武見厚労相、製薬会社24社に咳止め薬など直接増産要請 増産支援も検討へ

 今年に入り継続的に処方薬の供給不足が続いていることに対し、武見敬三公正労働外人が7日、製薬企業幹部と面会、特に不足が問題となっているせき止め薬やたんを切る去痰(きょたん)薬について、業界として増産に取り組むよう要請した。

「あらゆる手立てを講じて」

 大臣は面会で、冬に向けて感染症が流行することを見据え「あらゆる手段を講じていただくことを改めてお願いしたい」と対応を要請した。省庁として10月にも増産を要請しており、今回大臣が直接企業幹部に伝えたことで危機感を共有する狙いがあると見られる。

 面会した製薬企業幹部は基本的には応じる姿勢ではあるものの、行政からの支援に期待する声も出ている。これには一昨年から現在まで、ジェネリック製薬大手で製造不正が相次いで供給不安が広まっていることに加え、一部の処方薬の薬価が低く抑えられていることで利益が出にくい産業構造になっていることも要因の一つ。こうした状況を是正するため、政府が2日に閣議決定した総合経済対策には、増産する企業への支援、来年度予定されている薬価改定で対応することも盛り込まれた。

「間違った政策のツケ」との声も

 こうした政府の動きに対し、取材に応じた都内の医療機関の勤務医やクリニック院長は、匿名を条件に深刻な現状を訴えている。インフルエンザ患者が増え続ける中、咳止め・去痰薬だけではなく鎮痛剤や降圧剤の一部なども数ヶ月間入荷されづらい状況が続いているという。不足している薬のほとんどは薬価が安いものばかりで、物理的に生産ラインが逼迫しているのではなく、利益の出ない処方薬の生産をおさえていると見ている。これは製薬会社が利益に走っているということではなく、企業活動として利益が出ないと分かっている事業に取り組むことはできず、こうした産業構造にさせてしまった長年の政策の間違いが背景だと指摘。「インフルエンザの検査キットすら枯渇しつつあり、このままでは冬に何も薬を処方できないどころか、診断すらできない事態になりかねない」と、適切な財政出動による増産体制の構築を訴えた。

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