クマ対策支援新制度も検討 新田知事要望に伊藤環境相

伊藤環境相(左)にクマ対策支援を要望する新田知事=環境省

  ●専門家派遣を要請へ

 市街地にクマが大量出没し、人身被害が相次いでいることを受け、新田八朗知事は9日、環境省に伊藤信太郎環境相を訪ね、被害対策支援についての緊急要望を行った。伊藤氏は「地域のニーズに応じた緊急的な支援、必要に応じて新たな制度創設も含めて検討する」と述べ、補正予算などで富山県などの対策を支援する方針を示した。新田知事は国に対し、クマ対策の専門家の派遣を要請する準備をしていることも明らかにした。

  ●富山県も補助対象

 クマの大量出没について都道府県知事が環境省に要望活動を行うのは初めて。新田知事から要望書を受け取った伊藤氏は「今年はクマの大量出没で人身被害が過去最多。環境省としても被害防止が喫緊の課題」と危機感を示した。環境省では既に被害が目立つ北海道や東北の自治体に対し、人家周辺に生息するクマの調査、捕獲などにかかる費用を補助する方針を示していたが、富山県も対象とする方向で制度設計を進める。

 新田知事は県として、放置された柿など果樹の除去に対する支援などを行っているとし、今年は特例的にパトロールにかかる経費の補助の限度額を撤廃したことなどを説明し「県でも被害拡大防止に努めており、国も新たな支援制度を創設してほしい」と求めた。来年度以降のクマの出没を減らすため、国主導で市街地への出没傾向や行動パターンの生態調査を行うことも要請した。

 環境省によると、今年度のクマによる人身被害の件数は10月末時点で164件と過去最悪のペースとなっている。県内では既に6件発生し、7人が死傷している。

  ●「県警の取り組み後押し」

 新田知事は懇談後の取材で、環境省がクマ対策の専門家を自治体に派遣する制度について、活用を視野に県警と同省が協議していると説明した。伊藤氏も「県警の取り組みを支援する」と述べた。自治体の要望に応じて専門家が現場を確認したり、勉強会を開いたりする。

 要望には山本徹県議会議長も同行した。

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