法廷で示された“凶器”の「くり小刀」では“長さが足りない”傷が複数…弁護側 検察の主張に疑惑の目【袴田事件再審 第2回公判詳報②】

1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、死刑が確定している袴田巖さん(87)の再審=やり直し裁判の第2回公判が11月10日、静岡地方裁判所で開かれました。

【写真を見る】法廷で示された“凶器”の「くり小刀」では“長さが足りない”傷が複数…弁護側 検察の主張に疑惑の目【袴田事件再審 第2回公判詳報②】

証拠調べとして、検察側の主張に対する弁護側の反論が行われ、午後には、裁判所に採用された証拠として、法廷に凶器とされてきた57年前の「くり小刀」の実物が出されました。

弁護側は、殺害された4人の傷の深さなどについて、主張しました。4人の遺体にある合わせて40か所の傷には、複数の深さの傷があり、そのうち、1人の左胸を刺された傷は「くり小刀」では、長さが足りないこと。また、別の1人はろっ骨が折れているほどの傷があるものの、傷の長さや刺した時の圧力が「くり小刀」では足りないとしました。

その上で、専門家による鑑定結果では、想定される刃渡りが17.8センチ以上の刃物による傷だという結果が出ていることから、より長い刃物が凶器として使われたと反論しました。

放火の際に使われたとされる遺体の周辺から検出された油に関しては、検察は、みそ工場にあった油のうち、一部を犯人が持ち出し、線路向かいの現場に運んだとしています。

しかし、弁護側は、ポリタンクにわざわざ移して、線路を渡って工場から犯行現場まで運んだのであれば、油を移す際に、油の缶のふたや底に血痕がついているはずだと主張しました。

また、弁護側は、検察側の主張に疑惑を向けました。検察は、事件発生から20日以上経った後、現場の「くぐり戸」から血液が検出されていたと主張していました。弁護側は、この主張の根拠となる血液の存在を発光で知らせる「ルミノール反応」自体に不自然な点が残るとし、その信ぴょう性について、争う意向を示しました。

さらに、事件当日の夜、袴田さんが履いていたと思われるゴム草履も法廷に出されました。ゴム草履には、血も油も検出されていなかったことを弁護側は主張しました。

© 静岡放送株式会社