「お金も時間も失った」と妻の怒り 結婚式場が突然破産 式は挙げられず返金も絶望的な夫婦が何十組も

幸せの象徴である“結婚式”。しかし今、「式場の経営破綻で結婚式が挙げられない」「契約金や支払った代金も返ってこない」という夫婦たちの悲鳴が、SNSなどで上がっています。なぜ式場は、事前説明もなく経営破綻したのか? また、多額の契約金を支払ったにも関わらず、なぜ返金されないのか? 式場の経営破綻における、被害者救済の難しさなどを徹底調査しました。

「ハッピーなもののはずなのになんで…」 突然届いた“破産”の申し立て

2023年7月、「愛知県の結婚式場が突然倒産しました。この事件を取り上げて頂きたく思います」と綴られたメールが「チャント!」に届きました。さらにこの式場についてはSNSでも、「10月に結婚式をする予定でした。納得なんていきません」「ここで(式を)挙げようとしていて途方に暮れています…」といった声が投稿されていました。

三重県四日市市に住む40代の夫婦もその1組。愛知県北名古屋市の式場で結婚式を行う予定でしたが、“あるもの”が届きました。

(夫)
「1枚の封筒が届いて、『破産の申し立てを行う』という通知内容だった」

届いたのは、式場が破産したという通知。

結婚式を挙げられなくなったのは、2人にとって実はこれが3回目です。元々、2019年に式を挙げる予定でしたが、台風で直前に延期となり、2度目の2020年も、新型コロナの緊急事態宣言で挙げられず…コロナ禍も落ち着き、遅くとも2024年の春までには式を挙げたいと考えていましたが、それも「夢」に終わってしまいました。

(妻)
「(結婚式は)普通に挙げられるものだとずっと思っていた。友人の結婚式に参列した時も、天気の心配くらいしかしたことなかった。ハッピーな感じのもののはずなのに、なんでこんなに大変な思いをしなきゃいけないんだろう…」

支払った額は約450万円 「ここで挙式するのを楽しみにしていた…」

これまでに結婚式場に支払ったお金は、延期にかかったキャンセル料を含め、約450万円。しかし、そのお金は…

(妻)
「相談した弁護士にも、『倒産するということは余力がない。返金は極めて難しいんじゃないか』と言われている。そこ(返金)はもう期待できない」
「ここで挙げるのをすごく楽しみにしていたので、もうこうなってしまった以上、お金が戻ってきてほしいと思うが、それよりも本当は、ここで挙げたかった」

その結婚式場を訪ねてみると、「ブライダルフェア開催中」との看板が立っていますが、その奥の扉には「破産手続き」の開始を知らせる張り紙がありました。

今回破産したのは、この式場を含め愛知県内に3つの結婚式場を経営する「グラヴィス」。コロナ禍で集客が伸びなかったことや、東京への出店がうまくいかなかったことなどが理由で、負債は約15億円に上ります。この会社で契約し、結婚式を挙げられなくなった夫婦は約85組もいるのです。

契約の2か月後に破産通知…しかし、会社から直接の説明や謝罪はなかった

愛知県内に住む平野さん夫婦(20代)は、ことし10月に結婚式を挙げようと、ことし5月に契約しました。しかし、その2か月後に破産の連絡が届いたのです。

(夫・弘憲さん)
「結婚式って契約して、すぐに全額払うわけじゃない。半年先の見通しもわかるはずだから、(経営が厳しいと)説明があっても良かったのに」

破産通知が届いた2日後にも打ち合わせが入っていましたが、会社とは連絡が取れなくなりました。損害は契約金の10万円ですが、長い時間をかけてきた準備も全て無駄になってしまいます。

(妻・紗弥香さん)
「こんな感じで(ドレスも)いろいろ着てみて、この赤いドレスに決めていました。私たちが失ったのは、お金だけじゃなくて時間もいろいろ失ったから、ちゃんと謝ってほしい。『払えないからしょうがないじゃん』じゃなくて、ちゃんと謝ってよ」

私たちは式場の運営会社の社長を直撃し、この事態をどう思っているのかを尋ねましたが、質問には答えず、車で走り去りました。

「担保にとれる物がない」 被害者救済が極めて難しい理由とは

消費者問題に詳しい弁護士は、結婚式場の破産には、損害を取り戻せないという被害者救済の難しさがあると話します。

(あかり総合法律事務所 岩城善之弁護士)
「物を買う契約の場合は、物を自分の物として確保できる権利があるが、結婚式のサービスを受けるという契約では、担保にとれる物が全くないので、契約金を確保するなどはできない」

結婚情報誌大手『ゼクシィ』の調査によると、東海3県で結婚式や披露宴にかける金額は2016年には平均361万円だったのが、コロナ禍に入って減少し、2022年には平均300万円を切っています。

(あかり総合法律事務所 岩城善之弁護士)
「コロナ禍で間違いなく売り上げが減っていた。今までいろんな補助金などがあって、ギリギリつないできたが、ついに資金繰りがうまくいかなくなって破産してしまう」

平野さん夫婦はあらためて別の式場と契約し、衣装を決め直すなど、今年12月の結婚式に向けて準備を進めています。

(夫・弘憲さん)
「一部では『縁起悪いね』と気にしている人もいた。僕らは気にしなかったけれど、どこか引っかかるところがあるのが正直なところ」

今は、新たに契約した式場が潰れないことを祈りながら準備を進める日々です。そんな中でも2人が結婚式を挙げたい理由は…。

(妻・紗弥香さん)
「小さい頃から大事にしてもらって、(お世話になった人たちに)大人になった姿を見せたい」

(夫・弘憲さん)
「今は結婚式をしない人も多い中で、僕は妻にそういう経験をちゃんとさせてあげたい」

式場の経営破綻に振り回された夫婦は、割り切れない思いを抱えながらも、それぞれの道を歩き出しています。

CBCテレビ「チャント!」11月1日放送より

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