佐田岬ドラマ その2 絶景と海の幸

佐田岬半島を撮るという仕事をいただいた。以前から時間ができたら撮りに来てはいたが、仕事として撮影するのは今回が初めてのことだった。

半島の有り様や歴史などについては前月の原稿で少し述べているが、知っているようで実は知らなかったことなどもたくさん発見できた。その一つに「霧」がある。これが意外なのだ。実際に撮影してみて私も驚いた。この細長い地形が果たしている役割がどうやらあるとみた。まだこれからもっと撮り込んでいかなければはっきりとは言えないが大洲盆地なども絡んでいそうな気配を感じる。

■霧の中を舞うアサギマダラ

霧の中を舞うアサギマダラ

春、4月下旬頃に一度やってくる。北へと向かう途中でこの地に立ち寄るのだ。数こそそれほどたくさんではなかったが、霧の中をまだ咲いてもいないフジバカマに群がっていたのだ。

現在、人気のこのアサギマダラは、10月ともなればそれはたくさんやってくる。南へ向かう途中に立ち寄るものだが、北へ向かうときとは違って大切な羽根は既にボロボロ状態で観ているだけで悲壮感が漂っているのだ。

でも、このアサギマダラが多くのスマホカメラマンや写真愛好家の皆さんを惹きつけており、一つの観光素材としてその地位を確立しているから凄い。

■絶景の宝庫

番匠鼻:瀬戸内海側で人気の絶景釣り場

瀬戸内海側では特に人気のある「番匠鼻(ばんじょうばな)は釣り場としても知られている。私がここを訪れたのは5月初旬だったがこのときも釣り人がいた。岩場をよく観ていると二人ほど目につく。駐車場からは数百メートルの遊歩道が整備されており、岩場も手すり付きの石段などがしっかりしている。地域でもここが絶景という方々は多く、訪れる方々の多いことを物語っている。

しかし、気になったのはこの駐車場の手前の森の中にある「六社神社」だ。ここでは毎年5月3日に開催されていた「神崎神楽(こうざきかぐら)」が継承されているのだが、聞くところによるとコロナ禍による演舞中止がたたって高齢化していた演舞者が次第にできなくなっていき、現在では非常に厳しい状況に陥っていると聞く。次年度、私に仕事がいただけるとしたら「生活・伝統文化」に絞って調査を兼ねた撮影をしてみたいと考えている。これが実質的なプロデュースに繋がっていくと確信しているからだ。

■海の幸

素潜り漁で若き海士が水揚げする伊勢エビ

佐田岬半島の先端部分の海域は豊かな漁場として知られる。ここでは若き海士たちが素潜り漁に従事しており、その目の輝きと笑顔に、将来佐田岬を背負って起つ後継者であることを確信した。

中之浜、平礒地域の蜜柑農家も若き後継者の皆さんが頑張っており、今、こういう人たちに集まっていただいて撮影をすすめているところだ。何かが生まれることを確信している。

佐田岬ドラマだ。

■街づくり写真家 河野達郎写真展

大阪でこの佐田岬ドラマをご覧いただく写真展を開催中です。

タイトル:『山河の軌跡』あの時ボクが観た景色を百年先のみんなに伝えたい

日 時:11月4日(土)~11月24日(金)

場 所: ソニーストア大阪αギャラリー

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 河野達郎(こうの・たつろう) 街づくり写真家 日本風景写真家協会会員

© 株式会社ツーリンクス