市川由紀乃『唄女(うたいびと)Ⅴ~ソノサキへ』歌い手としての確かな実力と表現力が豊かに実った1枚

演歌歌手・市川由紀乃の歌には、歌詞に登場する女性の魅力を増す力がある。情念を歌っても恨み節を歌っても、その女性の人生を感じさせ、愛すべき存在に見えてくる。市川の伸びやかな歌声にはそれだけの表現力と、そして彼女自身の人柄が乗せられている。

そんな市川の魅力を味わえるアルバムがまた1枚増えた。2015年から続くカバーアルバムシリーズの最新作、『唄女(うたいびと)V~ソノサキへ』だ。これまでのシリーズよりも幅広いジャンルと時代の楽曲が揃えられた今作は、市川由紀乃30周年特設サイトに寄せられたリクエストを元に選ばれた12曲を収録し、<こぶし ON>と<こぶし OFF>と銘打った2パートに分けられてもいる。前者はその名のとおりこぶしを利かせた演歌を、後者では歌謡曲やポップスが並んでいるが、そこには歌に対する市川の強い意志も感じられる。タイトルの「ソノサキ」とはデビュー30周年リサイタルやイベントにも冠していた言葉で、より長く、より“サキ”へ歌い続けたいという市川の想いが込められている。

各曲それぞれに耳を傾ければ、「津軽恋女」では妖艶に、演歌らしい演歌の「おんな港町」では軽やかに歌い上げたかと思えば、「魂のルフラン」では彼女なりの母性を打ち出し、フォークソングの名曲「池上線」では待つ女のいじらしさを歌に込めるなど、さまざまな“女”を演じてみせる市川の姿が見えてくる。「命あたえて」では切々と訴えかけるような魂の歌を、「みだれ髪」では低音で優しい声を聴かせ、市川ならではの表現力に満ちていると言えよう。そこに前述したような読後感ならぬ聴後感の心地良さが存在し、充実の時間を堪能できる。

昭和と平成で二度のブレイクを果たした名ポップス「亜麻色の髪の乙女」では、ラストに向けて曲を盛り上げるため、サビで転調を迎える箇所がある。演歌ではあまり見られない転調だが、市川はギアを上げるように高らかに歌声を響かせる。ただ、市川の最新シングル「花わずらい」にも転調は用いられ、自身の伸びやかな歌声を武器としているようだ。「シルエットロマンス」の2番サビ前に入る「シルエット」も転調が施された箇所で、短い一節だが聴きどころとなっている。

これまでに幾つかの歌番組や、自身のYouTubeチャンネルでの企画【歌ってミルク♪】で名曲カバーを聴かせてきた市川だが、聴けば歌詞の情景が浮かび上がるような表現力と確かな歌唱力をあらためて感じることができた。と同時に、これまでの枠にとどまらずに“サキ”へと進化していく市川由紀乃も楽める、『唄女Ⅴ~ソノサキへ~』はそんな1枚になっている。

Information

市川由紀乃『唄女(うたいびと)Ⅴ~ソノサキへ』11月8日発売

[価格¥3,300 (税抜価格 ¥3,000)
[形態]CD
[品番]KICX-1178

[収録内容]
<こぶし ON>
1.津軽恋女
作詩:久仁京平 作曲:大倉百人(オリジナル歌唱:新沼謙治)
2.おんな港町
作詩:二条冬詩夫 作曲:伊藤雪彦(オリジナル歌唱:八代亜紀)
3.情炎
作詩・作曲:吉幾三(オリジナル歌唱:吉幾三)
4.命あたえて
作詩:川内康範 作曲:猪俣公章(オリジナル歌唱:森進一)
5.みだれ髪
作詩:星野哲郎 作曲:船村徹(オリジナル歌唱:美空ひばり)
6.道頓堀(とんぼり)人情
作詩:若山かほる 作曲・編曲:山田年秋(オリジナル歌唱:天童よしみ)

<こぶし OFF>
7.魂のルフラン
作詩:及川眠子 作曲・編曲:大森俊之(オリジナル歌唱:高橋洋子)
8.亜麻色の髪の乙女
作詩:橋本淳 作曲:すぎやまこういち(オリジナル歌唱:ヴィレッジ・シンガーズ)
9.どうぞこのまま
作詩・作曲:丸山圭子威(オリジナル歌唱:丸山圭子)
10.シルエット・ロマンス
作詩:来生えつこ 作曲:来生たかお(オリジナル歌唱:大橋純子)
11.池上線
作詩:佐藤順英 作曲:西島三重子(オリジナル歌唱:西島三重子)
12.for you・・・
作詩:大津あきら 作曲:鈴木キサブロー(オリジナル歌唱:髙橋真梨子)

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市川由紀乃

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