「BLUE GIANT」でジャズにハマった人も! 11月公開〈ジャズの偉人たち〉を追う濃厚ドキュメンタリー『JAZZ GODFATHER』&『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』を要チェック

©株式会社ロックス©Hargrove Documentary LLCcourtesy of Poplife Production

「ジャズ沼」に浸る必見ドキュメンタリー2作

米ルイジアナ州ニューオーリンズが発祥といわれる音楽、ジャズ。今から100年以上前、多種多様な人々が行き交う港町で、アフリカから連れてこられた黒人たちとヨーロッパの人々の文化が入り交じる過程で生まれた音楽であり、無論その誕生には当時の人種差別や格差、貧困なども無関係ではない。

日本におけるジャズの歴史は古く、最初のジャズバンド結成は1910年代のこと。かつてヨーロッパの植民地下であった東南アジア、とくにフィリピンにアメリカ文化が入ってきたことでジャズが一大ブームとなり、それを教科書に“日本のジャズ”の下地が出来上がっていった。

そして現在、「雰囲気は好きだけど、とっつきにくい音楽」の筆頭だったジャズは、漫画/アニメ映画『BLUE GIANT』の大ヒット効果もあり、過去にないほどお茶の間に浸透しつつある。そんなタイミングで公開されるのが、日本とアメリカのジャズの偉人たちの軌跡を追った超濃厚なジャズ・ドキュメンタリーだ。

ジャズは人生そのもの……より深くジャズを知るための映画として、偉人の生涯を見つめた2作を紹介したい。

世界に知られたベーシスト・鈴木勲の最期を映し出す『JAZZ GODFATHER』

日本のジャズ・ベーシストとして世界にその名が知られ、“JAZZ GODFATHER(ジャズ・ゴッドファーザー)”と呼ばれた鈴木勲。2022年3月8日に亡くなった彼の、生前からの演奏、その日常、また独特で奇抜で自由奔放な素顔に迫るドキュメンタリー映画が『JAZZ GODFATHER』。

鈴木勲は一人のジャズ・ミュージシャンとして、その魅力あふれる演奏とパフォーマンスにより、日本のみならず海外でもエラ・フィッツジェラルド、チャールズ・ミンガスらジャズ界の巨匠らとも共演し、多数のアルバムをリリースし後進も育成してきた。本作には山下洋輔、日野皓正、鈴木良雄、秋山一将など、日本のジャズ界を代表する錚々たるミュージシャンたちの証言も収められている。

『JAZZ GODFATHER』は2023年11月11日(土)より新宿K’s cinema、第七藝術劇場ほか全国順次ロードショー

ヒップホップにも影響を与えた天才トランペッターとは?『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』

ジャズの伝統を守りつつも、R&B/ヒップホップにも影響を与えた天才ジャズ・トランペッター、ロイ・ハーグローヴ。2018年に49歳で急逝した彼の人生最期の夏に密着し、命の限りに音楽に情熱を注ぐ姿を克明にとらえたドキュメンタリーが『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』だ。

ロイ・ハーグローヴは1969年に米テキサス州ウェーコで生まれ、2018年11月にニューヨークで死去。10代でプロ・デビューし、ジャズの伝統を受け継ぐ正統派かつエネルギッシュなプレイで、瞬く間にシーンの寵児となったトランペット奏者であった。

若くしてソニー・ロリンズ、オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコックなどの巨匠に起用される一方、自身のバンド「ロイ・ハーグローヴ・クインテット」を率いて活躍したハーグローヴ。さらに、エリカ・バドゥ、ディアンジェロ、クエストラヴ、モス・デフ(ヤシーン・ベイ)など、同世代のR&B/ヒップホップのアーティストと交流し、“ネオソウル”と呼ばれた新しいブラック・ミュージックの潮流の創出に貢献。そして、プロジェクト「RHファクター」では、ジャズとR&B/ヒップホップを本格的に繋ぐ先駆者となり、ロバート・グラスパーに連なる現代ジャズ・シーンの礎を築いた。

そんな華やかなキャリアの一方で、その生涯は病と隣り合わせで、晩年は腎障害により透析治療を受けながらの活動だったという。人生最後となった2018年夏のヨーロッパ・ツアーに密着した本作は、体調が万全でない中、ステージで命を燃やすようにトランペットを演奏する壮絶な姿を捉えている。ロイ自身の言葉はもちろん、彼と親しかった数々の音楽仲間たちの貴重な証言も見逃せない。

『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』は2023年11月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ ほか 全国順次ロードショー

ホイットニー・ヒューストン最期の作品となったミュージック・ドラマ『ホイットニー・ヒューストン/スパークル』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年12月放送

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