バスの大型手荷物問題、京都市バスが「手ぶら」を呼びかけ

1年を通し、多くの観光客でにぎわう京都。移動手段として重宝される「京都市バス」だが、観光客の増加にともない車内の混雑が続いている。

手ぶら観光を呼びかけている京都市バス(写真提供:京都市交通局)

満員状態のバスで、筆者がどうしても気になるのがバックパックやキャリーケースなど、大型荷物の扱いだ。ただでさえ人でぎゅうぎゅうな車内で、大きな荷物に圧迫されたり通路が塞がれたり・・・。

11月から12月初旬にかけての紅葉シーズンはさらに混み合うことが予想できるが、どうにか「荷物問題」が改善されないものか。そこで、市バスや地下鉄を運営する「京都市交通局」と、京都市の観光客誘致や情報を発信する「産業観光局観光MICE推進室」(中京区)に、現状や具体的な対策について訊いてみた。

■ 手荷物制限や有料化は「現状では不可能」

「バス車内への大型荷物の持ち込みは混雑やトラブルに繋がる深刻な問題だと認識しています」と明かすのは、交通局の担当者。局のメールフォームには、バスの停車・発車時、乗客がキャリーケースから手を離してしまい、ほかの客に当たってしまうといったケースなども報告されているという。

実は、「京都市乗合自動車運送約款」のなかで、乗客が無料で車内に持ち込むことができる手荷物の規定は「総重量10kg、総容積0.027立方m(1辺0.3m)、長さ(3辺の合計)1m」と定められている。海外旅行用の大型キャリーケースならゆうに超えてしまうサイズ感だが、規定を超えた場合の具体的な対応などは定められていないのが実情だ。

京都市バス車内。なかには荷物置きスペースがあるバスも(写真提供:京都市交通局)

さらに、国が定めた「旅客自動車運送事業運輸規則」にも荷物の持込制限に関する記述があり、通路や非常口などを塞ぐ可能性のあるものは持ち込んではならないと定められている。こちらは運転士判断で拒否することも可能で、実際にママチャリやベッドのマットレスを持ち込もうとした人の乗車を断るという事例もあったとか。

それなら、局として新たな制限を設けることも可能では? と疑問をぶつけてみると、「大型手荷物の持ち込みを制限することは、市民の方が旅行、出張、部活動などさまざまな理由で使用する手荷物にも制限をかけ、生活の利便性が低下することにもつながります」と担当者。

また、「大型荷物の持ち込み有料化」という案も出ているものの、運転士が乗客の手荷物をその都度確認する必要が生まれ、外国人観光客に対してはより丁寧な説明が必要となることも想定される。対応に時間がかかり、乗客とのトラブルもありえることから、現実的には困難であることがうかがえた。

■ 浸透しつつある「手ぶら観光」だが…

そんな荷物問題を解決すべく市で推進している取り組みが、荷物をコインロッカーなどに預ける「手ぶら観光」だ。観光MICE推進室によれば、主に外国人旅行者の利便性向上のためスタートしたが、荷物に関連する混雑や騒音問題が増加したことでより力を入れるようになったとか。

2018年からは荷物の受け入れを担う事業者の情報を集めたサイト『Hands Free Kyoto』を立ち上げ、今年度は同サイトに掲載する事業者の拡大、京都駅における臨時手荷物預かり所の開設など、取り組みを強化している。

市バス車内に貼られていた、手ぶら観光を勧める張り紙

交通局も、ポップなオリジナルキャラクターを起用し、HPやデジタルサイネージ、英語・中国語も使用した車内の啓発ポスターなどで荷物の預け入れを呼びかけている。さらに、バス混雑の要因のひとつと考えられていた「バス1日券」を廃止。観光客には「地下鉄・バス1日券」を積極的にPRし、地下鉄利用を取り入れることで人出が分散されるように誘導している。

その甲斐あってか、手ぶら観光はある程度浸透しているそうだが、一方で駅周辺の手荷物預かり事業者やコインロッカーがキャパオーバーになる事態も発生。今度は観光シーズンにおける手荷物預かり容量の確保が求められるなど、まだまだ課題は多いようだ。

「手ぶら観光」を呼びかけるポスター(写真提供:産業観光局観光MICE推進室)

紅葉シーズンがおとずれ、深刻化することが予想できる荷物問題。局の担当者は、「車内に大型荷物を持ち込む場合は、荷物から手を離さない、リュックサックなどは体の前か手に持っていただく、手荷物置き場が設置されている車両については荷物置きスペースに置いていただくなど、ご配慮いただければ。また、可能な限り荷物を預けて交通機関を利用する『手ぶら観光』へのご協力をお願いします」と呼びかけている。

取材・文/つちだ四郎

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