、大切な人たちと特別な時間を過ごすのにふさわしい、こじんまりとした茅葺の建物です。

今宵は「芽コース」を中心にいただきます!

席についてまず驚いたのは、席札。「や」は山法師、「ま」は曼珠沙華、「あ」はアザミなど、野の花をあしらったオリジナルのデザインが素敵です。こちらはコースを予約されたすべての方へのサービスなのだそう。ここにたどり着く前から自分を待ってくれている、そんな心遣いを感じ、心が温かくなりました。

本日は、「芽(めぶき)コース 6,000円」を中心にいただきます。メイン料理を5品から好みで選べる茅乃舎のプリフィックスコースです。お酒好きな筆者はコースの前半にペアリングするなら、とおすすめをたずね、日本酒の利酒セット(1,870円)をオーダー。久原オリジナルの辛口「久波良 純米大吟醸」、飲みやすくバランスのよい福岡の「田中六五(たなかろくじゅうご)」、久山町初の地酒プロジェクトから生まれた「our sake(あわさけ)」の3種をいただきます。

お酒が苦手な人も大丈夫。ソフトドリンクも、茅乃舎ジンジャーエール・甘糀サワー・熊本まるごとみかん・八女茶スパークリングティーなど魅力的なラインナップですよ。

先付「薩摩芋餅 みたらし餡」

先付は「薩摩芋餅 みたらし餡」。大根餅のようなもっちりねっとりとした餅に、ほどよい塩梅の甘辛みたらし餡がからみます。

前菜5種

小箱の蓋を開けると、鯖の燻製・秋の白和え・根菜のきんぴら・木の子のキッシュ・法蓮草の玉子焼き、5種の前菜が並んでいました。素材の持ち味と旬を生かすというお店のこだわりが詰まっています。

例えば、根菜のきんぴらという素朴な料理ひとつをとっても、それぞれの素材の持つ香りや食感が最大限に引き出され、新鮮な驚きがあります。

秋の白和えには、柿が使われていました。柿というと、その甘さが皿の主役になりそうですが、決してそんなことはなく、豆腐や胡麻のほのかな風味と青菜のみずみずしさも際立つ、どこまでも上品な白和えでした。

ブナのチップで燻したという鯖の燻製は、その力強さに「お!」となります。お酒がすすむ味わいです(笑)。

緑が美しい法蓮草の玉子焼きは、ひと口ほおばるとだしのやさしい味わいが染み出して、料理の原点となるだしの存在の大切さに改めて気づかされます。

素材にかける時間と手間を何より大切にしている「御料理 茅乃舎」。前菜の箱の中に、その想いがいっぱいに詰まっているように感じました。

大地の恵スープ

続くスープは2005年のオープンから変わらない『大地の恵』。大根や人参、薩摩芋などの根菜をたっぷりと使っています。まさに飲む野菜。長芋のシャキシャキ感や、あられ代わりの炒り米がメリハリを添えてくれます。生七味や柚子胡椒もお好みでどうぞ、とのことでしたが、これは何も足さずにただただ野菜の生命力を感じながらいただきたい。

蓮根豆腐、路代おばあちゃんの逸品

こちらも毎月必ずコースに組み込まれるという、季節の素材を使った豆腐と、「路代おばあちゃんの逸品」。長野路代さん(御年92歳!)というスローフードの達人のおばあちゃんに毎月シェフ自らレシピを教えてもらいに行くそうです。神無月は「小松菜と里芋の胡麻味噌和え」。路代おばあちゃんのレシピには、シェフが思いつかないような新しい発見があるそう。

この一品も、小松菜と里芋という組み合わせ、里芋をごろっと大きく切るところなどに、路代おばあちゃんならではの知恵が生きています。

こうしたつながりで郷土の料理が守られ伝えられていくというのは、本当に素晴らしい。その物語とともに、素朴な味わいをひとくち一口、大切にいただきました。

旬菜の一品

つながりというと、こちらもその背景を知るとよりおいしく感じられる、旬菜の一品「薩摩芋の天ぷらとバター焼き イタリアン野菜のサラダ添え」。こっくりと奥深い甘みの薩摩芋に、エンダイブやルッコラ、レッドソレルなどのスパイシーなイタリアン野菜が好相性な一皿です。

実はこちらの野菜、ちょっと驚きの肥料を使った土で育った野菜たちなんですよ。

それはなんと、茅乃舎だしを作るときに出る残りカス。肥料として土に鋤き込むと野菜の甘みが増すのだと、生産者の城戸さんは言います。わざわざ有機肥料を作るとなると、費用もかかるし、二酸化炭素も発生する。再利用する循環を作ることは、地球にもお財布にもやさしい一石二鳥の名案です。

茅乃舎だしの残りカスでつくった肥料で育った野菜が、食材としてレストランに還っていき、新しい料理となって客をもてなす。人のつながり、食のつながりを通じて想いが巡っていく。そんなことを考えながらいただく一皿は、いただく側も背筋が伸びるような気持ちになりました。

魚料理「鰆の幽庵味噌焼き」

この辺りでかなりお腹がいっぱいになってきたのですが、鰆の幽庵味噌焼きは柑橘の爽やかな風味でさっぱりといただけます。メインの前に少し甘いお酒をいただこうかなと思い、「久波良 梅さけ(880円)」をロックで。老舗の造り酒屋の日本酒に漬け込み、じっくりと熟成させたという梅酒は、想像以上に甘さ控えめ。南高梅の甘酸っぱさが果実丸ごとギュッと濃縮されたような風味が、まるでお口直しのグラニテのようにピッタリでした。

メイン料理「十穀鍋」

いよいよ、茅乃舎だし誕生のきっかけとなった「十穀鍋」をいただきます。鍋の具材は、赤米・黒米・香り米・キビ・ハト麦・丸麦・押麦・粟・ヒエ・発芽玄米の十穀と、しめじ、ネギ、ごぼう、クコの実。そこに黒豚を並べ、水菜をのせます。だしのいい香りが湯気とともに立ち上ってきます。

里山の滋味あふれる十穀鍋。訪れるお客さんから「家庭でも同じ味を作りたい」という声をきっかけに誕生したのが「茅乃舎だし」です。

ちなみに、メイン料理は十穀鍋のほか、「黒豚と旬菜の出汁しゃぶ(2名以上から)」「地鶏の和風フリカッセ」「嘉穂牛照り焼きステーキ(+1,980円)」「嘉穂牛しゃぶしゃぶ(+1,980円)」からも選べます。

釜炊きご飯 味噌汁 季節の香の物

締めは釜炊きご飯を卵かけご飯にしていただきました。「白身までおいしい」と同じテーブルで話題になっていた濃厚な卵を十穀米にかけると、満腹なはずのお腹にするすると入っていきます。

その土地のものをいただきながら、その土地に想いを馳せる。今ここにいる自分を実感する。

当たり前のことのようでいて、スマホで常時あちこちとつながっている現代の旅では、当たり前でないように感じます。カメラロールに収まらない何かを、今回の旅で自分はどれだけ感じられただろうかと、自らに問う夜でした。

茅乃舎の想いを体現する茅乃舎の総本山

「御料理 茅乃舎」は、地域に根差した日本の文化を未来へ受け継いでいくという茅乃舎の想いを体現する茅乃舎の総本山。

食品をつくる会社として、次世代のためになすべきことが何か。そう考えていた頃にイタリアが発祥とされるスローフード運動と出会い、2005年にこのレストランが誕生。「郷土の料理を守る」「生産者を応援する」「子どもたちに味覚の教育をする」というスローフードの考えが、その始まりにはありました。

毎晩茅を燻し手入れを行うという圧巻の茅葺きは、西日本最大級と言われます。茅を葺くのは、大分県日田市の職人さんたち。すべて手仕事です。

てまひまをかけること。心地よく過ごせるように、心を尽くして準備すること。見えないようでいて、そのてまひまは、凛とした佇まいに現れる。奥深い味わいを醸し出す。自分もそんな、てまひまかけた人生を送りたいものだなあとしみじみ感じた、秋の1日でした。

御料理 茅乃舎

福岡県糟屋郡久山町大字猪野字櫛屋395-1

092-976-2112(直通)

※お電話混雑時には、受付センターにつながる場合がございます。

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無料送迎車あり (先着順1台・定員9名・4名から受付・要予約)

※天神・日銀前、JR博多駅、JR千早駅、JR篠栗駅など最寄の駅まで送迎可

営業時間

【御食事】

11:00~15:30(最終入店 13:30)

17:00~21:30(最終入店 20:00)

【茶舎】

11:00~21:30(ラストオーダー 21:00)

水曜定休(水曜日が祝日の場合はその翌日)

※11/13(月)・11/20(月)は、15:30(レストラン最終入店13:30・茶舎ラストオーダー15:00)までの営業とさせていただきます。

※10/31(火)・11/7(火)・11/14(火)・11/28(火)は、20:00(レストラン最終入店18:30・茶舎ラストオーダー19:30)までの営業とさせていただきます。

https://www.kayanoya.com

※価格はすべて税込です。

※店舗や時期により商品の仕様や品揃え、価格が変わる可能性がありますので、ご注意ください。

※店舗営業については最新情報をご確認ください。

[All Photos by Aya Yamaguchi]

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