インテュイティブ・マシーンズ、月着陸ミッション「IM-1」の打ち上げは2024年1月12日以降に 目標は月南極域のクレーター

アメリカの民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)は現地時間2023年10月27日、同社初の月着陸ミッション「IM-1」の打ち上げを2024年1月12日以降に再設定したと発表しました。IM-1ミッションは同社の月着陸船「Nova-C」による初の月着陸ミッションです。

【▲ インテュイティブ・マシーンズ社の月着陸船「Nova-C」のフライトモデル(実機) (Credit: Intuitive Machines)】

IM-1ミッションのNova-Cは米国フロリダ州のケネディー宇宙センター39A射点からスペースXの「ファルコン9」ロケットで打ち上げられます。当初は2023年11月16日に打ち上げられる予定でしたが、今回の発表で2024年1月に延期されたことが明らかになりました。同社は延期の詳細な理由については述べていません。

海外メディアのSpaceNewsは、2023年10月3日に開催されたメディア向けイベントにて同社の幹部が39A射点の“pad congestion(射点の混雑)”が発生する可能性に言及したと報じています。39A射点には打ち上げ直前のNova-Cにメタンと液体酸素を供給する機能があるものの、近隣のケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設にはその機能がないことから、Nova-Cを搭載したファルコン9の打ち上げが39A射点で実施されなければならないとSpaceNewsは指摘しています。

【▲ インテュイティブ・マシーンズ社の月着陸船「Nova-C」による月着陸の想像図 (Credit: Intuitive Machines)】

IM-1ミッションはNova-Cの初飛行であり、アメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月輸送サービス(CLPS)の下で選定された5つのペイロードを搭載しています。着陸目標地点は月の南極域にあるクレーター「マラパートA(Malapert A)」で、着陸は打ち上げから約7日後、運用期間は約2週間の見通しです。

CLPSはアメリカの民間企業によって開発されたペイロードをNASAが募集し、月面まで輸送する官民連携の仕組みです。NASAが推進する有人月面探査計画「アルテミス」は民間企業や国際協力によって進められることに重点をおいており、CLPSでは将来のミッションで宇宙飛行士が月面に滞在する際に必要となる技術の実証や月面に存在するとみられる水の探査などが行われます。

また、IM-1ではNova-Cに民間企業による6つの商用ペイロードも搭載されています。例えばインテュイティブ・マシーンズとパートナーシップを結んだスポーツウェア大手のコロンビアは、同社の熱反射テクロノロジーであるオムニヒートインフィニティによる月着陸船の断熱効果を実証します。オムニヒートインフィニティに使用されている金色の金属箔による断熱効果は、既に地上の実験でその効果が確認されているということです。

なお、アメリカでは多くの民間企業が月面着陸を目指して着陸機の開発を行っています。その1つであるアストロボティック社の月着陸船「Peregrine(ペレグリン)」は、早ければ2023年12月24日にユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「Vulcan(ヴァルカン、バルカン)」の初飛行で打ち上げられる予定です。

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文/出口隼詩

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