失明が心配…まぶしく生活困難な「ロービジョン者」、医師や行政から適切アドバイスなく絶望も 誰でも視覚障害になる可能性、支援サービスも大勢が知らず 市長に現状説明「相談窓口あれば人生変わる」

視野障害を実際に体験する市幹部職員ら。講師を務めた福迫かずやさん(奥右から3人目)と江口万祐子さん(同2人目)=さいたま市役所

 埼玉県さいたま市は、視覚障害やロービジョン(低視覚)への理解を深めようと、清水勇人市長ら幹部職員約40人を対象に研修会を開催した。「ロービジョンラボ」の福迫かずや代表と武蔵浦和眼科クリニックの江口万祐子院長が、ロービジョン者への配慮や支援の在り方を講義した。

 ロービジョン者は、見えにくいやまぶしいなど、視覚的に日常生活で困難にさらされている人を指す。本や新聞が読めなかったり、一人で歩けないため、失明や将来の不安を抱えているという。

 福迫さんは事故で視覚障害となり、左目は全く見えず、右目は視野が狭いという。絶望を感じながら、医師や行政からの情報はなく、身体障害者手帳を取得できることも知らなかった。7年間はひきこもりのような状態で、「情報障害に陥っていた。問題は専門窓口がないこと。専門相談員の一言があれば、生きがいを見つけることができ、人生が変わる」と訴えた。

 江口さんは、視覚障害の原因疾患の4割が緑内障と説明。40歳以上の20人に1人、70歳以上の10人に1人が罹患(りかん)することから、「誰もが視覚障害になる可能性がある」と指摘した。情報障害のため、ロービジョンケア難民が多く存在。同行援護サービスなどを知らない人も多く、相談先を紹介している県眼科医会のリーフレットの配布を呼びかけた。

 清水市長は研修後、「ロービジョン者が困っていることや、どのような配慮が必要なのかを改めて知ることができた。幹部職員の皆さんは、研修で学んだことをそれぞれの部局の中で、ぜひ生かしてほしい」と述べた。

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