「応援に恩返しを」 復興目指し歩み続く 茨城県内大雨2カ月 北茨城の水産加工業者

加工生産を再開した「いりまん水産商店」。メヒカリの丸干しが次々とパック詰めされている=北茨城市大津町北町

台風13号に伴う茨城県内の大雨被害から8日で2カ月。浸水被害に遭った北茨城市の水産加工業者は復興に向けた歩みを進め、一部で生産再開の動きが出てきた。本格再開には至らないものの、事業者たちは取引先から届く応援に「恩返ししたい」。間もなく始まる年末商戦に間に合わせようと復旧を急いでいる。

9月8日の大雨で、店舗脇を流れる川が氾濫して工場4棟が浸水した同市大津町北町の水産加工業「いりまん水産商店」は10月下旬、約50日ぶりに生産を再開した。3代目社長の上神谷(かみかべや)光男さん(51)は「やっとここまで来られた。恩返しの気持ちで会社を立て直したい」と力を込める。

同社は機械類のほか、保管中の商品や原料の魚計8トンの廃棄を余儀なくされた。被害額は7日現在で9000万円超に上る。

現在は妻の順子さん(47)や従業員4人とともに、イワシやメヒカリを1日当たり計700キロほど干物や調理用商品に加工し、地元量販店や県内市場などへ出荷しているという。

注文も増えており、上神谷さんは「取引先の応援がありがたい」と感謝しきり。顔見知りの運送業者や漁業関係者は、被災から2カ月たった現在も店に顔を出してくれる。上神谷さんは「みんなの気持ちに応えられるよう粉骨砕身で頑張りたい」と自らを奮い立たせる。

浸水被害を受けた「マルイチ仙台屋商店」も10月下旬、加工場に併設する直売所が再開。発注したボイラーはまだ届かず、別の場所で保管していたシラスを使った生産が続く。

同社社長の鈴木均一さん(41)は「生産量は浸水前の100分の1ぐらい」。間もなく年末商戦用に刺し身用タコの販売が始まるといい、「何とか間に合ってほしい」と早期再開を急ぐ。

心の支えは、同社の商品を待ち望む顧客たちの声だ。直売所の再開後は、訪れた買い物客から「待ってたよ」と声をかけられた。鈴木さんは「大変な状況だが、励みになる」と声を弾ませる。

自己資金を取り崩し、金融機関から融資も受けた。鈴木さんは「厳しいが何とかするしかない」と語り、一日も早い本格再開を目指している。

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