【MLB】 大谷翔平はドジャースにフィットしない? “大谷の移籍先最有力”と言われるドジャースが持つ選択肢

写真:史上最高額契約を確実視される大谷翔平©Getty Images

2023シーズンはレンジャーズの世界一により幕を閉じ、ストーブリーグが始まった。その目玉が史上最高額契約が確実と言われる大谷翔平の去就である。

移籍先の最有力候補と言われているのが、圧倒的な実力と資金力を誇るドジャースだ。11年連続でプレーオフに進出しているものの、世界一になったのは一度のみ。プレーオフでは3年連続で番狂わせの末に敗退しており、停滞感が漂っているのは事実だ。

そこで大谷の獲得が噂されるわけだが、ドジャースの目下最大の課題は投手力だ。来年の開幕ローテで確固たる実績を持つのはウォーカー・ビューラーのみで、そのビューラーもトミージョン手術明けとなる。大黒柱のクレイトン・カーショウは肩の手術を受け、長期離脱が決定した。

一方で、トミージョン手術のリハビリから復帰するまで大谷が入るであろうDHには、先発投手ほどの大きなニーズはない。今シーズンDHを務めていたJ・D・マルティネスはFAとなってしまったものの、ドジャースはマルティネスにクオリファイング・オファー(QO)を与えることができる。

QOの提示によって、ドジャースはマルティネス残留の可能性を上げられる。現在37歳のマルティネスがQOを受諾する可能性があるうえ、拒否された場合も、ドラフト指名権を失うことを恐れて他球団はマルティネスに食指を伸ばさないシナリオがあり得る。

もちろん、マルティネスがいかに優秀な打者といえど、メジャー最高の攻撃力を持つ大谷とは比べようがない。しかし、大谷を獲得する資金で、マルティネスというある程度の打者を確保し、なおかつ弱点の投手補強に動けるとなれば話は変わってくる。

仮に大谷の年俸の年平均を5000万ドルとした場合、QOの2032万5000ドルでマルティネスを、残りの3000万ドル近くで山本由伸やアーロン・ノラといったエース級の先発投手を確保した方が、理に適っているのは確かだ。

総額で4億ドル以上は間違いなく、5億ドルに達するとも言われている大谷との契約の負担は重い。ドジャースの贅沢税ラインまでのサラリースペースはおよそ7484万ドル(『Cot’s Baseball Contract』より)と言われている。大谷を獲得したとして、FA市場から複数枚の先発投手を獲得しようというにはいささか心許ない。

確かな資金力を持ちながら、ドジャースは大型契約を乱発するわけではなく、ムーキー・ベッツやフレディー・フリーマンといったリスクの低い選手にしか大型契約を与えていない(そしてベッツにしてもフリーマンにしても、年平均は3000万ドルに達しない)。今年のワールドシリーズでMVPを獲得したコリー・シーガーとの再契約も見送っていたほどだ。

ドジャースは必要とあらば贅沢税を超えることをいとわないだろう。だが、徹底したリスクヘッジを旨とするドジャースが二刀流として再び稼働するのか、稼働したとして大きな負担に耐えられるのかというリスクを承知した上で、大谷に生涯契約のような長期契約を与えるかは疑問だ。

大谷の契約はリスクが大きく、ドジャースは他にも理に適った選択肢を持っている。しかし、それでもドジャースが新天地の最有力候補となっているのは、ドジャースの停滞感を打ち破るためラストピースとしての、大谷への理屈を超えた期待感があるためだろう。

結局、ドジャースが大谷に興味を示さないということはないはずだ。しかし、ドジャースはかつて2018年のオフにブライス・ハーパーに4年1億8000万ドルの契約を提示したように、“年平均は高くとも短期間”の契約を模索するところから始めるのではないだろうか。

文=大鳥敬太

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