ラ・リーガは第12節が終了。現在首位にいるのは今年ラ・リーガでの4シーズン目を迎えるジローナである。
レアル・マドリーには敗れたものの、ここまで10勝1分1敗と絶好調。2位のマドリーには勝ち点2差をつけている。新興勢力と言えるクラブに、なぜここまで勢いがあるのだろうか。
シティFGのネットワークを生かした巧みな補強
カタルーニャ州のジローナをホームとするジローナFCは、2021-22シーズンに昇格プレーオフを勝ち抜き、4季ぶりにラ・リーガへ昇格。昨季は復帰1年目ながら10位と健闘した。
今季は昨季わずかに届かなかった欧州カップ戦の出場権獲得を目指し、指揮官のミチェルはチーム改革を始めた。
まずは昨年のチーム得点王であるFWバレンティン・カステジャノスと司令塔として君臨していたMFオリオル・ロメウをそれぞれラツィオとバルセロナへ放出。彼らへの依存から脱却を図った。
さらにMFロドリゴ・リケルメもレンタル期間が終了し保有元のアトレティコ・マドリーへ復帰。昨年の主力を手放すと同時に、マンチェスター・シティを頂点とする「シティ・フットボール・グループ」のネットワークを駆使し、フランスのトロワから有望株のブラジル人FWサヴィオ(サヴィーニョ)、ウクライナのドニプロ-1からウクライナ代表FWアルテム・ドフビクらを獲得。開幕に向けて万全な状態を整えた。
ミチェル監督が基盤とするシステムは4-1-4-1。その中でも戦術的な守備のキーマンとなるのがダビド・ロペスである。34歳のスペイン人DFは本職のセンターバックに加えてボランチもできるため、昨季試して成功した3バックと4バックの可変戦術においては欠かせない選手となっている。
その効果は既に発揮されており、昨季は第12節までの失点数は20だったのに対し、今季は12。課題としていた守備面の改善が数字にはっきりと表れている。
攻撃面は昨季、前線のカステジャノスとクリスティアン・ストゥアニに依存している部分が見られたが、今季は様々な選手にゴールが生まれている。こちらも昨季12節時点の得点数が16だったのに対し、今季は29。倍近い得点力で既に昨季の総ゴール数(58)の半分をたたき出した。
この好調の要因は、既存選手と新加入選手がうまく融合できていることだろう。
厚みを増した戦力で「ミラクル」を起こせるか
攻撃はMFアレイクス・ガルシアが中心となって組み立てる試合が多い。A・ガルシアは視野が広く、正確なパスが出せる司令塔で、ピッチ上の様々な場所にボールを散らすことができる。
彼のパスを有効にするために欠かせないのがサイドの選手であり、ここまでの試合でよく起用されているのがサヴィオとヴィクトル・ツィガンコフだ。
サヴィオはスピードが持ち味のドリブラー。一対一の局面で力を発揮できる選手なのに対して、ツィガンコフは両足での質の高いクロスやスルーパス、ドリブルが持ち味であり、それほどスピードを武器にする選手ではない。つまりA・ガルシアが出すサイドによって攻撃の展開が大きく変化する。
また、ジローナはポゼッションサッカーを提唱。12試合中10試合で相手のボール支配率を上回っている。緩急のついたサイド攻撃と巧みなパスワークという持ち味がしっかりと生かされているため、得点数が増加し、チャンスを多く作れるようになったのだろう。
守備はダビド・ロペスを中心に新加入のダレイ・ブリントとエリック・ガルシア、昨季も主力を張っていたミゲル・グティエレスやヤン・コウトなどがうまく連携を取り合って守備を構築している。
ここまでクリーンシートは4試合。この数は昨季1年間でのクリーンシート数と同じである。12試合で15失点とまだまだ守備できる部分はあるが進化していることは確かだ。
今季のジローナはスタメンだけでなく、サブの選手層も厚い。全ての選手が違った特徴を持っているため交代するタイミングや選手も重要になってくる。そのタイミングなどをしっかり把握して選手を起用するミチェル監督はここまで素晴らしい働きをしていると言える。
現在の成績があるのはミチェル監督の中で「理想のサッカー」がしっかりと固まっていて、交代にしっかりと意図があることも大きな要因だろう。
ラ・リーガはバレンシアが優勝した2003-04シーズンを最後に、バルセロナ、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーの3クラブ以外から優勝チームが出ていない。
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もしジローナが優勝すれば、記念すべき初タイトルであると同時に、20年ぶりに“3強”以外から優勝クラブが誕生することになる。ラ・リーガはまだ序盤戦だが、ジローナが新たな歴史を刻むシーズンとなるのか注目したい。