「来年売るホタテない」平内町漁協 稚貝6~7割被害/陸奥湾高水温影響 地域で差

ホタテの稚貝を選別する漁業者。今夏の高水温で多くが死んでいた=1日、平内町

 青森県産ホタテガイの主産地陸奥湾で、7~9月にかけて異例の高水温が続いた影響の深刻さが徐々に明らかになってきた。今月始まった各漁協や県などの調査で、ホタテ稚貝の大量死などの被害が各地で発生していることが判明。一方でホタテの生存率の高い地域もあり、被害には濃淡が見られる。

 「養殖カゴの稚貝約100枚のうち生きていたのは3枚ほど。来年(の生産)は大変なことになる」

 平内町の清水川漁港で今月上旬、ホタテ稚貝の分散作業を進めていた船橋静子さん(69)は諦め顔で話した。高水温を警戒し、水温の低い下層に養殖施設を沈めていたが、被害を避けられなかった。

 湾内10漁協などは6日から、養殖ホタテの秋季実態調査を行っている。県は12月までに結果を取りまとめる方向だが、平内町漁協への取材によると、今回調査の対象となった同漁協の養殖施設では、今年生まれた稚貝の6~7割が死んでいたという。

 同漁協の三津谷廣明組合長は、2010年の高水温によるホタテ大量死被害と比較すると「今年の方がひどい」と強調。「来年売るホタテがない。運転資金などの支援がなければ、今後、生産をやめる漁業者も出てくるだろう」と強い危機感を示す。

 近隣の漁協も同様の被害を訴える。青森市漁協は、今回の調査で「稚貝と(22年に生まれた)新貝ともに約9割が死んだ」(担当者)との感触を受けていると取材に答えた。同じ市内にある後潟漁協も、稚貝の約4割が死んだとしている。

 一方、むつ市の脇野沢村漁協は稚貝・新貝の死んだ割合を「2~3割」、隣の川内町漁協は「4%」とするが、調査対象とならなかった漁業者には「ほとんど全滅」(脇野沢村漁協)のケースもあるという。

 青森産技センター水産総合研究所(平内町、水総研)によると、10年のホタテ大量死では、陸奥湾のうち、水温が特に高かった西湾でホタテの生存率が低く、東湾では生存率が比較的高かった。野呂恭成・総括主幹研究専門員によると「当時は青森市沿岸部の水温が特に高く、水深の浅い養殖施設に被害が多く出た」という。

 水総研は今夏、高水温対策として、養殖施設を水温の低い下層に沈めるよう繰り返し呼びかけたが、別の漁業関係者は「水深の浅い場所では深く沈めることができず、逃げ場がない。今夏は、そうした場所で被害が拡大したようだ」と話した。

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