金曜夜だけのコーヒー店 倉敷の横路さん 美観地区に開業

 倉敷市美観地区の古民家に、金曜夜だけオープンするコーヒー店がある。ゆったりした音楽が流れ、温かな照明とコーヒーのいい香りが満ちる店内でカウンターに立つのは横路悠平さん(36)=同市。自身に発達障害があると分かってから、障害があってもなくても誰もが自分らしく働ける場所を目指して開業した。

 障害者の就労支援施設で支援員として働いていた5年ほど前、よく忘れ物をしたり、人間関係に悩んだりすることがあったため医療機関を受診。発達障害と診断された。

 障害を自覚してから周りを見るうち、施設利用者と似ていると感じる場面が増えた。例えば知的障害の人は気持ちを言葉にするのが苦手。自身も気持ちをため込むと顔が険しくなり、怒っているように見られがちだった。

 一方、そんな様子を見た利用者から「おなか痛いん?」と気遣われることも。時間に追われると忘れ物をしやすいことを心配してくれる人もいた。

 「どんな人も得意、不得意がある。それらがパズルのピースのようにはまれば、補い合えるんじゃないか」

 そう考えるようになり、開業を計画。コーヒー店を選んだのは、施設の作業内容がコーヒー豆の袋詰めやパッケージ作業に変わった際、利用者が生き生きと働き、休む人が減ったからだ。

 7月に店をオープン。コーヒーが得意でない人のためにすっきりした味わいの豆も扱い、1杯ずつ丁寧に入れる。活動はインスタグラムで発信。障害のある人やその家族が訪れ、1時間以上話し込むこともある。地域のイベントに誘われ、出店するようにもなった。

 今は保育士の資格を生かして保育園とフリースクールで働きながら週に一晩、客をもてなす横路さん。「いつか障害がある人、そうでない人みんなが支え合って活躍できる場所をつくりたい。その夢をかなえれば、障害のある人たちへ前向きな思いが伝わるはず」と話す。

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 店名は「夜空ノ珈琲」。虹色商店(倉敷市東町)を間借りして営業している。コーヒー1杯500円。営業時間は午後6時~10時。活動の詳細はインスタグラム(tarinaibenkyouka)。

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