レクサスドライバーの「大きな特権」。IMSA GTDプロ王者がトヨタGR010ハイブリッドを初テスト

 ベン・バーニコートは、TOYOTA GAZOO RacingからWEC世界耐久選手権のルーキーテストに招待され、ジャック・ホークスワースとともにトヨタGR010ハイブリッドを試乗できたことは「大きな特権」だと語った。

 2023年シーズンのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で、バッサー・サリバンとレクサスとともにGTDプロクラスのシリーズチャンピオンに輝いたふたりのイギリス人ドライバーは、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われた日曜日のテストで、ハイパーカーのステアリングを握って初めて周回を重ねた。

「僕たちはふたりともTOYOTA GAZOO Racingとここに来ている。チームは1戦を残してマニュファクチャラー選手権を制したあと、(テストの)前日には8号車のトリオがワールドチャンピオンに輝いたばかりで、このラウンドを惜しんでいる」とバーニコートはSportscar365に語った。

「最高のマシンに乗るためにつねに努力しているし、ここは世界チャンピオンがいる耐久レースのトップクラスだ。これ以上いいことはないよ」

「レクサス/トヨタという大きなファミリーに招待されたことを誇りに思っている」

 レクサスの両ドライバーはELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズでLMP2マシンをドライブした経験があるが、バーニコートとホークスワースは日曜日の朝にトヨタのマシンを初めて触った印象から、GTカーに近いハンドリングを感じたという。

 ふたりのドライバーは、WECノミネートドライバーである17歳の“新星”ジョシュ・ピアソンと7号車のトヨタをシェアしながら、午前中にそれぞれ10周ほど走行した。

「一番大きいのは、マシンが少し重く感じることだと思う」とホークスワースはLMP2との比較した印象を述べた。「だから、プロトタイプというよりはGTのフィーリングに近い感じだ」

「その面ではLMP1時代よりも調整が非常に簡単だ。当時のクルマは1周10秒も速かったし、剛性もはるかに高く高速コーナーもかなり速かった」

「(GR010ハイブリッドは)GTのようなものだ。想像しているより、間違いなくGTカーに近いよ」

 一方で彼はハイブリッドシステムの存在を挙げ、このクルマの特異性を主張した。

「まったく違う部分としては、ハイパーカーはハイブリッドエンジンによってはるかに多くのパワーがある」とバーニコートは付け加えた。

「クルマとしてはかなり重いので、ロール感覚はGTに少し似ている。プロトタイプのスタイルとGTのスタイルのハイブリッドだね。最初のラップは間違いなく、予想していたようなものではなかった」

「でも、ハイブリッドエンジンの加速と、リジェネ(リジェネラティブ/回生)による減速にはとても感心したよ。本当に速く止まるんだ。驚いたよ!」

レクサスRC F GT3を駆り、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスでシリーズチャンピオンを獲得したベン・バーニコート(左)とジャック・ホークスワース(右)
ベン・バーニコートが乗り込んだ7号車トヨタGR010ハイブリッド 2023年WECルーキーテスト

■「すべてが難しい」複雑なシステム

 北米のウェザーテック選手権でレクサスRC F GT3をドライブするホークスワースとバーニコートは、ハイパーカーをテストするにあたって事前にGR010ハイブリッド・マニュアルの“ライト版”を渡され、ボタンの位置やプロトタイプのその他の要素を学んだ。

 さらに、ドライバーたちはルーキーテストに先立ち、ドイツ・ケルンにあるTOYOTA GAZOO Racingヨーロッパ(TGR-E)でシートフィッティングやシミュレーターセッションを受けた。

「僕にとっては、コースを学び、クルマとシステムを学ぶようなものだった」とホークスワースは説明した。

「トラック上ではとても複雑で、たくさんのスイッチや情報が与えられ、ホイールのどこに何があるのかを知る必要があるんだ。難しいことはひとつやふたつだけじゃなかった。正直なところ、すべてが難しかったよ」

「クルマの中でできることの多さが、たぶん一番難しいことだと思う。たくさんのシステムがあるからね」

 ホークスワースは近年、トヨタのWECとレクサスIMSAプログラムの間でドライバーのクロスオーバーが進むなかで、GR010ハイブリッドをテストする機会を得たことに感謝している。

「今年のデイトナではマイク(・コンウェイ)が僕たちのマシンに乗っていたので、クロスオーバーがあった」と彼は述べた。

「トヨタ/レクサスファミリー全体がグローバルに展開し、ドライバーたちはデイトナでレースをするためにアメリカに行き、僕たちはここに来てこのテストを行った」

「彼らが僕たちにこれをやらせてくれて、チャンスを与えてくれるのはメガだ」

ベン・バーニコートを間にはさみ、テクニカルディレクターのパスカル・バセロン(左)と握手を交わすジャック・ホークスワース(右) 2023年WECルーキーテスト

■2024年のIMSA GTDプロタイトル防衛に集中

 バーニコートとホークスワースは、WECのハイパーカーやアコーディスASPチームが計画しているレクサスRC F GT3でのLMGT3プログラムに参加する可能性を軽視し、2024年ウェザーテック・スポーツカー選手権でのタイトル防衛に集中すると述べた。

 ル・マン24時間で3台目のトヨタGR010ハイブリッドが登場する可能性は低いと考えられている。TGRテクニカル・ディレクターのパスカル・バセロンは先週末、記者団に対し、来年のル・マン24時間レースは2台体制で臨むだろうと語った

 ホークスワースは今回のルーキーテストに参加について次のように述べた。「ここに来ることができて本当にうれしい。成功を収めた年の終わりに、このようなことができるのは本当にうれしいことだ」

「いまのところ、僕はアメリカでのレクサスのプログラムに集中している」

「それが将来どこにつながるかは誰にもわからない。物事がどう転ぶかなんてわからないけれど、今のところ、自分たちがやっていることにとても満足しているんだ」

「今シーズンは大成功を収めたし、ここに来てこの一員になれたことは素晴らしいことだ」。

 バーニコートは「これ以上ないほど同感だ」と付け加えた。

「WECルーキーテストに招待され、このような機会を得ることができて、僕たちはふたりとも本当に感謝している」

「信じられないようなことだけど、僕たちは文字どおりただ試すためにここにいるんだ。今はそれ以上のことはない」

「僕たちは来年、IMSAでタイトルを防衛することを楽しみにしている」

WECルーキーテストでは、ホセ-マリア・ロペス、ジョシュ・ピアソン、ベン・バーニコート、ジャック・ホークスワースの計4名が7号車トヨタGR010ハイブリッドを走らせた
「今朝起きたとき、TOYOTA GAZOO Racingがマニュファクチャラーとドライバーの世界チャンピオンを勝ち取ったクルマをドライブできるということに、本当に興奮した」と述べた26歳のベン・バーニコート
32歳のジャック・ホークスワースは、「世界トップレベルのチームの仕事ぶりや、それがどう組織化されて働いているのかを目の当たりにし、本当に驚かされた。世界チャンピオンを獲得したチームでの、ハイパーカーのテストに初めて参加できたのは、とても良い体験になった」とコメント

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