[社説]子ども医療費助成 一律18歳までの実現を

 子ども医療費を無料化するための助成対象年齢を引き上げる自治体が県内で増えている。

 今年4月1日現在、41市町村のうち中学生(15歳の年度末)までの通院費を助成しているのは27市町村。高校生(18歳年度末)までの助成も14市町村に達した。

 入院費も中学生までの助成は26市町村で、15市町村が高校生まで助成している。

 2年前に比べ中学生の通院費助成は25カ所増加。就学前までの助成から引き上げたところもある。全市町村が中学生までの医療費の無料化で足並みをそろえた。

 急速に年齢が引き上げられてきた背景には県が昨年度、通院費の助成対象を中学生まで拡大したことがある。市町村の経費の2分の1を補助するもので、年齢の引き上げを大きく後押しした。

 それでも地域間の医療費助成の差は残る。

 子どもの医療費を自治体が無償化した場合に、国が国庫負担金を減額する「国保ペナルティー」の影響があるからだ。

 不要な受診を抑制する措置だが、財政力の弱い小規模自治体にとっては年齢引き上げの壁となっている。

 岸田文雄政権は6月、異次元の少子化対策実現のための「こども未来戦略方針」を閣議決定。その中で、子育てに係る経済的支援の一つとしてペナルティーを廃止する方針を打ち出した。

 しかし、実施時期は未定のまま。国の措置が医療費助成の足かせになっている状況を見れば、廃止を急ぐべきだ。

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 「こども医療費助成制度」は、病気やけがで医療機関を受診した際の自己負担分を市区町村が助成する制度。そのため市区町村によって対象年齢や、一部自己負担が生じるなど内容に違いがある。

 全国では助成する1741市区町村のうち約7割に当たる1202カ所が高校生までの通院費を助成。入院費はさらに増え1266カ所が高校生まで実施している。

 自治体の多くは地域に子育て世帯を増やす目的や、子どもを育てやすい環境づくりの一環として年齢を引き上げており、高校生までの通院費助成は6年前に比べ200カ所、入院費も135カ所増えた。

 一方、県内で高校生までの医療費助成を実施する自治体は約3割にとどまる。

 子どもの貧困率の高さを考えれば、どの地域でも平等に医療費助成が受けられるようにするべきだ。県内でも高校生までの助成をさらに増やしていかなければならない。

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 貧困が健康に及ぼす影響は大きい。子どもの健康格差が指摘される中で、医療費助成は重要な子ども支援策の一つとなっている。

 異次元の少子化対策に向け全国知事会は4月、全国一律の子どもの医療費助成制度の創設を早期に実現するよう求める意見書を国に提出した。

 自治体の財政力に応じて、医療費助成に地域間格差が生じてはならない。

 国の責任で真に実効性のある子ども・子育て支援策を講じるべきだ。 

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