2023年11月の星空情報 秋の夜空と木星と天王星

11月、冷たい木枯らしが吹き始め、星空もどこか寂しげです。

3つの1等星からなる「夏の大三角」は西に傾き、南の空の低い所に「みなみのうお座」の1等星フォーマルハウトがぽつんと輝くばかりとなり、彩りに欠けたように感じられます。

そんな11月の星空ですが、ひとつの絵巻物のように壮大な物語を楽しむことができます。
まず、南の空を見上げると、秋の四辺形が描かれています。これは翼の生えた純白の天馬を描いた「ペガスス座」の体の部分です。

四辺形の北東側の星は2等星のアルフェラッツです。名前の意味は「馬のへそ」ですが、こちらは「アンドロメダ座」の額の星に当たります。

アンドロメダ座からさらに北側には、「人」という漢字の形をした「ペルセウス座」、Wの形をした「カシオペヤ」座、それに五角形の「ケフェウス座」が並んでいます。

秋の四辺形の東側の2つの星を結んで南へ伸ばすと、2等星のデネブカイトスが見つかります。こちらは「くじらの尾」という意味で、名前の通り「くじら座」のしっぽの星です。神話では海の怪物ティアマトであると語られています。

これらの星座は、一つの神話でつながっています。

古代エチオピアの王妃カシオペヤは、愛娘であるアンドロメダの美しさを誇りに思うあまり、「私の娘は海の妖精ネレイドの姉妹たちより美しい」と言ってしまいます。

そのため、ネレイドの祖父である海の神ポセイドンの怒りを買い、怪物ティアマトを送り込まれてしまうのです。

海を荒らし、人々を襲うティアマト。古代エチオピアは恐怖と混乱に包まれました。

ケフェウス王が天に伺いを立てたところ、アンドロメダ姫をティアマトのいけにえに差し出せば海は凪ぐとのお告げが下され、アンドロメダ姫は鎖で海岸につながれてしまいます。

アンドロメダ姫がティアマトに襲われそうになったまさにその時、ペガススにまたがったペルセウスが通りかかります。ペルセウスは、見たものすべてを石に変えるというメデューサの首を持っていました。ペルセウスがティアマトの目の前にメデューサの首をかかげると、ティアマトは石になり海に沈んでいきました。

古代エチオピアには再び平和が訪れ、ペルセウスとアンドロメダは結婚して幸せに暮らしたということです。

神話上つながりのある星座はいくつかありますが、ここまで多くの星座が一度に登場する物語は他にありません。ひそやかに見える秋の空ですが、実はドラマチックな物語が広がっているのです。

秋の夜長、星の物語に思いを馳せながら空を見上げていると、いつの間にか夜は更け、東から1等星の群れが上ってきます。1年のうちで最もあでやかな星空が見られる季節、冬が訪れようとしています。

【▲ 2023年11月中旬20時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】

■木星と天王星の衝

2023年11月には、木星と天王星が衝(しょう)を迎えます。衝とは、地球から見て外惑星(地球の外側を公転する惑星)が太陽の反対方向に来て、太陽-地球-外惑星と直線上に並ぶ瞬間をいいます。

地球に最も近付く衝の頃の外惑星は明るく、また一晩中見られることから、観測に最も適した時期となります。

木星の衝は2023年11月3日です。前述のくじら座の北側(おひつじ座の領域)に位置し、マイナス2.9等級という抜群の明るさを誇ります。街中でもすぐに見つけることができるでしょう。

天王星の衝は2023年11月14日です。木星のやや東側(おひつじ座の領域)に位置していますが、光度は5.7等級と、街明かりのない澄んだ空でなんとか見えるレベルの明るさです。

双眼鏡や望遠鏡を使えば十分観測可能で、高倍率のものであれば青緑色に輝く様子も見られるでしょう。

Source

国立天文台 -ほしぞら情報 東京の星空・カレンダー・惑星(2023年11月)
国立天文台 -ほしぞら情報 衝を迎える木星が見頃(2023年11月)
・天文年鑑2023 天文年鑑編集委員会編著 誠文堂新光社

文/sorae編集部

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