「北限のツバキ」酵母を蒸しパンに 青森・平内町 協力隊・辻井さんと八戸高専

辻井さん(後列中央)、石屋さん(前列中央)、高畑さん(同右)ら蒸しパン開発に携わったメンバー
蒸しパンを試験販売する開発メンバーら

 青森県平内町が同町夏泊半島・椿山で自生する「北限のツバキ」から抽出した「椿山酵母」を使った蒸しパンを開発した。町地域おこし協力隊の辻井輝子さん(46)と、同酵母の研究をしている八戸工業高等専門学校(八戸市)の学生が一緒に考案。3日、町内のイベントでお披露目した。

 町の花であるツバキを生かして新たな地域の逸品を生み出そうと、八戸高専が商標登録している同酵母に着目。町民にも親しんでもらうため、町内のパン店「Panya ichico(パンヤ イチコ)」と共同で開発に取り組んだ。

 八戸高専からは山本歩准教授の指導の下、マテリアル・バイオ工学コース5年の石屋優さん(20)と高畑碧さん(20)が参加。8月から辻井さんら関係者とともに試作を繰り返し、蒸しパンに適した酵母の株の選定や味付けの検討を行った。同時に椿山酵母のデータ分析を進め、パン生地を膨らませやすく、果物や花と同じ香り成分を含むなどの特性を持つことを解明した。

 試行錯誤を重ねた結果、ツバキの花をイメージした真っ赤なトマト&紅茶味、町産米粉100%、クリームチーズ味の3種類を商品化。同酵母が生み出すフルーティーな香りやほのかな甘みが感じられる味わいに仕上げた。

 3日は3個入り500円(税込み)を限定30セット試験販売し、1時間ほどで完売した。「酵母の特徴を生かした物を作りたくて、個性を探すのが難しかった。最初の試作では食感が悪く、ここまでおいしくできるとは思っていなかった」と石屋さん。

 高畑さんは「おいしいと思って食べてくれたらうれしい。また、これをきっかけに酵母を身近に感じ、興味を持ってもらえたら」と話した。

 蒸しパンは今後、イチコでの店頭販売を検討しているという。辻井さんは「椿山酵母といういい物があることを町の人たちに認知してもらい、資源としての活用が広がってほしい」と語った。

© 株式会社東奥日報社