フェラーリ、『499P』のシーズン中アップデートを検討。2024年開幕戦後に導入の可能性

 フェラーリの耐久レースカー責任者であるフェルディナンド・カニッツォによると、フェラーリはル・マンで優勝したプロトタイプカーの潜在的な進化に慎重なアプローチをとっているが、2024年のシーズン中に『499P』のアップデートを展開する可能性があるという。

 今季2023年のWEC世界耐久選手権ハイパーカークラスで、マニュファクチャラー選手権2位となったイタリアのメーカーは、世界中を転戦するこのシリーズでの2シーズン目に、いわゆる“EVOジョーカー”を追求するかどうかをまだ決めていない。

 今月末にカタールで行われるチーム・ペンスキー主催のグループテストや、フェラーリAFコルセが計画するその他のセッションなど、オフシーズンのテスト次第でこの決定が下されると見られている。

「そうだ、マシンをアップグレードする計画はつねにある」とカニッツォはSportscar365に語った。

「これらのアップグレードをどのようにスケジュールするかを理解する必要がある。それはもちろん、適切な方法で物事を進めたいからだ」

「これまでマシンをうまくコントロールできていたとはいえ、信頼性のリスクや直面する可能性のある問題を取り除くことが第一だ」

「ル・マン24時間レースを含め、我々はすべてのレースで完走しマシンをゴールまで運んできた。これはこのクルマの強みだが、私たちはもっと強くなりたいと思っている」

「パフォーマンス面では、今年はこのデータを収集するのに非常に有益だったと思う。今は、やりたい改造をグループ分けできるように消化し、次のシーズンあるいは翌年につなげたい」

 カニッツォは、ダラーラ製のル・マン・ハイパーカー(LMH)・プロトタイプのどの部分にアップデートが施される可能性があるかについては言及しなかった。

「私たちは、まだパフォーマンスへの影響を見ながら、どれがもっとも重要な(項目なのか)理解する段階にある」と彼は説明した。

 同じくLMH規定のマシンを走らせるプジョーがとっていると噂されているスケジュールと同様に、開幕戦『カタール1812km』の後にアップデートが行われる可能性があるかと尋ねられると、カニッツォは「可能性はある」と答えた。

「実際、非常にオープンなかたちで、まだ決まっていないんだ。様子を見てみよう」

「(開幕戦カタールの)タイミングはタイトだ。それと同時にマシン開発のどこに時間を投資するかを決める前に、マシンのパフォーマンスと潜在的な強さと弱さの全体像を把握するにはシーズン終了まで待たなければならない」

「私たちはこのクルマの(最初の)開発時と同じアプローチを使っていると思う。これはある観点からは非常に良いことだと証明されていため、同じアプローチを使いたい」

「急いでいるわけではない。我々は理解したいんだ。ある分野が一歩を踏み出すに値すると確信したとき、私たちはよりハイスピードでそれに取り組むつもりだ」

フェラーリはWEC最高峰クラスへのデビューシーズンをマニュファクチャラー・ランキング2位で終えた

■最終決定は2024年1月までに

 フェラーリのグローバル耐久責任者であるアントネッロ・コレッタは、次のように付け加えた。「通常、我々はテスト計画を持っており、他のメーカーともいくつかのテストを計画している」

「クルマに関するニュースがあるのは普通のことだが、アップグレードに費やすのか、それともホモロゲーションを変更することなく実際の状況を正常に管理し少しずつパーツを改善していくのか、それは現時点では明確ではない」

 コレッタは、EVOジョーカーを用いるアップデートを行うかどうかの最終決定は来年1月までに下すべきだと語った。

「シーズンの最初の部分で、このクルマはベストではないが、悪いクルマではないことを証明するチャンスがあった」と同氏。「我々は(グリッドの)一列目からスタートし、各レースで表彰台を争った」

「ル・マンの後は、残念ながら状況はまったく異なっていた。これはすべての人々、チームや(シリーズ)組織にとっても今季が初めてのシーズンであること(が要因のひとつなの)は想像に難くない」

「しかし、最初のシーズンが終わった後、状況は非常に一貫して明確になり、チーム、マシン、ドライバーの正確な価値がすべての人にとって正しい価値になることを想像したい」

■ドライバーラインアップに変更なし

 コレッタは2024年のWECハイパーカークラスに、AFコルセが運営するチームに同じ顔ぶれのドライバーが戻ってくることを想定している。

「私の考え、そして私たち経営陣のアイデアは、ラインアップを確認することだ」と語ったコレッタ。

「契約更新が必要なのはどのチームも同じだが、我々の考えは(現在の)ラインアップに非常に満足しているためドライバーを確定することだ」

「我々は6人の優秀なドライバーがいることを証明した。彼らは短時間でマシンを開発し、レース中もミスは見られなかった。おそらくスパで1回だけを除いてね」

「しかしいずれにしても、他のチームではドライバーのミスはフェラーリのラインアップよりも一貫していることが分かった。この点において、私はフェラーリのドライバーたちにとても満足している」

「もしドライバーを確定させるなら、同じ顔ぶれになるだろう」

2023年のル・マン24時間レースを前に、サルト・サーキットでの記念撮影に臨んだフェラーリAFコルセのクルーたち

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