【MLB】こぼれ落ちたポストシーズンと手中に残った確かな成果|2023シーズンレビュー シカゴ・カブス編

写真:2年目の今季飛躍を遂げたカブスの鈴木誠也

【チーム成績】
83勝79敗 勝率.512

◆打撃
打率.254(11位)
本塁打196(11位)
OPS.751(8位)
盗塁140(8位)
WAR 24.8(9位)

◆投球
先発防御率 4.26(14位)
救援防御率 3.85(13位)
奪三振率 8.63(19位)
与四球率3.22(14位)
WAR 16.9(9位)

※WARはFangraphs算出のものを使用。文中の日付はすべて現地時間

苦しんだ5月からの破竹の快進撃。一度は完全に手中に収めたようにすら見えた3年ぶりのプレーオフはその刹那、あっという間に手の内からこぼれ落ちていった。

2023年のカブスはまさに、ジェットコースターのようなシーズンだった。

シーズン前半は連敗がかさみ、6月8日には最大の借金10を記録。もうダメかと感じたファンも多かったのではないだろうか。しかしこの後チームは徐々に状態を上げていく。8月には月間18勝9敗の好調で一時は首位から1.5ゲーム差まで接近(9月6日)。9月8日には貯金12を記録し、ポストシーズンはおろか地区優勝すら…。

そんな期待はプレーオフ争いのライバルだったDバックス相手の三連敗でしぼみ始める。チームは9月7日以降、4カード連続で負け越し。特にこの間Dバックスに1勝6敗を喫したのはあまりに痛かった。最後は9月26日からの三連戦で今季最高勝率のブレーブスに三連敗を喫し、これが致命傷に。チームはあとわずかのところでポストシーズンを逃した。

ハナ差で敗れたDバックスがワールドシリーズまで勝ち上がった点も含め、カブスファンには悔しさがつのる終わり方だったのではないだろうか。

ただ、ポストシーズンこそ逃したもののシーズン全体としては大きな躍進のシーズンとなったのは間違いないだろう。2022年と比較して勝ち星は9つ増えた。また、大きく得点が失点を上回った過去2年と異なり今季は819得点、723失点。100近いプラスを作り出し、得失点差だけ見ればプレーオフに届いてもおかしくないほどの戦力を備えていたことがわかる。

躍進の原動力になったのは攻撃力の大幅向上だ。単年契約で獲得したコディ・ベリンジャーは26本塁打、WAR4.1を記録する大活躍で、ここ数年の絶不調からの完全復活を印象付けた。また、2年目を迎えた鈴木誠也も20本塁打、平均を100としたときの攻撃力を示すwRC+は126を記録。日本が誇る強打者がついに本領を発揮したシーズンとなった。

また、長期契約を結んだダンズビー・スワンソンとニコ・ホーナーの二遊間もチームの期待に応え、記録したWARはそれぞれ4.9、4.7。チームの野手では1位、2位の貢献を残した。特にホーナーはドラフト1位指名から着実にステップを踏んでMLBに辿り着いたフランチャイズプレーヤー。新たなチームの顔として名乗りを挙げたシーズンだった。

一方で、投手陣にはさらなる新星が現れた。

今季MLB3年目を迎えたジャスティン・スティールだ。昨季先発ローテに定着した左腕は今季四球の数を大きく減らしたことでさらに飛躍。16勝5敗、防御率3.06という堂々たる成績で、一時はサイ・ヤング賞の有力候補にまで挙げられた。近年は強力なエースが不在の状態が続いていたチームにとって、2028年まで保有可能なスティールの登場は非常に大きな成果となったと言えるだろう。

このように大きな躍進を遂げたカブスだが、気がかりなのはやはりベリンジャーとマーカス・ストローマンの流出だろうか。

ただ、ベリンジャーとの再契約を結ぶ、あるいは同等かそれ以上のビッグネーム(つまり大谷翔平のことだ)との契約に動く可能性は決して高くないように見える。

MLBの契約情報サイト「MLB Trade Rumors」のティム・ダークス氏は近年のカブスを見る限り、今オフ大谷翔平に次ぐ契約を得る可能性がある野手であるベリンジャーの再契約に動く可能性は低いと予想。トッププロスペクトのピートクロウ・アームストロングのMLB定着が迫る状況も踏まえ、ベリンジャーよりは安価な選手を狙うのではないか、と述べている。

一方で、GMミーティング中にはカブスがフアン・ソトの獲得に興味を示していたという報道もあった。長期にわたってチーム年俸をロックしない選手であれば、大物獲得に動く可能性は否定できなそうだ。

投手陣にも目を向けよう。カイル・ヘンドリックスとの契約延長には成功したが、スティールとヘンドリックスに次ぐ先発投手には不安が残る。

スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」のパトリック・ムーニー記者によればカブス野球部門責任者のジェド・ホイヤーは今年NPBの視察を行い、山本由伸(オリックス)や今永昇太(DeNA)をチェックしていたという。鈴木が在籍するだけでなく、以前にはダルビッシュ有が所属していたこともあるカブスだけに、NPB出身選手の獲得に動く可能性は十分にありそうだ。

ここまで投打の状況を見てきたが、カブスの来季以降は決して暗くないように見える。内野には長期契約を結んだコアプレーヤーを抱え、投手陣にも若い新星が現れた。近年こそ再建モードで抑え気味だったが、本来はリーグ上位の資金力を備えるチーム。今オフ次第では再びポストシーズンの常連に返り咲く可能性も十分にありそうだ。

来季契約を残していたデビッド・ロス監督を解任し、前ブリュワーズのクレイグ・カウンセル監督と大型契約を結ぶなど並々ならぬ力の入れようが見えるカブス。今オフの動きに注目だ。

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