沖縄のヘイト根絶へ 「差別禁止法が必要」 辛淑玉さんら討論 那覇でフォーラム

 池宮城秀意記念フォーラム「沖縄ヘイトにあらがう-私たちに何ができるか」(主催・琉球新報社)が10日、那覇市の琉球新報ホールで開かれた。吹き荒れる沖縄ヘイトを根絶するために、県条例の改正や国レベルの差別禁止法が必要だとの意見が出た。

 基調講演した「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんは、差別は差別者にとって「最も金のかからない娯楽だ」と表現した。「朝鮮が差別されてきて、次のターゲットが沖縄。日本の植民地として犠牲になることを強要されている」と、沖縄で進む軍備強化との関係にも触れた。

 毎日放送(大阪市)ディレクターで、沖縄のドキュメンタリー番組を制作してきた斉加尚代さんも基調講演に立った。政治が差別を助長し、メディアも対抗できていないとして「このままではデマやヘイトを使った国家ぐるみのプロパガンダに絡め取られる」と危機感を示した。

 むぬかちゃーの知念ウシさんは「私たちは力を持っている。これだけ攻撃が来るのは琉球人が怖いということ」と分析。「自尊心を育むために、互いにリスペクトを言葉にして伝え合う文化をつくりませんか」と会場に呼びかけた。

 ニライ・カナイぬ会共同代表の仲村涼子さんは、4月に施行された県差別のない社会づくり条例に関して「琉球先住民族を自認する人がいるにもかかわらず、『民族』という文言がない」と批判。差別への罰則を加えることも求めた。

 「ヘイトと闘うのに教科書はいらない。醜悪、理不尽だから止める」と語ったのはノンフィクションライターの安田浩一さん。国レベルで包括的な差別禁止法を作るためにも「政治を変え、地域でできることをやっていく」と表明した。(編集委員・阿部岳)

沖縄ヘイト根絶を話し合ったフォーラム=10日、那覇市・琉球新報ホール

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