【MLB】今永昇太がポスティングでMLB移籍へ 活躍の可能性は?

写真:ポスティングシステムを用いてMLBへの移籍を目指す今永昇太 ©️Getty Images

NPBの横浜DeNAでプレーする今永昇太がポスティングシステムを利用してMLBへの移籍を目指すことが報道された。日本時間12日までに日本および米国の各種メディアが報じた。

今永のMLB移籍はシーズン中から盛んに話題となっており、契約規模についてもある程度推定がなされている。たとえばMLBのデータサイト「Fangraphs」のベン・クレメンスは4年8800万ドルの契約を予想しているようだ。

金額だけ見れば昨季の千賀滉大の契約を上回るものであり、山本由伸ほどではないにしても期待値の大きさがうかがえる。だが、実際今永はMLBで通用するほどの能力を持ち合わせているのだろうか。これまでのプレーから探ってみよう。

今永の投球について分析する上で幸いな点は、彼がワールドベースボールクラシック(WBC)で米国相手に先発登板し、2イニングを投げている点だ。WBCはトラッキングデータが公開されている。まったくトラッキングデータが見られない投手に比べれば、高い解像度で将来を占うことができるだろう。

まず球速だが、WBC時の今永は2イニングで平均球速93.5mph(150.4km/h)を記録。これはMLBの先発左投手の平均球速である92.9mph(149km/h)を上回る。

もちろんこれはショートイニングを前提とした登板だったため、実際のシーズンでこの球速を維持することは難しいだろう。ただ、NPBでのシーズン成績を見る限り今永は平均148km/h前後、マイルに直すと92mphほどをマークしている。少なくとも球速面でふるいにかけられる可能性は低そうだ。

加えて、今永の武器は球速ではなく、その球質にある。WBC決勝戦における今永のストレート(フォーシーム)は平均回転数が2555rpm、最大で2658rpmに達した。もちろんショートイニング前提であることは考慮すべきだが、MLBの先発左投手で最高の平均回転数を記録したのはマシュー・ボイド(タイガース)の2503rpm。今永のそれはほぼ間違いなくリーグトップクラスになるだろう。

また、Fangraphsのレポートではスライダーの威力についても触れられている。変化量に加え高い制球力があるため、MLBでもかなり威力を発揮すると見られているようだ。また、スライダーは回転数だけで球質を測れないためあくまでも参考だが、こちらもWBC時のデータによればMLBの左投手としては上位の回転数を記録している。

このストレートとスライダーを上手く使いこなせば、今永はMLBでもかなり多くの三振を奪うことができるはずだ。

反面気がかりなのはフライやホームランの多さだろう。今永はNPBでプレーした過去7シーズンすべてで二桁本塁打を許している。パワーが強化されるMLBで、彼の被本塁打が飛躍的に増加することは間違いない。

また、ストレートとスライダーに続く変化球の質についてもFangraphsのレポートは疑問視している。カーブが遅すぎる点と、チェンジアップの質が高くない点だ。ただ、高い制球力である程度カバーできるかもしれない、とも付け加えられている。

総じて見ると、少なくともストレートとスライダー、そして制球力の面ではある程度高い評価を受けており、WBC時のデータもそれを担保している。現在の投球を続けられれば、少なくとも先発としてある程度の結果を残せるのではないだろうか。鍵になるのは被本塁打対策と、第3の球種の質ということになりそうだ。

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