万博、不要「7割」

 万国博覧会の歴史は1851(嘉永4)年のロンドン大博覧会に始まる。会場を造る時のこぼれ話がある。邪魔な巨木を切ろうとしたら、林務に当たる役人がかたくなに認めない▲設計者は仕方なく、巨木を会場の中に取り込んだが、それをねぐらにするおびただしい数のスズメが会場を飛び交った。言いようによっては“自然との共生”…かもしれない▲2005年の愛知万博では本格的に「自然の叡智(えいち)」がテーマになる。さかのぼって1970年の大阪万博は「人類の進歩と調和」を掲げ、高度成長期の坂道を上る人々に前を向かせた▲入場者数は6420万人を超えた。「万博の歴史」(小学館クリエイティブ、平野暁臣(あきおみ)さん著)によると、米国のアポロ計画で持ち帰られた「月の石」などの展示に、人類の近未来を人々は重ね見た▲共同通信社の最近の世論調査では、2025年の大阪・関西万博を「不要」としたのは7割近くに及んでいる。会場整備費が当初の1.9倍、建設工事の遅れ…。熱気あふれる往時が途方もない遠景に思える▲「万博の歴史」にある。〈いま「万博」に…かつての輝きはありません。日本だけでなく世界で、です〉。多くの国が“そこそこの付き合い”でお茶を濁している、と。人々に前を向かせる絵をどう描いたらいいのだろう。(徹)

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