我が子を手放す母、母親になりたいと願う女性 「養子縁組」の舞台裏まで丁寧に描く感動の人間ドラマ『イン・セイフ・ハンズ』 キノフェスで上映中

『イン・セイフ・ハンズ』© 2018 TRÉSOR FILMS - CHI-FOU-MI PRODUCTIONS - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS

今年も開催「キノフェス」注目作が目白押し!

厳選された様々なジャンルの8作品を〈kino cinéma〉限定で上映するイベント「キノフェス」が今年も開催中。知られざる欧米の注目作品が目白押しだが、作品ごとに期間限定での上映となるため気になる作品があったら迷わず劇場にGOしたいところだ。(※kino cinéma神戸国際は対象外/上映期間は変更や延長の可能性あり)

そんなキノフェス、あえて今年の注目作品を挙げるならば、クリストフ・ヴァルツが出演兼初監督を務めたピューリッツァー賞受賞の脚本家が手がけた実話に基づくクライム・サスペンス『ジョージタウン』(10月27日~)、ベン・スティラーが製作総指揮を務めた、2012年に実際に起きた「主婦がクーポンで数十億円を荒稼ぎ」というアメリカ史上最大規模の偽造クーポン詐欺事件をもとに映画化した『クイーンピンズ』(11月24日)、そして日本でも00年代にTV放送され隠れたファンを持つキュートでダークなアニメ『プチバンピ』(12月1日)だろうか。

そしてもう一つ注目したいのが、11月10日(金)から上映の『イン・セイフ・ハンズ』。母親が養子に出すことを希望した赤ちゃんの出産から、母親になりたいと願う40代の女性に出会うまでの3ヶ月を描いた、フランスの養子縁組機関の取り組みをリアルに描く感動のヒューマンドラマだ。

「養子縁組」を行政の目線も交えて丁寧に描く

――新生児テオの母は出産時、養子縁組に出すことを希望したため、児童福祉サービスがテオを迎えに来る。里親となったジャンは養子縁組が成立するまで、テオの調子を注意深く観察しながら育てることに。

一方、養子縁組機関はテオに一番適した親を候補者から選ぶ手続きを進める。候補者の一人であるアリスは、多くの問題に直面しながらも子どもを迎える準備に取り組んでいた。テオを取り巻く児童保護サービスのメンバーが力を合わせ、ついにテオとアリスの出会いを実現するが――。

まるでドキュメンタリーのようなスタイルと生々しい題材で、“養子縁組”とは何なのか? ということを実感させてくれる本作。子どもたちの未来を請け負う社会福祉事業や里親の舞台裏、養子を迎える家庭に与えられる試練など、その過程がいかに難しいことなのかを描きながら、我が子を手放すことを決意した親への支援の必要性など、我がことなければ知るチャンスのない様々な実態について、丁寧に描いているのが印象的だ。

仏題の『Pupille』には「瞳」という意味のほかに「孤児」という意味もある。それぞれ見事な演技を披露する俳優陣が赤ちゃんを見つめる目、新生児が保育機の中から大人たちを見上げる目……そこから感じられる“何か”が、本作の重要なファクターの一つになっているようにも思う。

「キノフェス2023」はkino cinémaにて開催中

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