豊後竹田駅待合室のリサイクル文庫、駅舎改修に伴い閉鎖 5年で3500冊貸し出し【大分県】

閉鎖されたリサイクル文庫。「寂しいが、多くの人が利用してくれてうれしかった」と話す工藤照明館長(右)と工藤雅生さん=竹田市会々のJR豊後竹田駅待合室

 【竹田】竹田市会々のJR豊後竹田駅待合室に設置されていた「リサイクル文庫」が閉鎖された。12月からの駅舎改修に伴い、本棚を置く場所がなくなるため。文庫は利用者登録や貸し出し手続きがいらず誰でも自由に本を持ち帰ることができ、2018年12月の開設以来、旅行者などに約3500冊が貸し出されたという。

 文庫は、同市の旧岡本小(13年閉校)卒業生や地域住民が同校の図書室と職員室を改装して開館した岡本ふれあい図書館が設けた。運営メンバーから「駅と周辺の活性化に」と提案があり、JR九州から快諾を得た。

 同図書館の蔵書は住民が持ち寄り、県立図書館の除籍本(廃本)も集める。駅待合室の一角に設けた本棚には「幅広い世代に利用してほしい」と、小説から漫画、児童書まで常時300冊ほどを並べた。

 遠くから訪れる旅行者に配慮して貸出期間の定めはなく、返却も「できるだけ」。毎月、60冊程度が持ち帰られ、冊数が減ると巡回するメンバーが補充していた。

 お礼の手紙は全国各地から寄せられた。「待ち時間が充実した」「珍しい取り組みで驚いた」といった内容で、お返しに本を送ってくれる人もいた。菊地尋樹駅長(50)は「駅利用者目線の活動で、ありがたかった」という。

 同図書館の工藤照明館長(86)と事務局の工藤雅生さん(82)は「補充作業などは大変だったが、活用されている証拠でうれしかった。設置を認めてくれた駅と、親しんでくれた市民や観光客らに感謝したい」と話した。

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