【ラグビー】紫紺の壁高くも確かな成長見せた慶大 実りある一戦に/関東大学対抗戦 第5節 対 明治大学

2023年11月5日(日)関東大学対抗戦Aグループ 対 明治大学 @熊谷

●慶大 40{14―47、26―19}66 明大○

関東大学対抗戦Aグループ 第5節
慶應義塾大学	2023/11/5(日)14:00 K.O.	明治大学
前半	後半	ロスタイム:1分	前半	後半
2	4	トライ(T)	7	3
2	3	コンバージョン(G)	6	2
0	0	ペナルティゴール(PG)	0	0
0	0	ドロップゴール(DG)	0	0
14	26	計	47	19
40	合計	66
前半21分 シュモック(T)	得点者	前半2分 海老澤(T)

※メンバー表、交替入替表は、星取表と合わせて記事の最下部に掲載することにしました。

本試合の【見どころ】はこちらから

対抗戦も各大学残り3試合。ここからは上位校対決が増えてくる。チャレンジ精神を持ち、格上の大学にも向かっていきたいところ。熊谷ラグビー場は熊谷スポーツ文化公園内の施設であるが、この日はラグビー場の外で多数の出店や、音楽隊による披露があり、お祭りムードになっていた。観客数は2607人に上り、伝統校対決を見守った。

紫紺のジャージの明大・廣瀬のキックオフで試合が始まった。橋本のボックスキックで明大ボールとなり、早速明大に猛アタックを仕掛けられる。予想通り左に右に展開してくる中、安田がタックルを受けながら強さを見せ前進。明大のここ数年の特徴として、両WTBが入れ替わったり、同サイドに2枚重ねたりする戦術を取る傾向にあるが、それで人数を余らせられた末、ノーホイッスルトライで先制を許す。切り替えたいリスタートだったが、敵陣からバックスでゲインを許し、連続トライ。わずか開始5分で14点と、雲行きの怪しい立ち上がりとなった。

FWどころか、BK陣も重戦車に

前半8分、相手のFLに危険なタックルがありシンビンで退場。数的優位で試合を進めることができるか。自陣10メートルラインでのマイボールスクラムを確実にキープし、山田のキックは相手FBの背後まで届き、大きくエリアを挽回。インゴールまでの残り25メートルどう攻めていくかというところだったが、わずかにスローが右に逸れノットストレートの判定。なかなか流れを作れない。一方の明大は、豊富な運動量で自陣からキックを用いることなくランで前進。最終的にモールで追加点をあげられてしまう。この時点で0−19。

ハイボールを競る永山

慶大の嫌な流れを断ち切ったのは、復帰した今野のキックパスからだった。左サイドに余っていた山田がキャッチすると、山田も前方の空いているスペースに蹴り込む。バウンドも味方し、5メートルラインのところでタッチ。50:22となり、マイボールラインアウトのチャンスとなる。これにはインゴールでアップをしていた慶大のブースター陣、星野佑貴コーチも「OK!」の声。今年の慶大はここからモールで取り切る形を武器としているが、明大をも圧倒できるか。しかしここは飛ばずに前にラインアウトを合わせると、シュモックが相手のダブルタックルの下を潜り込みトライ。用意してきたプレーを出し、見事トライを取り切った。7−19となる。

ダブルタックルを掻い潜ったシュモック

流れに乗りたい慶大だったが、ラックの局面で橋本がボックスキックを蹴ろうと構えたところ、ボールがラックから出ていると判断した明大がボールを争奪。レフェリーはプレーオンとの判定で、そこからアタックされ追加点を挙げられる。取られたら取り返すという明大の野心が表れていた。直後にも伊藤の個人技でゲインを切られ失点した。7−33と引き離されてしまう。

失点はするものの、慶大のアタックも全く怯むことはなかった。冨永が相手のボックスキックを密集の中でうまくキャッチすると、山田がディフェンスラインを掻い潜るランで縦に割る。そのまま一人で快足を飛ばし、最後は廣瀬を小刻みなステップで交わしトライ。キッカーとしてコンバージョンを決め14−33と、山田の個人技も光り反撃する。

会場が沸いた

慶大に勢いが出てきていた。明大に攻め込まれモールでトライを奪われそうになるも、モールアンプレアブルで凌いだり、相手の50:22が決まった後のラインアウトでは、プレッシャーをかけ相手に綺麗にキープさせないことに成功した。前半終了間際にトライを取られてしまい14−47とされるも良いプレーも増え、期待がかかる後半となった。

後半は山田のキックオフで始まった。明大はキックを使わず細かいパスで前進を図るが、秋濱に三木が好タックル。「バチッ」という乾いた音がした。明大も慶大の守りに圧力を感じたのか、タッチに逃れ始めた。山田のハイパントには、「ハイボールのキャッチに自信がある」という大野がガッチリ取ると、山田は22メートルライン後方に明大陣がいないことを把握すると、そのスペースにキック。またラインアウトからのモールで前進する場面もあり、得点にはならなかったものの、勢いのある立ち上がりとなった。

ディフェンスも良くなってきた

すると後半19分、ラックを掻い潜った橋本にシュモックが反応、そのままインゴールまで走りきり反撃のトライ。直後の21分には、相手のキックパスを今野がキャッチ。もう目の前を駆け抜けるだけというところ、左サイドを70メートルほど走り切り、今野にとっては対抗戦初トライ。山田が難しい角度のコンバージョンも決め26−54となる。

シュモックはこの日2トライ

復帰した今野

その後、連続2トライを奪われるも、集中力を決して落とさなかった慶大。ここから慶大のアタックがずっと続いた。対抗戦デビューとなった伊吹や、後半から出場の磯上も積極的に相手に当たっていく。相手のペナルティもありインゴールまで攻め込むと、フェイズを12まで重ね、最後は中矢がグラウディング。近場でのFW勝負に競り勝った。31−66と地道に得点を返していく。どんどん得点を重ねたい慶大は、自陣から山田、伊吹、今野のランでハーフウェイまでエリアを戻すと、相手のペナルティ後のモールで「Ready Go! Ready Go!」の掛け声で前進。「Ready Go!」の声が、過去4戦で慶大が良い攻撃を繰り広げていた時間帯と同じような、覇気のこもった声になっていた。さらには、山田が猛タックルを明大に浴びせボールを炙り出す。その後のラインアウト、得意の形のモールでトライを取り切りたいところ。ラインアウトでは、途中出場の酒井のスローが、チーム最高身長の浅井に入り、予想通りモールを組むと止まることなくインゴールへ。グラウンディングしたのは冨永。山田のキックも好調そうで、角度があったが難なく成功。ここでノーサイドとなり、40−66で幕を閉じた。

山田のキックは安定していた

本試合の敗因をあげるならば、前半の立ち上がりでノーホイッスルで2トライを取られてしまい、大量失点へと繋がったことだろう。FW陣の強さと、BK陣の変幻自在の展開に苦戦した。最終的に前半の失点が最後まで響いてしまったわけであるが、後半は慶大ペースで自分達のやりたいラグビーが出来ていたのではないか。特に終盤に奪った2つのトライについては、慶大の今年追い求めてきたラグビーが明大を上回った証であり、今後に向けての良い収穫となった。スコアでみても、後半は26−19と勝っており、青貫監督は明大を「格上」と位置付けていたが、格上相手に自分達のラグビーを十二分に体現していた。また、40点スコアできたというのも、攻撃力向上と言える。ただ、トライを取られた直後にもう一つトライを取られたというのが4回あり、その「もう一つのトライが無ければ…」と考えると悔やまれるところではある。トライを取られた後の修正と、立ち上がりの2つが慶大の課題だろう。逆に、明大にとってはそれらが強かった。「慶大ラグビー部は、日々成長している」と<見どころ>に書いたが、本試合でも確かな勲章を残すことができ、攻撃力という面では前試合より上がっているだろう。今野の復帰、そして山田のランニングスキルの高さなど、個々についても明るい材料を見出せた。

モストインプレッシブプレーヤーには三木が選出

さて、次戦は早慶戦である。「早慶戦勝利」というのは今年の蹴球部の目標の一つであるが、決して今年だけの目標ではなく、蹴球部だけの目標でもない。これまで124年の間、慶應義塾體育會蹴球部に携わってきた者、そして全塾生にとって最大の目標であり、宿命である。11月23日、ちょうど伝統の一戦の100回目のノーサイドの笛が鳴らされる時、黒黄のラガーマンと観客が一体となり、歓喜に耽る新国立に期待したい。

(記事:野上 賢太郎 写真:野上 賢太郎)

青貫浩之 監督

——本試合の総括

本日はありがとうございました。今日の試合では、私共が今年の目標として掲げている早慶戦が11月23日にありますが、それに向けて非常に大事な試合だということで、部員と一丸となって臨みました。今日の試合を100パーセント挑戦して良いものにできなければ、次に全くつながらないという話をして臨んだ試合でした。前半は、ご存じの通り大差という結果となってしまい、前半2本取られた後に受けに回ってしまったことが一番大きいところだと思っています。ハーフタイムに今日やること、今日のプランを徹底しきろうという話をして臨んで、後半少し改善出来て、スコア的にも明治さんを上回ることができたのは非常に大きな収穫だと思っております。今日の試合、良い点悪い点含めて次の試合につながるように成長していきたいと思います。

——早慶戦まであと2週間、何を強化していきたいですか

タックルです。

——ハーフタイムにプランの徹底というお話をされたと話されていましたが、具体的にどのような内容だったのでしょうか

簡単に言うと、明治さんはフィジカルが強くて前に前に、FWやBKに関わらずゲインしてくるので、そうした相手に対して自分たちが引かずに前に出て止める、ということを一番大事にするポイントとして話していました。前半少し明治さんに流れを持っていかれてしまったのは、自分たちの規律の問題だという話もありましたので、後半は改善していこうという話をしました。

——アタックの部分でうまくいきだしたのはどのような要因でしょうか

先ほども申し上げましたゲインラインのところをこだわれたことで、ブレイクダウンは全てのアタックとディフェンスの起点だと思いますので、ここを改善できたことが後半の良いアタックにつながった要因かなと思います。

岡広将 主将

——本試合の総括

慶應として、この明治戦に向けて、個人的にも非常に気持ちをかけて臨んだつもりではありました。しかし慶應として、前半でやってはいけない大量得点を許してしまい、準備不足だった部分があるのかなと感じています。後半ではスコアを重ねることはできましたが、自分たちが何を大事にしたいのかを、もう一度考え直して早稲田戦に向かっていければなと思います。

山田響 副将

——本試合の総括

今日の試合はスコアを見ても分かる通り、前半は受けに回ってしまい、後半は自分たちのプランを遂行することができたため得点を重ねることができ、得点を抑えることができたのだと思います。次戦は私たちが目標にしている早慶戦があるので、そこに向けては後半良い収穫があったと思うので、それを生かして勝利につなげていきたいと思います。

慶應義塾大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	木村 亮介	173/103	環4	慶應
2	中山 大暉	176/102	環3	桐蔭学園
3	岡 広将	173/107	総4	桐蔭学園
4	シュモック オライオン	181/100	環4	Mount Albert Grammar School
5	中矢 健太	184/104	総3	大阪桐蔭
6	樋口 豪	174/98	文4	桐蔭学園
7	富田 颯樹	173/93	経4	慶應志木
8	冨永 万作	187/102	商3	仙台第三
9	橋本 弾介	169/77	法2	慶應
10	山田 響	174/82	総4	報徳学園
11	佐々 仁悟	173/80	総4	國學院久我山
12	三木 海芽	167/83	総4	徳島県立城東
13	永山 淳	188/94	総4	國學院久我山
14	大野 嵩明	177/80	法4	慶應
15	今野 椋平	183/86	環2	桐蔭学園
16	酒井 貴弘	169/98	商4	慶應
17	井上 皓介	176/106	経4	慶應
18	小松 秀輔	177/105	環4	名古屋
19	浅井 勇暉	188/107	総3	仙台
20	田沼 英哲	176/94	総3	國學院久我山
21	小城 大和	168/73	商3	北嶺
22	伊吹 央	176/81	経2	慶應
23	磯上 凌	172/81	商3	青山学院
明治大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	床田 淳貴	178/102	情コミ4	桐蔭学園
2	松下 潤一郎	172/99	法4	筑紫
3	為房 慶次朗	180/111	文4	常翔学園
4	山本 嶺二郎	191/111	法4	京都成章
5	佐藤 大地	183/100	法3	國學院栃木
6	最上 太尊	183/102	商2	仙台育英
7	福田 大晟	173/95	商3	中部大春日丘
8	木戸 大士郎	185/104	文3	常翔学園
9	萩原 周	173/76	商4	大阪桐蔭
10	伊藤 耕太郎	176/85	商4	國學院栃木
11	海老澤 琥珀	173/78	情コミ1	報徳学園
12	廣瀬 雄也	179/94	商4	東福岡
13	平 翔太	175/90	商2	東福岡
14	安田 昂平	181/87	商3	御所実業
15	秋濱 悠太	174/85	商3	桐蔭学園
16	西野 帆平	176/104	文2	東福岡
17	中山 律希	169/108	政経4	天理
18	古田 空	178/112	商4	明大中野
19	物部 耀大朗	192/118	商1	中部大春日丘
20	利川 桐生	181/101	政経2	大阪桐蔭
21	登根 大斗	165/72	法3	御所実業
22	伊藤 利江人	173/72	商1	報徳学園
23	東 海隼	181/80	情コミ2	光泉カトリック
慶應義塾大学	明治大学
101.1kg	FW平均体重	103kg
809kg	FW合計体重	824kg
177.6cm	FW平均身長	180.6cm

◎交替/入替

慶應義塾大学
種別	時間	IN	OUT
入替	後半0分	22・伊吹	11・佐々
入替	後半9分	17・井上	1・木村
入替	後半13分	20・田沼	6・樋口
入替	後半19分	21・小城	9・橋本
入替	後半29分	23・磯上	13・永山
入替	後半29分	16・酒井	2・中山
入替	後半33分	18・小松	3・岡
入替	後半33分	19・浅井	4・シュモック
明治大学
種別	時間	IN	OUT
入替	後半0分	17・中山	1・床田
入替	後半9分	23・東海	15・秋濱
入替	後半18分	16・西野	2・松下
入替	後半18分	18・古田	3・為房
入替	後半18分	19・物部	4・山本
入替	後半24分	22・伊藤	12・廣瀬
入替	後半27分	21・登根	9・萩原
入替	後半38分	20・利川	7・福田
帝京大	明大	早大	慶大	筑波大	立大	青学大	成蹊大	勝	敗	分	勝点
帝京大	———	11/19	○	12/2	○	○	○	○	5	0	0	24
明大	11/19	———	12/3	○	○	○	○	○	5	0	0	25
早大	●	12/3	———	11/23	○	○	○	○	4	1	0	19
慶大	12/2	●	11/23	———	●	○	○	○	3	2	0	14
筑波大	●	●	●	○	———	12/2	11/19	○	2	3	0	10
立大	●	●	●	●	12/2	———	○	11/19	1	4	0	6
青学大	●	●	●	●	11/19	●	———	12/2	0	5	0	0
成蹊大	●	●	●	●	●	11/19	12/2	———	0	5	0	0
◎勝ち点の多い順に順位決定を行う。(並んだ場合は勝利数で決定)

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