「テイルズ オブ アライズ」アルフェンと仲間たちのその後を描く大型DLC「Beyond the Dawn」レビュー

バンダイナムコエンターテインメントが2023年11月9日に配信する「テイルズ オブ アライズ」の大型DLC「Beyond the Dawn」のレビューをお届けする。

※記事中に本編ならびにDLCに関するネタバレが含まれますのでご注意ください。

「Beyond the Dawn」では、「テイルズ オブ アライズ」ゲーム本編のエンディング後を描く物語が展開。単なるストーリーの追加に留まらず、新たなる敵、新ダンジョン、サブクエスト、追加コスチュームなどを収録しており、プレイ想定は20時間程の大ボリュームになっていることがアナウンスされていた。

実際に本作をプレイしてみると、そのアピールポイントに違わないプレイフィールとなっており、本稿を執筆時点で筆者は10時間以上プレイしているが、未だにクリアできていないどころか、サブクエストも数多く残しているような状況だ。

「Beyond the Dawn」をプレイしようとする人はすでに本編をクリアしている人たちということで、ここでは基本的なゲームシステムは割愛するものの、もしこの機会にゲーム本編と「Beyond the Dawn」がセットになったバンドル版「Beyond the Dawn Edition」をプレイするという人は、以下の記事も併せて参照してもらえればと思う。

■2つの世界がひとつになった混乱と、ダナ人とレナ人の対立が根付く1年後の世界

ゲーム本編ではレナとダナ、2つの世界の対立と分断を背景とした物語が描かれた。アルフェンたちの活躍によってダナ人はレナ人による隷属から解放されるとともに、結果として2つの世界はひとつに交わることとなった。

「Beyond the Dawn」ではそこから1年後の世界が舞台となっている。世界がひとつになった当初は混乱が続いたものの、そこから落ち着きを取り戻していく中でダナ人とレナ人の対立は未だ続いており、かつて五領と呼ばれていた領主<スルド>が治めていた各地域は新たに五国と名を変え、それぞれのスタンスで新たな秩序を作り出そうとしていた。

アルフェンと仲間たちがもたらしたことは、歪な世界を正しい姿に戻したという事実がある一方で、ダナ人にとっては自分たちを解放してくれた英雄であり、レナ人にとっては自分たちの住む場所を奪った相手でもあるわけで、そうした複雑な状況が「Beyond the Dawn」における下敷きになっていることは理解しておく必要があるだろう。

そうした世界の状況を少しでも良くするため、アルフェンとシオンは旅暮らしを続けながら各地をめぐり、そのほかの面々も各々の立場で立ち回っている。そして、時折集まってはレナとダナの合一によって各地に出現し、新たな世界の安定を阻害する「外廟(げびょう)」を封じるために活動しているのだ。

「Beyond the Dawn」の物語は、仲間との合流のためにミハグサールの首府・ニズへと向かうアルフェンとシオンが、どこか陰のある少女ナザミルと出会うところから始まる。領主<スルド>の血を引くというだけでなく、その特異な力から孤独を抱える彼女との交流が、物語を大きく動かしていくこととなる。

■ナザミル、そして各地の人々との交流から見えるパーティキャラクターの絆と成長

ダナとレナ双方の血を引くがゆえに居場所のないナザミルを、アルフェン一行は保護していく。行動をともにする中でナザミルはアルフェンたちに心を開いていくが、とある出来事をきっかけとして、物語は大きな転換を迎えることとなる。

ナザミルとの交流を通して見えてくるのは、本編でのさまざまな出来事を通じて紡がれたパーティキャラクターの絆だ。アルフェンとシオン、リンウェルとロウ、キサラとテュオハリムという互いを想い合う関係性に限らず、気が置けないからこそのウィットに富んだやり取りがスキットやサブクエストを通して表現される。

また、従来のサブクエストに加えて、各地の復興につながる「復興クエスト」や、各キャラクターに紐づいた「キャラクターサブクエスト」が用意されている。前者はクリアすることで各地域の復興の様子を楽しめ、後者はキャラクターたちの成長が垣間見えるだけでなく、クリアすることで入手できるアイテムによって、それぞれのブーストアタックが強化される。

ファストトラベルを駆使しながら各地を巡っていくという流れも含めて、本編と同様のかたちで多彩なクエストが楽しめるようになっており、これだけでもかなりのボリューム感だ。各地の人々との会話などをじっくりと楽しめば、あっという間に想定の20時間ほどになってしまうことだろう。

サブクエストの豊富さはもとより、例えば料理や釣り、牧場経営といった本編で用意されているシステムも「Beyond the Dawn」ではそのまま楽しめる。さらに、「テイルズ オブ」シリーズおなじみの闘技場にも新たなバトルが追加されているので、腕に覚えのある人はぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。

■新たな武器やダンジョンなどの要素でバトルもさらに楽しめる

発表時にアナウンスがあった通り、本作ではプレイ開始時に固定のステータス、レベルでゲームがスタートする。本編でのプレイ内容は反映されない点は注意が必要だが、一方で改めてSPの振り直しが可能で、かつ本編のクリア状況に応じたリワードも用意されているので、「Beyond the Dawn」向けに改めて育成し直すことができる。

加えて、「Beyond the Dawn」に登場するズーグル(※本作における魔物の総称)を撃破することなどで得られるアイテムを用いて、新たな武器の作成が可能となっている。ゲームバランスとしてはちょうど良い歯ごたえになっているので、道中で入手できる防具や本編同様のアクセサリの制作も含めて、装備を揃えることでスムーズに進められるようになるだろう。

道中で登場するズーグルはレベルも調整されていて、本編にも登場した巨大なズーグル「ギガント」の姿も。これらに再び挑む楽しさも味わえつつ、新たなダンジョンとして記事の序盤でも触れた「外廟」にも要所で挑むこととなる。筆者は本編クリア以来のプレイとなったこともあり、操作を思い出しながら一連の流れをプレイしていったが、その過程も含めてしっかり遊べる作りになっていた。

■分断を描く本編の軸を持ちつつ、新たなテーマを提示した意欲作

冒頭でも触れた通り、筆者は記事執筆時点でクリアはできていないものの、DLCとしてプレイできる内容としては十分なボリュームを提供している「Beyond the Dawn」。筆者が特に感心したのが、拡張コンテンツでありながら単体でも楽しめうるストーリーが構築されている点だ。

ナザミルというキャラクターが物語の大きなキーにはなるものの、「Beyond the Dawn」においてアルフェンはダナ解放の英雄<炎の剣>と人々から呼ばれる一方、その呼び名はレナ人からは敵意を向けられる象徴ともなった。 アルフェンは、自分自身のあり方と周囲の見方のギャップに苦しんでおり、そこにどのように向き合うのかもストーリーにおけるポイントの一つとなっている。

彼らの生きる世界は本編でエンディングも迎えても今なお続いており、ひとつの問題を解決したとてそれで全てが終わるわけではない。世界のあり様はもちろんだが、それはキャラクター自身にも表れている部分であり、だからこそ物語そのものにも説得力が生まれている。

「テイルズ オブ」シリーズにおける追加エピソードとして筆者が思い出したのは、PS3移植作である「テイルズ オブ グレイセス エフ」で追加された“未来への系譜編”。本編だけでも十分に楽しめた作品ではあるものの、このエピソードが追加されたことでキャラクターのディティールがより深まり、作品としての魅力が増したように感じられた。

まだクリアしていない身で体験全般に言及するのは憚られるものの、「Beyond the Dawn」は直接的な言及はなくとも、確実に本編の続きとしてのテーマを内包した、それでいて本編とはまた違ったキャラクターたちの魅力を照らし出した物語となっている。その終わりにどのような夜明けが示されるのか、筆者も一人のファンとして楽しみにしておきたい。

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