乃木坂46・池田瑛紗が渋谷で忠犬ハチ公の“犬としての命”を表現 作品設営で語ったアーティスト魂

乃木坂46・池田瑛紗(いけだ・てれさ)のアート作品が、11月6日から西武渋谷店(東京・渋谷)で公開されている。今春、東京藝術大学に入学した池田は、アイドルとしての活動と藝大生としての学びに励む二刀流を体現。『第15回渋谷芸術祭2023』(2023年11月6日~12日)内の企画に参加する形で、自身の作品を初めて世に出した。アーティスト池田はどのような思いで作品を仕上げたのか。entax取材班は、作品の設営をする池田に話を聞いた。

■家でも事務所でもずっと描いていて「楽しかった」 企画参加の機会に感謝

閉店後の西武渋谷店B館1階、買い物客が引き払った後の静かなフロアに、正方形のキャンバスを手にした池田が現れた。そこには、渋谷芸術祭と日本テレビのコラボ企画『~ハチ公生誕100年特別企画~「探せ!ARTハチ公100変化ARスタンプラリー」』に、参加アーティストとして選ばれ制作した池田の“ARTハチ公”が描かれている。

――昨日、横浜アリーナの『バズリズム LIVE 2023』に出演されていましたよね。

はい。その前後(リハーサルでの空時間など)で描いたりしていました。

――学校も乃木坂46の活動もある中で大変でしたね。制作にどれくらい時間がかかりましたか。

お話をいただいた1か月くらい前からイメージし始めたことを考えると、結構長い期間でしたね。(5つある作品は)同時進行なので何日かかったか厳密には言えないですが、家に帰ってから描いたり、たまに事務所でも描いたりずっと描いていました。でも、描くのが好きなのでやっぱり“楽しい”という気持ちが1番で、普段できないこのような機会をいただけて感謝しています。

■手袋をはめ設営スタッフと共に作業する池田 「自分でする時の参考になりました」

大小併せて5枚のキャンバスで構成された作品を、設営スタッフと共に特設の壁に飾り付ける池田。自らも手袋をはめキャンバスの配置を細かく検討する。一歩離れて来場者からの見え方をチェックし、くぎ打ちなどの慣れない仕事を任せるスタッフを見つめるまなざしはアーティストの眼だ。

――キャンバスの配置は決まっていたのですか?

はい、作品をつくる前にイメージをしていました。作品のサイズ規定の中で(来場者)の視線誘導なども考えて。今の細かい位置決めは、勘かな(笑)。

――展示が完成しましたが、いかがですか?

こんなに素敵に飾っていただいて、ほんとうに感無量です。完成度が上がった感じがします。個展などをやっている友だちはみんな、こういうことを自分でやっているので、(今後)自分でする時の参考になりました。お手本を見られて良かったです。

――作者紹介のパネルもありますね。

初めてつくっていただいたので感動しています。(作品の説明文に)犬の絵が付いているんですよ。絵文字を付けて送ったんですが、こんなにきれいに反映していただけると思っていなくて、うれしいです。

■ひしめき合うハチ公たちと自由なハチ公 5つのキャンバスで「生身の犬の命」を表現

企画への参加が発表された時、作品づくりについて池田は「生身の犬の命を感じたい」と言っていた。池田の“ARTハチ公”は1匹ではない。数えきれないほどのハチ公が所狭しと描かれた大きなキャンバスと、見たこともないハチ公の姿が描かれた複数の小さなキャンバスが用意されている。どのような思いが込められているのだろうか。

――作品のテーマを教えてください。

ハチ公をモチーフに渋谷のイメージをグラフィックとして描いています。人が集まっている感じだとか、自然と人工物が共存しているところも表現しました。

――「生身の犬の命」は表現できましたか?

はい。(大きなキャンバスの)ひしめき合っている感とか。

――スタンプを押したような同じハチ公がたくさんいますね。最初の一匹目はどのハチ公ですか?

元の絵をつくってから、全部手書きでトレースしています。最初の一匹は真ん中の手前のハチ公です。後は左上から重なるように、ひたすらトレースして描きました。

――グレーと赤と白という3色が基本になっていますが、こだわりはありますか?

好きな色の組み合わせなんです。赤一色でも8色ぐらい使っています。グレーも絵の具を混ぜたりして、混色も含めたら同じ色はないんじゃないかっていうくらい、ほんとうに使っている色はもっともっと多いんですよ。

――観てくださる方に作品から伝えたいメッセージはありますか?

このハチ公を観て、犬としてかわいいなと思ってもらえたらうれしいです。

ハチ公は“ハチ公”というイメージが先行していると思います。もし今、私たちが生きているハチ公に会ったら“忠犬ハチ公”ではなく普通のワンちゃんだと認識するんじゃないかなって思うんです。

だから、ハチ公は小さい頃はどんな様子だったんだろう、大人になってどんな体勢で過ごしていたんだろうと考えてスケッチし、気に入った形を作品にしました。小さい頃といっても子犬というわけではなくて、ふんわりした概念っていう感じで、固定したイメージは持たずに自由に描いています。

――動きがあってかわいいですね。

ありがとうございます。最近犬を飼い始めたことで、実際に犬に触れないとわからない犬の魅力や、(犬に対する)解像度みたいなものが、この作品にも表れているのかなと思います。犬を飼っていたり、犬の近くにいる人と、そうではない人とでは、この作品の感じ方もちょっと変わるかもしれませんね。

■「絵を描くのは孤独な作業だと思っていた」池田がアイドルと現役藝大生になって気づいたこと

絵を描き始めたのは物心が付く前、文字を書くより先だったと言う池田の、アートとの出会いはインターネットなのだとか。ネットで作品を観るうちに「自分が好きなイメージってこういう感じだな」と頭の中にスクラップブックをつくる要領でアーティストとしての素地を育んでいたそうだ。

――今年から東京藝術大学の学生とアイドルという二足のワラジになりましたね。違いを感じますか?

それぞれに違った緊張感を感じます。絵は基本的にやり直せるのですが、(作品を描き)終わるかなという緊張感があります。一方アイドルのお仕事は、本番は一発勝負。違う種類の緊張感です。

でも……私は、絵を描いたりするのは孤独な作業だと思っていたんです。けれど今回の作品を制作する中でたくさんの方のお力をお借りして、そういう意味ではアイドルのお仕事にも通じているなと思うんです。

――乃木坂46の活動にアーティストとしての池田さんはどんなふうに影響していくでしょうか。

ファンの方に自分の新たな一面を知っていただくのと同時に、絵のほうから乃木坂46やアイドルのことを知ってくださる方もいると思います。今回の作品がその2つの世界をつなぐようなきっかけになればいいなと思っています。

『~ハチ公生誕100年特別企画~「探せ!ARTハチ公100変化ARスタンプラリー」』では池田のほか、福島滉平、池平徹兵など12名の現代アーティストがハチ公をモチーフにした作品を制作、西武渋谷店内の各フロアや渋谷周辺を回遊するラッピングバスに点在展示している。さらに渋谷の街中に、AI自動生成によるデジタルARハチ公88体が出現。来場者は特設サイトにアクセスし、計100体の“ARTハチ公”を見つけてスタンプを集めることで、抽選で豪華賞品を獲得できる。期間は11月12日まで。

写真:©entax

【渋谷芸術祭2023コラボレーション
〜ハチ公生誕100年特別企画〜「探せ !ARTハチ公100変化 ARスタンプラリー」 】
開催期間:2023年11月6日 (月)〜11月12日 (日)
開催場所:西武渋谷店内ほか、渋谷の街中
ARスタンプラリー公式サイトはこちら
公式X(旧Twitter)はこちら

【第15回渋谷芸術祭2023 〜SHIBUYA ART SCRAMBLE〜】
開催期間:2023年11月6日 (月)〜11月12日 (日)
開催場所:渋谷駅周辺、原宿各所

【池田 瑛紗Profile】
2002年5月12日生まれ。東京都出身。身長159cm。
2022年2月に応募人数87,852人の中から選ばれた乃木坂46の5期生メンバーのひとり。
長所は「一度会った人のことは忘れない」。

【乃木坂46】
AKB48公式ライバルとして結成したアイドルグループ。グループ名の「乃木坂」は、最終オーディション会場の「SME乃木坂ビル」に由来する。「46」の由来に関しては、秋元康氏の「AKB48より人数が少なくても負けないという意気込み」から。

【超・乃木坂スター誕生!LIVE】
日程:2023年12月16日(土)、17日(日) ※全3公演
会場:国立代々木競技場第一体育館(東京・代々木)

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