胎児が感染する「先天梅毒」米で急増、昨年3700人と判明

 米疾病対策センター(CDC)が7日、梅毒にかかった母親の胎盤を通じ胎児が感染する「先天梅毒」について、2022年の患者が3761人だったと公表した。ここ10年で11倍に増えているという。日本でも梅毒患者がここ数年急増しており、母体から感染する先天梅毒が増加する懸念がある。

ここ10年で11倍、日本でも梅毒感染は過去最高のペース

 同センターによるとこの数値は近年継続して増加傾向にあり、ここ10年で11倍にもなっているという。要因として成人女性における梅毒の全体的な増加をあげ、検査を受ければ新生児への感染を防げると呼びかけた。また同時に、この数値は「米国の医療制度の失敗を反映している」と危機感を表明している。

「先天梅毒」は、母親が梅毒にかかっても気づかず未治療でいる間に、胎盤を通じて胎児に原因菌が感染することで起きる。流産や死産、その後の発症で深刻な身体障害を負う可能性があり、CDCの今回の発表では、米国内で2022年に、231件の死産と51件の乳児死亡があったという。母親が原因菌を持っている場合、胎児に感染するリスクは最大で80%もある。

 ここ数年報じられているように、日本でも梅毒の感染者が増加し続けている。国立感染症研究所が定期的に発表している数値によると、今年1月1日から10月29日までにすでに12,434人の感染が判明しており、昨年の13,221人と同様に過去最高ペースの感染が生じている。これは感染が判明した患者の数値であり、先天梅毒のリスクがある、未検査で未治療の母親については含まれていない。梅毒の検査は任意で忌避される傾向があることから、未検査で気づいていない妊娠中の母親が相当数存在することは否定できない。

 梅毒は早期発見すれば投薬で完治できる一方、治療開始が遅れれば身体障害を含む後遺症が残るリスクが高まってしまう。先天梅毒も同様で、特に発症が生後2年目以降のケースだと、これが原因で容貌が変わったり、難聴や角膜の異常で失明することもある。子どもの一生を一変させてしまう恐ろしいリスクを孕んでいるので、心当たりのある人は躊躇せず検査を受け、感染が分かった場合はしっかりと治療に取り組むことが大切だ。

 なお梅毒の検査は、検査を行なっている医療機関ならどこでもプライバシーを完全に秘匿できる体制を整えているので、安心して申し出てもらいたい。

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