外貨両替キャンペーンで闇両替商の根絶を目指す北朝鮮

北朝鮮は、国内における外貨の使用禁止、国営銀行の利用推奨とともに、「トンデコ」と呼ばれる闇両替商の取り締まりを進めている。それに伴い、市場から闇両替商の姿が消えたが、裏では通常通りに営業している。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

首都・平壌、その郊外にある流通の一大拠点の平城(ピョンソン)、黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)、貿易都市の平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)など、主要都市の市場で活動していた闇両替商が最近になって姿を消した。

彼らは地下に潜り、以前からの取引先の外貨両替を請け負っている。時間や場所を約束して、密かに取り引きをしているのだ。

これを受け、当局は別の動きに出ている。地方の国営商業銀行は、公式レートではなく、闇レートよりさらに高いレートで米ドルや中国人民元を買い取るキャンペーンを行っている。例えば1ドル(約150円)が闇では8300北朝鮮ウォン、1元(約20円)が1200北朝鮮ウォンなら、そこに数十ウォン上乗せする形だ。これはあくまでも外貨の買い取りだけで、売り渡しは行わない。

北朝鮮では自国通貨の北朝鮮ウォンに対する信用が全くないため、資産は外貨に両替してタンス預金にしておき、必要な分だけ少額をウォンに両替するのが一般的だ。実は北朝鮮当局も、国内で流通している外貨の量が把握できていないと言われている。外貨流通を把握、コントロールして、不足する外貨を確保しようとしているようだ。

当局は今まで、外貨を使わせて国庫に納めさせようと、外貨商店や外貨レストランなどの開設、外貨でチャージするデビットカードなど様々な手を尽くしてきた。また、外貨使用禁止令も度々出してきたが、いずれもうまくいかなかった。それで新たな動きに出ているわけだが、消費者のウォンと銀行に対する不信感は根強く、成果が出るかは未知数だ。

一連の政策に伴い、北朝鮮ウォン安が続いている。9月までは8400北朝鮮ウォン前後だった1ドルが、先月15日の時点で新義州で8600北朝鮮ウォン、平壌で8550北朝鮮ウォン、恵山で8450北朝鮮ウォンとなっている。先月30日にはそれぞれ50北朝鮮ウォンずつ高くなったが、依然としてウォン安傾向は変わらない。

コロナまでの7年間は、1ドル8000北朝鮮ウォン台で概ね安定していたが、コロナ禍で4000北朝鮮ウォン台を付け、今は再び8000北朝鮮ウォン台に戻っている。

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