第2回 岡山離島プロジェクト(令和5年10月21日開催)〜 六口島で再訪。化粧品ブランド ロクシタンとともに海洋ゴミ問題について考える

不適切に放置されたゴミは、どこに辿り着くのかを想像したことはあるでしょうか?

実は、ゴミの到達先の1つは瀬戸内海に浮かぶ島。

商店も自動販売機もない島に、私たちの生活圏から流れ着いた大量の缶やペットボトルが見つかります。

岡山離島プロジェクトは、瀬戸内海の島に実際に足を運び、海洋ゴミの課題について実体験を通じて学ぶ企画です。

街のお掃除ボランティア特定非営利活動法人green bird(グリーンバード)と南フランス発祥の化粧品ブランド ロクシタンが、企画しています。

2023年10月21日(土)に、第2回となる岡山離島プロジェクトを開催。

継続した活動をおこないたいというロクシタンの想いから、前回の活動で訪れた六口島に足を運んで海洋ゴミを回収してきました。

街のお掃除ボランティアと南フランス発祥の化粧品ブランドが、倉敷の島で開催する環境保護活動を紹介します。

岡山離島プロジェクトとは?

普段の活動では、市街地を中心にゴミ拾いをおこなっているgreen bird。

岡山離島プロジェクトでは、協賛企業のロクシタンとともに、街を飛び出して瀬戸内海に浮かぶ島で海洋ゴミを回収しています。

岡山離島プロジェクトの概要

岡山離島プロジェクトは、岡山県内に住む人たちに瀬戸内海の島へ足を運んでもらい、体験を通じて瀬戸内海の島の風土を感じてもらうとともに、島の課題に気付いてもらうための企画。

南フランス発祥の化粧品ブランド ロクシタンの協賛により、特定非営利活動法人green birdが企画しました。

2023年10月21日(土)に、岡山離島プロジェクト第2回として、倉敷市児島の沖合にある六口島を訪れ、島の海岸に流れ着いた海洋ゴミを回収してきました。

瀬戸内海の島に実際に足を運び、海洋ゴミの実態について学ぶことが目的です。

第1回は2023年5月20日(土)に開催し、このときも六口島を訪れました。

活動を継続していきたいというロクシタンの想いから、同じ場所を活動場所として選びました。

化粧品ブランド ロクシタンと自然保護活動

ロクシタンは、南フランスの南東部に位置するプロヴァンス地方を発祥とする化粧品ブランド。

自然由来の化粧品を通じて、プロヴァンス地方のライフスタイルを世界中に届けています。

日本でも全国に店舗があり、岡山県内にも2店舗が出店しています。

自然の恵みを享受(きょうじゅ)したビジネスを展開するロクシタンにとって、商品のもととなる植物や土壌は大切な存在です。

自然を大切にしたい想いから、海洋ゴミを回収するイベントをgreen birdとともに企画しました。

街のお掃除ボランティア 特定非営利活動法人green bird

特定非営利活動法人green birdは、2002年に発足した東京表参道を発祥とする街のお掃除ボランティアです。

日本全国62チーム、世界10チームの仲間とともに、誰でも気軽に参加できるゴミ拾い活動を続けています。

特別な参加資格はなく、集合場所に、集合時間に、手ぶらで足を運べば誰でも参加できる活動です。

岡山離島プロジェクトを取りまとめたのは、green bird岡山チーム。

2013年に発足したgreen bird岡山チームは、これまで岡山駅前、倉敷駅周辺と美観地区、宇野港で約500回のゴミ拾い活動を続けてきました。

普段の活動には年齢、国籍、職業を問わず、さまざまな人が参加しており、ゴミ拾いの機会を提供するだけでなく、多様な人たちが交流する場所を生み出しています。

六口島を再訪

数か月の期間を空けて、同じ島を訪れるとどのような変化が見られるのでしょうか?

2023年10月21日(土)に開催した第2回 岡山離島プロジェクトの六口島での活動のようすを紹介します。

荒波に揉まれながら六口島へ

船に乗って六口島に行くため、児島観光港に集合しました。

六口島への定期船はないため、船を貸切にして六口島に向かいます。

この日は沖合から風が吹きつけていて、普段よりも波が荒れていました

出航してしばらくすると、ジェットコースターのように船は大きく上下に揺れ始めます。

激しく動く船を楽しんでいる人もいましたが、気分が悪くなってしまった人もいたようです。

▼六口島へは、船首から架けた不安定な板の上を歩いて上陸しました。

活動前の自己紹介

六口島に到着後は、green birdの代表理事 福田圭祐(ふくだ けいすけ)さんから、活動の目的について説明がありました。

岡山県には19の有人島があり、過疎化の影響を受けて景観や風習が失われつつあります。

そして、人が少ない場所であるはずにもかかわらず、私たちの生活圏からゴミが島に流れ着いています。

現地で海洋ゴミの実態を知ることが活動の目的だと参加者に伝えました。

第2回となる岡山離島プロジェクトには、小学生中学生高校生、大学生、20代から50代の社会人と、幅広い年代の人たちが参加していました。

普段からgreen bird岡山チームの活動に参加している人もいれば、初めてボランティア活動に参加した人もいます。

初めて会う人たちがたくさんいるので、自己紹介とともに参加した理由を全員で共有。

「海洋ゴミ問題に興味があった」、「島に行けて楽しそうだった」など、活動に対して積極的な理由が多くありました。

彼女に誘われて、無理やり…」という、消極的な意見もありました。

島でのゴミ拾いをデートに選んでくれるのはうれしいですね。

▼意外な参加の理由に、参加者全員が笑顔になりました。

六口島の海洋ゴミの実態

六口島には、どれぐらいの海洋ゴミがあるのでしょうか?

商店も、自動販売機もない島で、本来はあるはずのないものが、たくさん見つかりました。

ビーチクリーン開始

船が到着した船着場付近でゴミ拾いを始めました。

島の北側にある船着場付近は、第1回の活動でもゴミが多かった場所。

活動を始めるとすぐに、前回よりも圧倒的にゴミの量が増えていることに気がつきました。

▼ゴミの量は多いものの、いつも通り楽しくゴミを拾っています。

浜辺よりも、海から少し離れた茂みの中にゴミがたくさんありました。

とくにたくさん見つかったのは、ペットボトルと発泡スチロールです。

プラスチックの特徴である分解されにくいという性質は、私たちの生活では役立ちますが、ゴミになると厄介な存在になってしまいます。

▼美しい海に背を向けながら、茂みの中のゴミを拾いました。

今回の活動で、もっとも驚いたゴミは人形の頭

おそらく、理容師が散髪の練習をするときに使う人形の頭部です。

ゴミが落ちていることは残念なことですが、想像していなかったゴミが見つかるのは、ゴミ拾いの楽しみの1つです。

▼数年ぶり、あるいは数十年ぶりに日の光に当たった人形は、見つけてもらえて喜んでいたかもしれません。

回収したゴミの量は?

船着場周辺で活動した時間は、1時間程度。

わずかな時間でしたが、回収できたゴミの量は30袋を優に超えていました。

▼大量に海洋ゴミを回収できたことに達成感を覚えます。

回収したペットボトルの数を数えてみると、222本もありました。

ペットボトルのなかには、数十年前に見たことのあるような懐かしいラベルのものもあります。

私たちの生活にとっては便利な存在であるペットボトルですが、自然界にとっては不都合な存在なのです。

そして、商店も、自動販売機もない島にもかかわらず、大量のペットボトルが落ちています。

私たちの生活圏から大量のゴミが、海に流れ出ていることを思い知らされました。

海洋ゴミ問題の深刻さを感じる一方で、参加者全員が楽しそうにゴミ拾いをおこなっていました。

海を一望できる浜辺で体を動かしていると、自然に気分も良くなってきます。

▼ゴミ拾い後は、参加者全員が笑顔になっていました。

民宿「象岩亭」で昼食と勉強会

海洋ゴミの回収を終えたのは12時で、ちょうどお腹が空く時間。

六口島にある民宿「象岩亭」に移動して、昼食をいただきました。

そして、ご飯を食べたあとは、海洋ゴミ問題について勉強します。

民宿「象岩亭」で食べる瀬戸内の幸

象岩亭では、六口島で獲れた海の幸を準備してくれました。

▼タイ、カンパチ、イカの刺身です。

タイ、カンパチは、鮮度を感じるさっぱりとした味わいで、やわらかな食感。

他にも、六口島で採れたワカメの漬物や野菜の天ぷらもいただきました。

どれも六口島の自然の恵みが育んだ素材です。

▼全員で食卓を囲みながら、瀬戸内の幸をいただきました。

座学でも海洋ゴミ問題について学ぶ

昼食後の最初のイベントは、海洋ゴミ問題についての勉強会です。

海洋ゴミを拾うだけでなく、海洋ゴミの実情を学ぶことで、問題への理解を深めていきます。

海洋ゴミ問題について

全国津々浦々でビーチクリーンを実施してきたgreen bird代表から、昨今の海洋ゴミの実態について話しました。

海洋ゴミについての3択クイズが出題され、参加者たちはクイズの正解数を競います。

▼参加者からクイズへの回答と、回答についての意見を共有してもらい、みんなで考えながら勉強会が進行していきました

クイズにもっとも正解した人にはプレゼントが用意されていました。

これまでにgreen birdが回収してきたプラスチックゴミから作ったコースターです。

green bird代表が準備してきたクイズだけでは勝敗が決まらず、もっとも正解数が多かった4人が勝ち残りました。

▼小学生がその場で考えたクイズによって、勝敗を競いました。

ちなみに、小学生が考えたクイズは、「岡山県に言い伝えられている桃太郎の物語において、桃太郎は岡山の人だったのか?岡山の外からやってきた人だったのか?」という内容でした。

クイズの答えがどちらなのか、参加者全員が頭を抱えていました。

ロクシタンの自然保護活動

岡山離島プロジェクトを支援してくれている化粧品ブランド ロクシタンは、企画までの経緯を説明してくれました。

ロクシタンでは、自然保護活動以外にも、6つの社会貢献事業に取り組んでいます。

2022年6月に、6つの事業のなかからもっとも賛同できる事業を選ぶアンケートを、インターネット上で実施。

アンケート結果、全回答数の約2万件のうち、もっとも多い5,850件がgreen birdの活動に投票されました。

賛同してくれた人たちへの期待に応えるために、自然を守る活動の1つとして岡山離島プロジェクトを開催するに至ったのです。

ゴミ拾いで使った手を労ってほしいという想いから、ロクシタンが参加者全員にハンドクリームをプレゼント。

季節は秋に変わり、しばらくすると冬がやってきます。

▼空気が乾燥する季節に、自然由来のハンドクリームが重宝しそうですね。

勉強で頭を使ったあとはゴミ拾い

海洋ゴミの勉強で頭が疲れてきたので、もう一度ゴミ拾いをしました。

今度は、象岩亭周辺の砂浜でゴミ拾いをします。

ビーチクリーン再開

遠目からは、美しく見える浜辺ですが、足元をよく見てみると、小さな発泡スチロールの破片が見つかります。

そして、浜辺を囲むように生い茂る草木の中には、空き缶やペットボトルがありました。

5月の活動で、重点的にゴミ拾いをした場所でしたが、ゴミは島の至る所に流れ着いているようです。

▼ちなみに、写真の奥に見える岩が国指定天然記念物の「象岩」です。

花崗岩(かこうがん)が波による浸食を受けて、象がお尻を向けたような形になったため、象岩と呼ばれるようになりました。

象岩が見える浜辺は、普段は優しい波の音だけが聞こえる静かな場所。

この日は、風の影響のためか、沖合に見える水面は激しくうねっており、浜辺に向かって波が大きな音を立てながら打ち寄せていました。

揺れ動く波に反射した太陽の光がキラキラと輝いて、普段とは異なる美しさを演出しています。

天候によって美しさが変化するのも自然の魅力の1つです。

▼ゴミ拾いを終えたあとに撮影した集合写真は、達成感から笑顔であふれていました。

学びと思い出を持ち帰る

楽しかった六口島での体験を終えて、船に乗って児島観光港へ戻ります。

船には海に浮かぶ桟橋を渡って乗船。

▼不安定な足場に緊張感を覚えながら、船に乗り込みます。

六口島を離れて児島観光港に向かう船は、行きとは違って、穏やかな波の上を進んで行きました。

優しく揺れる船の中では、気持ちよさそうに寝ている人が多く見られました。

島での非日常の体験で、いつも以上に体力を使ったのかもしれません。

▼児島観光港に寄港して、最後の集合写真を撮影しました。

第2回の活動では、第1回の活動よりもたくさんのゴミを拾いました。

一度は回収したはずの場所にもかかわらず、多くのゴミが見つかることから、海にはたくさんのゴミが漂っていることが理解できます。

2回の活動を実施したからこそ、海洋ゴミ問題の深刻さをうかがい知りました。

島という非日常の場所での楽しかった思い出、海洋ゴミについての知識、そしてゴミを持ち帰り、今回の岡山離島プロジェクトは終了しました。

六口島を再訪して感じたこと

第2回の活動を通じて、海には大量のゴミが漂流していることを実感できました。

参加者のなかには、第1回と第2回の両方の活動に参加した人もいて、数か月前に回収したはずの場所が、ゴミであふれかえっていることに驚きを隠せないようすでした。

世界の国々から毎年流出するゴミの量は、人の手で回収できる量を超えているといわれています。

おそらく、ビーチクリーンの意義はゴミを拾うことよりも、海洋ゴミ問題の深刻さを理解することにあるのかもしれません。

ゴミを流出してしまう社会の仕組みを変えることが本質的な解決策であり、解決策を作るためには海洋ゴミに対して問題意識を持つ人が社会に多くいる必要があります。

島でのゴミ拾いを通じて、海洋ゴミ問題に危機感を覚える人が増えて、社会で暮らす多くの人の行動が変化することを期待しています。

そして、そのために重要なのは、継続した活動。

環境保護活動を継続して取り組むロクシタンのような企業は、社会にとって大切な存在なのだと気がつきました。

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