11月11日はベースの日【80年代日本のロックベーシスト5選】バンドを支えるその魅力!  日本のロックの礎を築いたベーシスト5選

80年代のロックシーン、見落とされがちなベーシストの魅力を検証

11月11日は数字の “1” を弦に見立てて4本並ぶことから、“ベースの日” と呼ばれている。ベーシストというポジションはバンドの中で一見地味な存在だ。確かにセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスのように存在そのものがアイコンになるミュージシャンもいれば、キャロル時代の矢沢永吉のようにバンドのグルーヴを率先してぐいぐい引っ張っていくベーシストもいる。今回は、80年代の日本のロックシーンを見渡して、バンドの土台となり、ボーカリスト、バンドに寄り添い、それぞれのサウンドに欠かせない音を構築したベーシスト5人を順不同でピックアップ。その見落とされがちな魅力を検証していきたい。

直立不動のダウンピッキングがBOØWYの音楽性に不可欠

松井常松(BOØWY)

ステージでは表情を一切変えず、直立不動。黙々とダウン・ピッキングするその姿が、いぶし銀的なベーシストのイメージを世に広めることになる。氷室京介&布袋寅泰のグラマラスなステージアクションに加え、後方に構える高橋マコトのツーバスのドラム、そして、微動だにしない松井。この4人の個性が1つになってBOØWYというブランドを作り上げ、日本中のロックキッズを熱狂させた。決して派手なフレーズを弾くわけではなく、ひたすらルートをダウンピッキング。これを基盤として絡み合うメンバーの個性がBOØWYの音楽性を確立させる。彼らをスターダムに押し上げたサードアルバム『BOØWY』を聴けばわかるのだが、あれだけ煌びやかでエモーショナルなサウンドに安定感を感じるのは松井の堅実なベースラインがメロディを支えているからだ。

チェッカーズのサウンドの変化を象徴していたベースプレイ

大土井裕二(ザ・チェッカーズ)

ソングライターとして「I Love you, SAYONARA」をはじめとする数々の楽曲を送り出した大土井裕二。キャロルの矢沢永吉に憧れてベースを手にした大土井、デビュー当初は、指弾きだったが、初のセルフ・プロデュースアルバム『GO』以降、腰の位置でベースを構えたダウンピッキングに移行する。それはさながら、クラッシュのベーシスト、ポール・シムノンを彷彿とさせる。大土井のプレイスタイルの移行がチェッカーズのサウンドの変化を象徴していたように思う。後期チェッカーズは、ブルーアイドソウル、アシッドジャズ、ハウスなど、様々な音楽を吸収し、アルバムごとに多面的なオリジナリティを見せるが、これは、大土井と、ドラムス徳永善也の堅固なリズム隊があってこそ。また、後期にはレゲエフィーリングを兼ね備えた独自性を打ち出したことも忘れてはならない。

タイマーズの “BOBBY” として忌野清志郎を支える

川上剛(ヒルビリーバップス/タイマーズ/ザ・ヴィンセンツ)

純然たるロカビリーバンドとして結成されたヒルビリーバップスのベーシスト川上剛は、ウッドベースからそのキャリアをスタート。エレキベースに触れるのはプロデビュー以降だったという。ロカビリーのウッドベース奏法として広く知れ渡るスラップ奏法に頼らず、生楽器の音色を活かしながら、様々なタイプの楽曲に寄り添うプレイスタイルを貫く。ヴィンセンツ時代は、これまで誰もやろうとしなかったエイトビートをウッドベースで弾く独自性がバンドのオリジナリティに大きく貢献した。そして忌野清志郎に抜擢され “BOBBY” としてタイマーズに加入した際は、清志郎の醸し出すグルーヴを黙々と支えながらバンドの土台を築く。また、清志郎のソロ “Screaming Revue” の一員として武道館のステージに立つ。このとき演奏された、「雨あがりの夜空に」のカントリーバージョンは、川上のウッドベースありきで生まれた名演だったと思う。

重厚かつグルーヴィーなベーススタイルでルースターズのラストアルバムに参加

穴井仁吉(ザ・ロッカーズ/ザ・ルースターズ他)

1980年、陣内孝則率いるザ・ロッカーズのベーシストとしてデビュー。その後、ザ・ルースターズのラストアルバム『FOUR PIECES』に参加。山善(山部善次郎)、鮎川誠などのレジェンドを支え、参加作品は多岐に渡る。“MAXIMUM DOWN PICKER” の異名を持つ穴井のベーススタイルは重厚かつグルーヴィー。楽曲にクッキリとした輪郭をかたちづける。特筆すべきはやはり、『FOUR PIECES』だろう。バンドが紆余曲折、変化を厭わず、1986年にリリースされた8枚目のアルバム『KAMINARI』以降で築いた強靭なギターサウンドの完成形である『FOUR PIECES』のクオリティの高さは穴井の参加に依るところが大きい。穴井仁吉により、ルースターズは到達点を見出したのだ。

レコードデビューから42年、ザ・モッズ不動のベーシスト

北里晃一(ザ・モッズ)

2023年、レコードデビュー42年目を迎えたザ・モッズ不動のベーシスト。メジャーデビュー前、1976年の “第2期モッズ” より森山達也と行動を共にし、現在に至る。北里の持つパンクスピリットはバンドの精神的支柱であり、今も圧倒的な存在感を放つ。ファンのアンセムとなった彼らの名曲「TWO PUNKS」は森山と北里の極めて個人的な物語を歌ったものだ。革ジャンに低く構えたフェンダー・ムスタング・ベースで、モッズのパンク的な側面を印象づけるアティテュードで語られることが多いが、北里の魅力はそれだけではない。ブルース、モータウン、ブリティッシュ・ビート、レゲエ… など多彩な音楽的背景を内包したベーシストとして無音の行間にもそんなバックボーンを感じさせてくれるのも大きな特徴。初期の名曲「ONE BOY」や1983年のヒット曲「バラッドはお前に」でもそのスタイルは顕著に表れている。デビューから一貫して森山の歌をどのように支えるかに一意専心してきたベーシストでもある。

―― 以上5人のベーシストの個性、力量は、それぞれのバンドでなくてはならないものだということは明白だ。もし、違うベーシストが、それぞれのバンドでプレイしていたら、バンドカラーは全く違ったものになっていただろう。寡黙に他のパートを支えるその姿勢が日本のロックシーンを築き上げたのだ。

ベースの日 Information
ベーシストたちが繰り広げる一期一会のGROOVE NIGHT【THE BASS DAY LIVE 2023】

▶ 日時:11月10日(金)18:00 / 19:00
     11月11日(土)16:30 / 17:30
▶ 会場:Spotify O-EAST
▶ 出演:
・11月10日(金)草刈愛美、武田祐介、須長和広、井上幹…
・11月11日(土)あきらかにあきら、高木祥太、TOKIE、MISA…
▶ 主催:ベースの日実行委員会 / J-WAVE
▶ 企画制作:ベースの日実行委員会
▶ お問合せ:DISK GARAGE https://info.diskgarage.com/

カタリベ: 本田隆

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