岸田首相、事実上の「官製春闘」宣言 身内離れ、さらに悪化する気配

岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相が6日の政府経済財政諮問会議で「来年の春闘に向けて先頭に立つ」と明言したことが波紋を広げている。事実上の「官製春闘宣言」だが、自民の強固な支援母体である企業経営者の離反を招く危険をはらむ。すでに内閣支持率が自民党支持率を下回る現象が慢性化している中で、「打つ手が裏目裏目。経済界など身内が見放し離れていく状態」(自民幹部)がさらに悪化する気配だ。

 岸田首相の発言は経団連の十倉雅和会長が出席した場であった。「来年の春闘に向けて経済界に対して私が先頭に立って賃上げを働きかけていく」との内容。経団連関係者は「首相官邸で団交まがいの場面とは驚いた」と苦笑いだ。

 6日夜に横浜市内であった県内経営者有志の懇親会でも話題となり、政府や首相への不信が漏れた。

 「岸田総理がはちまきをして経営者と闘うというわけか」。横浜市内の中堅企業の社長はそう皮肉り「それなら自民党が率先して企業・団体献金を禁止し、その分を人件費に回せば納税で優遇するといった新たな法律をつくればよろしい」と注文を付けた。

 政府関係者によると、首相は今月中に経済界や労働団体の代表者と意見交換する「政労使会議」を開く調整に入った。この中では賃上げに向けて、人件費上昇分や原材料費高騰分を製品やサービスの価格に上乗せする「価格転嫁」が議題となる見通し。「議論の中身が『物価高をさらにあおる』との批判対象になりかねない」(自民政調関係者)との懸念も広がる。

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