【どうする家康】真田に翻弄されるも、忠勝の娘・稲が大活躍

江戸幕府初代将軍・徳川家康の人生を、松本潤主演で描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。11月5日放送の第42回『天下分け目』では、一族で敵味方に分かれて生き残りをはかる真田家にもスポットが当たり、特に本多忠勝の娘・稲の活躍にSNSは喝采となった(以下、ネタバレあり)。

【どうする家康】第42回より、甲冑を着込んで舅と義弟を追い返した稲(鳴海唯)(C)NHK

■ どうする家康、真田昌幸の手腕に感服

家康と石田三成(中村七之助)の戦が避けられないなか、信州上田の真田家は、嫡男・真田信幸(吉村界人)が家康側に、当主・昌幸(佐藤浩市)と次男・信繁(日向亘)は三成側に着くことに。信幸の正室で本多忠勝(山田裕貴)の娘・稲(鳴海唯)は、夫の代わりに沼田城を昌幸と信繁から守り、昌幸は「さすが本多忠勝の娘」と称えて引き返した。

【どうする家康】第42回より、「乱世を泳ぐは愉快なものよ」と話す真田昌幸(佐藤浩市)(C)NHK

その後、昌幸は上田に攻め入ってきた家康の嫡男・秀忠(森崎ウィン)に降伏する旨を伝えながらも、そのまま籠城体制に。さらに忍びを使って進軍をうながす書状を奪い、秀忠が率いる家康の本軍の足止めに成功した。昌幸は「乱世を泳ぐは愉快なものよ」と喜び、秀忠に従った本多正信(松山ケンイチ)と榊原康政(杉野遥亮)は、その手腕に感服するのだった・・・。

■ 歴史好きの期待に応えた、稲の勇ましさ

日本中の大名が真っ二つに分かれた「関ヶ原の戦い」では、主戦場の関ヶ原以外でも、各地で小競り合いが繰り広げられた。なかでも最も有名なのが、真田昌幸が徳川秀忠を蹴散らした「第二次上田合戦」だ。2016年の大河ドラマ『真田丸』では、昌幸や信繁のジャイアント・キリングぶりに痛快さを覚えたが、逆に『どう家』はその姑息(褒めてます)な戦いぶりに、秀忠とともに歯ぎしりするような心境になった人が多かったのでは。

そしてこの戦いで一番人気のエピソードは、身内の気安さを利用して沼田城制圧を企てた昌幸の計略を稲が見透かして、自ら甲冑を着込んで舅と義弟を追い返したということ。第36回で稲の輿入れのくだりがしっかり描かれたことから、歴史好きからは「この話をちゃんとやってくれるか?」と期待が高まったが、まさに父・忠勝を彷彿とさせる勇ましさで見事に役目を果たした。

【どうする家康】第42回より、制圧を企てて沼田城を訪れた真田昌幸(佐藤浩市)と信繁(日向亘)(C)NHK

予想通りSNSでは「おおー、稲ちゃん立派になって!!」「正室の鑑! 強い!」「嫁ぐ時に『真田家、我が戦場として申し分なし』と言い放っただけある!」などの声援に加え、忠勝そっくりの槍ドン姿&「ここから先は一歩も通しませぬ」という台詞に「忠勝様の血が強い!!」「パパと同じ台詞(号泣)」「本多ismを見事に継承してる」という感動の声が。

そして孫の顔を見ることは許されても下馬はできず、孫たちが「じいじー!」と呼ぶ声を聞きながらさびしく去っていく昌幸の姿には「あの短いやりとりで、孫たちに懐かれるやさしさを持っていた人だとわかる」「この孫たちとのシーンの為に佐藤浩市さんが真田昌幸を演じられていたのだな、と深く思った」と、しんみりとしたコメントが寄せられた。

■ 昌幸らしい戦いぶり、気の毒すぎる秀忠

とはいえ、そんな孫のメンタル攻撃から即座に立ち直って戦闘モードに入れるのは、さすが真田。秀忠に降伏の書状を送って無駄に待機させたうえに、忍びを使って家康との連絡まで断つという周到さ。秀忠が関ヶ原に遅れた理由にはいろんな原因があるが「書状を真田の忍びに奪われた」というのは、今回で初めて提唱された説ではないだろうか。

この真田昌幸らしい戦いぶりに、SNSでは「真田ぁ! 流石に表裏比興の者」「どんな不利な状況でも生き抜いてきた真田だけに、やり方はかなり汚いが、それで生き残ってきたのは戦上手」「真田出てくるとやっぱり面白いな。胡散臭い昌幸がどうしてもたまらなくいいのよな」という、けなしながら称賛するようなコメントが。

【どうする家康】第42回より、一度降伏するも籠城した真田に翻弄される秀忠(森崎ウィン)(C)NHK

しかし気の毒なのは、いくら正信&康政という徳川家臣切っての知恵者コンビが着いているとはいえ、初陣でこんな戦国の怪物の相手をせねばならなかった秀忠くんだ。降伏の書状を純粋に喜んだり、正信のアドバイスに即座に反応するなどの、あまりにも素直な反応&狼狽ぶりは、まだ20代だった「三河一向一揆」の頃の家康を彷彿とさせる。

SNSでも「おっちょこちょいで愛されポンコツで若いときの家康にそっくり」「秀忠、いいキャラだな~。一人だけオタオタしてるのも、若い感じが出てて良い」「正信、康政が居るとはいえこの頃の秀忠には真田の相手は荷が重すぎるよな」「秀忠ーーめげないでーー。本多も榊原もいたんだからしゃーない。次行こ次」「秀忠くん、まだ21歳なので勘弁したって」などの励ましの声が多数寄せられた。

家康が主役だけに、第一次上田合戦のようにほぼ報告だけで終わる恐れもあったが、第二次はそれぞれのキャラクターが生きる形で、結構な尺を使って語られたのが喜ばしい。そして最後の昌幸&信繁親子の会話から、彼らが家康の「戦なき世を作る」という理想に相反する存在ということが推し量られた。のちに信繁が「幸村」の名で家康と対峙するとき、この回を思い出すことになるかもしれない。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。11月12日放送の第43回『関ヶ原の戦い』では、東軍・西軍合わせて15万の兵がぶつかりつつも、その裏では様々な謀略が巻き起こる、運命の戦の様子が描かれる。

文/吉永美和子

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