少花粉スギ 増す期待 再造林へ生産拡大 茨城県・生産者

花粉の少ないスギ苗の生育状況を見る生産者=那珂市菅谷

政府が花粉症を「社会問題」と位置付ける中、茨城県や生産者は花粉の少ないスギの普及に力を入れる。少花粉スギの生産は年々拡大し、高品質な苗の全国有数の産地となっている。花粉症対策として期待が増す中、県は「普及拡大に努めたい」として支援を強化する。

県林業種苗協同組合(同県水戸市)に所属する6事業所などが少花粉スギの苗木生産を手がける。花粉症対策として需要が年々増加。出荷量は2017年が52万本だったのに対し、23年は60万本に拡大した。

同県那珂市菅谷の飯塚種苗園の飯塚聖二さん(40)は、1年間にスギ30万本、ヒノキ10万本の苗を生産する。組合青年部のメンバーでつくる「茨城みらいの苗木研究会」のメンバーと、病害虫や高気温に強い少花粉の苗木の研究に努め、「花粉症に悩む人のため、品質のいい苗をつくりたい」と話す。

少花粉苗の茨城県生産者は、育苗技術を競う「全国山林苗畑品評会」で、17年から6年連続で最高位の農林水産大臣賞を受賞するなど全国的に品質の高さが認められている。

組合は事業者などが栽培した苗木を県内の森林組合などのほか、東京、千葉、埼玉、群馬県に出荷。大越靖史事務局長(43)は「高品質な苗木を作り、森を守っていきたい」と話す。

県は森林湖沼環境税を活用した事業「いばらきの森再生事業」の一環として、苗を植え替える森林組合や事業所に対し、苗木の購入費や植え替えに必要な経費を全額補助し、再造林を後押ししている。

県林業課によると、再造林の面積は事業を開始する前の17年が34ヘクタールだったのに対し、22年は137ヘクタールと約4倍に増えた。26年までに200ヘクタールの再造林の推進を目指している。同課の担当者は「茨城は少花粉苗木の品質が高く、いい森林につながる。再造林を後押ししたい」と話す。

岸田文雄首相は10月、茨城県常陸大宮市内の山林を視察。花粉症対策として、スギの人工林の伐採と少花粉品種の植え替えを進める重点地区を本年度中に設定し、伐採面積を拡大する考えを示した。花粉症対策を加速させる「初期集中対応パッケージ」を策定。発生源となるスギ人工林の伐採や花粉の少ない品種への植え替えを集中的に進めるなど花粉の飛散抑制を図る。

県は「花粉の少ないスギやヒノキの再造林を進めることで、花粉症対策につながる」とし、苗木農家や林業従事者の支援に力を入れる。

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