この秋からスタート!「霧の海」発生をAIが予測
さまざまな分野で「人工知能=AI」が活用されていますが、広島県北部の秋の風物詩の予報にも導入です。三次盆地で見られる「霧の海」の発生をAIが予想する「AI予報」が、この秋から始まっています。
秋から春先にかけて県北部の三次盆地に広がる神秘的な光景…。三次の名物「霧の海」です。3つの大きな川が集まる三次盆地では、川から蒸発する水蒸気と、よく晴れた日の夜に放射冷却によって冷やされた周辺の山々から流れこむ冷たい空気がたまることで、大量の霧が発生します。
その規模は西日本でも最大級…。遠く離れた宇宙からもしっかりと確認できるほどです。
この三次の霧の海を10年以上にわたって研究している岡山理科大学の大橋唯太(おおはし・ゆきたか)教授です。ことし10月から一般向けに「AIによる霧の海発生予報」の公開を始めました。
岡山理科大学 生物地球学部 大橋唯太 教授:
「三次市の高谷山展望台に来ることが以前からあった。必ず行っても霧が出ているとは限らなかった。『あす発生する確率が高いから行こうかな』と、多くの人に利用してほしいというのが、予報を始めるきっかけ」
三次市高谷山にある展望台には、秋になると「霧の海」を見ようと多くの人が訪れます。一方で、霧の発生が薄かったり、逆に濃すぎたりして、うまく見られない日も少なくありません。
過去4年分の「霧の海」発生を “人工知能=AI” が学習
大橋教授が開発した「雲海AI予報」は、過去4年分(2018年~2021年)の10月から12月にかけての気象データと「霧の海」が発生状況を学習したAIが、気象庁から配信される気温や湿度などの予想データを自動で分析。
翌朝に「霧の海」が見られる確率をはじき出すものです。2022年10月から12月の3か月間に行った検証では93%の精度で当てたといいます。
11月8日夜に「AI」が予測した、翌日朝に「霧の海」が見られる確率は「99%」でしたが…。
「AI予報」は発生確率99%! 実際現地に見に行くと・・・
RCCウェザーセンター 末川徹 気象予報士(11月8日):
「午前6時前、三次市街地を一望できる場所にやってきました。夜明け前ですので、まちの明かりはくっきりと見えますが、山の方は、なめらかな雲が出てきています」
午前6時すぎ、空が明るくなってきました。
RCCウェザーセンター 末川徹 気象予報士:
「午前6時40分すぎです。太陽がちょうど出てきている時間ですが、雲に隠れてしまっています」
岡山理科大学 生物地球学部 大橋唯太 教授:
「きょうは、かなりよろしくない…」
9日朝の三次市の最低気温は7℃ちょうど。この時期らしい冷え込みでしたが、期待されたような「霧の海」は広がりませんでした。サーモグラフィのカメラで見てみると…。
岡山理科大学 生物地球学部 大橋唯太 教授:
「青い濃い部分が5℃くらいで表示されていて、霧の表面を撮っている。雲海がきれいに広がっているときは、温度が低くなっていることが多い。2~3℃くらい」
9日朝は、予想されていなかった薄いベール状の雲が空に広がったため、AIが想定したほど冷え込まず予報が外れた形となりました。
ただ、こうした結果もAIが学習することで、今後の精度向上につながっていきます。
岡山理科大学 生物地球学部 大橋唯太 教授:
「今は翌日しか予報が出せていないが、2~3日先の予報も出すことができれば。雲海が消える時刻も予想時刻として出せれば、『この時刻までに行けば見られる』といったように使ってもらえると思う」
自然が創りだす幻想的な光景を確実に見てもらいたい…。人だけでなくAIによる学習も続いていきます。
「雲海AI予報」は、「三次・霧の海」と「備中松山城(岡山)」の2か所で10月から始まりました。岡山理科大学・大橋教授のウェブサイトで公開されています。1日3回(16:25、20:25、22:25)更新されて、翌日朝の発生確率を発信しています。