小説なのに哲学書のよう!? 「1冊で2度おいしい」と中瀬ゆかりが太鼓判、小川哲の短編集「君が手にするはずだった黄金について」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。10月26日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による10月のおすすめ作品】

◆関脇
映画「ドミノ」
10月27日(金)より全国ロードショー

「スパイ・キッズ」や「シン・シティ」などを手がけた"映像の魔術師”と呼ばれるアメリカ映画界きってのヒットメーカー、ロバート・ロドリゲス監督と、"選んだ脚本にハズレなし”と定評のある俳優ベン・アフレックとの初タッグによるサスペンス・スリラー。

本作は、ロドリゲス監督が構想20年越しで実現した作品で、物語の主人公であるオースティン警察の刑事ダニー・ローク(ベン・アフレック)は、娘を行方不明にしてしまったことからトラウマを抱えていた。刑事に復職したロークは、銀行強盗を予告するタレコミを受け、現場へ向かう。現場にあった貸金庫を開けると、そこには行方不明になった娘の写真が……。

ロークは、銀行の外にいたひとりの怪しげな男・デルレーン(ウィリアム・フィクナー)に娘の居場所を問い詰めるも、男がビルの屋上から飛び降りて姿を消してしまう。この男は一体何者で、何が目的なのか。謎が謎を呼ぶドミノのような展開が注目の話題作。

中瀬親方のコメント「ドミノ倒しのように謎解きが連鎖していくなかで、映画序盤で皆さんが立てる予想は絶対にハズレます。そして、気づいたら沼にハマること間違いなしの作品です。

この作品の『冒頭5秒、既に主人公もあなたも、騙されている』というキャッチコピー通り、かつてないラストに突入します。想像の3周先、4周先を行く物語の本編は94分と一切ダレさせないコンパクトな長さに抑えたロドリゲス監督の手腕にも拍手を送りたいです。

もし、秋にデートがしたくて『面白い映画は?』となったときには、この映画をぜひ選んでもらえたらと思います。ぜひご覧ください」

◆大関
映画「市子」
12月8日(金)より全国ロードショー

監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheaterの人気舞台「川辺市⼦のために」を映画化。川辺市⼦(杉咲花)は、恋人の長谷川義則(若葉竜也)から感動的なプロポーズを受けるが、その翌日に何も告げることなく忽然と姿を消してしまう。長谷川は市子の行方を追って懸命な捜索を続けるうちに、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を知ることになる。

中瀬親方のコメント「(主演の)杉咲花さんが『精魂尽き果てるまで心血を注いだことが忘れられない』と話すほど、全身全霊を捧げて役を作った作品です。抗えない境遇に翻弄される市子の壮絶な人生を、凄まじい熱量で体現した杉咲花さんの演技が本当に素晴らしい。杉咲さん自身、作品にものすごくシンパシーを抱き、脚本を読み終えてすぐに"絶対にやりたい”と思って出演を決めたそうです。

底知れない市子の表情に翻弄されて、彼女が隠し続けてきた半生を、固唾を呑んで見守らざるを得ない内容になっているので、特にラストシーンを観終わった後の解釈は人によって違うと思います。とにかく"生きる”ということの意味を突き付けられて、自分がこうして普通に笑ったり、泣いたり、ご飯を食べたりして日常生活を送っていること自体に感謝したくなるような、打ちのめさされるレベルの感動作に仕上がっています。

試写会のとき、隣の席で観ていた作家の樋口毅宏さんが『凄まじい傑作ですね』と思わず口にしていたのが忘れられません」

◆横綱
短編小説「君が手にするはずだった黄金について」
著 小川哲(新潮社)

直木賞作家・小川哲自身が主人公になりきり、さまざまな人と出会い、考察することで、小説家として肉付けしていく模様を記した短編集。

中瀬親方のコメント「プロローグでは、大学院生の『僕』が就活を進めるなかで"自分は一体何をやりたいんだろう”"そもそも、なぜ自分は本が好きなんだろう”と自分の将来に自問するようになって、やがて自分自身を主人公にした小説を書くことになります。

その後、小説家となった『僕』は、オーラが見えるという占い師やこれ見よがしにロレックスのデイトナを巻く漫画家、80億円を運用して羽振りの良い生活をInstagramにアップする高校時代の同級生などさまざまな人に出会うんですけど、彼らに共通するのは、自分が何か能力に秀でていることを証明するために明らかに無理をしている姿、『承認欲求』の成れの果ての姿なんです。

主人公の『僕』は、そんな承認欲求に捉われた人々に出会いながら、その根底にあるものは何なのかを暴いていくんです。本作は、誰もが持つ承認欲求、表現欲求を小説家が解釈すると『こうなるのか』と見せつけられているようで、どこまでが小川さんの実体験で、どこからがフィクションなのかの境も曖昧なまま夢中で読んでしまって、読了後は今までに味わったことのない不思議な気持ちになること間違いなしの作品です。

小説でありながら哲学書でもあるような1冊で2度おいしい作品になっていますので、ぜひお読みください!」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回11月のエンタメ番付は、11月30日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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