【今週のサンモニ】〈緊急寄稿〉AI画像をめぐる「フェイクニュースのフェイクニュース」|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。AI画像をめぐったこんなやりとりがあったので、緊急寄稿!

番組視聴者からの指摘

『サンデーモーニング』が2023年11月5日に放送した「画像生成AI」の話題に関連して、番組視聴者の方がSNSで次のような指摘を行いました。

番組では実際に次のような報道がありました。

アナウンサー:この画像はイスラエル・ネタニヤフ首相のSNS顧問だった人物が投稿したもの。ハマス指導者ハニヤ氏と思われる人物がプライヴェート・ジェットに乗る画像などとともに「彼らは贅沢な暮らしをしている」とポスト。「ハマスこそパレスチナ人の敵だ」と訴えたのです。しかし、これらも生成AIで作られたフェイク画像でした。

認知操作を行ってフェイクニュースを

アナウンサー:SNSなどの情報の真偽を検証する古田大輔さんにこうした画像を検証してもらうと…

日本ファクトチェックセンター・古田大輔編集長:今だったら人間の目で不自然なところを探せるが、技術がさらに進むと人間の目では見分けがつかない偽情報・誤情報が出てくる。AIでつくったものはAIが検知・検証するようなツール・システムが必要になるし、同時にAIで偽情報・誤情報を拡散させることの歯止めになるようなルール作りが必要。

仮にこの指摘が事実と立証されれば、「あったこと(事実)」を「なかったこと(架空:AI生成画像)」にしたと同時に「なかったこと(架空:AI画像生成行為)」を「あったこと(事実)」にしたというもうワケのわからない究極の「フェイクニュースのフェイクニュース」ということになります(笑)。

『サンデーモーニング』は明確にこの画像がフェイクニュースであると断定しています。ちなみに、古田氏の名誉のために古田氏のXへの投稿を紹介しておかなければいけません。

Fact Check: Photos Of Hamas Leaders 'Living Luxuriously' Are NOT AI-Generated | Lead Stories

映像シークエンスを見る限り、多くの人は古田氏がこの画像をフェイク認定したと認識すると推察されますが、古田氏はそれを明確に否定しています。

つまり、古田氏の見解が真実であると仮定すると、『サンデーモーニング』はあたかも古田氏がこの画像をフェイク認定しているかのような認知操作を行ってフェイクニュースを流したことになります。

サンモニを鵜呑みにしないようにしましょう

この映像シークエンスをもとにして、次のような主張がスタジオトークで展開されました。

浜田敬子氏:(AI生成画像は)ウクライナとロシアの戦争くらいからかなり出回って来て、結局、偽の情報によって私たちの感情が動き、それによってどちらの国を支持するとか、戦争を支持するとかにも繋がってきているので、世論の操作が簡単にできるようになってきている。これが過去の米国の大統領選挙にも影響してきている。何が本当で何が真実なのかを見極めるのが非常に難しくなってきている。

渡部カンコロンゴ清花氏:この三週間、本当にXの中で今出ていたようなフェイク画像をたくさん見た。悪意があってシェアをするだけではなくて、正義感の中でシェアした結果、あれだけ何千の「いいね」が付いたりする。リツイートする前に一息ついて出典に戻るということだったり、普段から信頼できる専門家や実務家を自分の中で持っていくのも、AIの負の側面に引っ張られないように自分で判断して行く時に大事だ。

関口宏氏:まずは出てきたものを鵜呑みにしないことだね。いつも「ひょっとすると」という感覚を持っていないとわかんなくなっちゃう。

フェイクニュースを流すマニピュレーターは、しばしば、メディア・リテラシーの低い情報受信者に対して【感情に訴える論証 appeal to emotion】を使うことで、情報操作します。

[感情に訴える論証]とは、情報受信者の感情を根拠に、言説の真偽を判断させる【論理的誤り logical fallacy】です。今回議論となっているフェイクニュースは、感情に訴える論証の一つで、スケープゴートに対する嫉妬心を情報受信者に喚起させて自説に導く【嫉妬心に訴える論証 appeal to envy】です。

感情に訴える論証|メディアリテラシー

そもそも感情に訴える論証は、『サンデーモーニング』をはじめとするテレビが世論操作に散々悪用してきたものであり、『サンデーモーニング』自体がこのことを言い出すのは笑ってしまうしかありません(笑)。

そして、今回の場合、何が本当で何が真実なのかを見極めたり、一息ついて出典に戻るということができずに、「いつもひょっとすると」という感覚を持つことなく、出てきたものを鵜呑みにしてしたのは、SNSを説教している『サンデーモーニング』自身であったということになります。

AIの負の側面に引っ張られないように自分で判断して行く時に『サンデーモーニング』を信頼するのはやめておいた方がよさそうです。

過去にも衆院選直前にフェイクニュースを放映

なお、『サンデーモーニング』は、ことあるごとに、テレビの立場を奪う存在であるSNSを目の敵にしており、過去にもありえないフェイクニュースを流してSNSを貶めています。

ネットの言論を貶めるTBSサンデーモーニング

ちなみに、このフェイクニュースは、衆議院選挙の1週間前に放映されたものであり、選挙結果に影響を与えた可能性も十分に考えられます。

もし『サンデーモーニング』の当該報道がフェイクニュースであったのであれば、SNSでこの画像をリツイートした人の名誉や人権にもかかわることなので、TBSは事の真偽を確認した上で、可能な限り早く、テレビ放送で訂正し謝罪することが必要であると考えます。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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