忠犬ハチ公 生誕100周年 知られざる物語

渋谷のシンボル 忠犬ハチ公が11月10日、生誕100周年を迎えました。銅像のある渋谷区では各所で記念イベントが開催されるなど、街をあげて記念日を盛り上げています。さらに今回、ハチ公博士と呼ばれる人を取材。知られざるハチ公物語を聞きました。

記者:「渋谷駅の前にいます。忠実な犬として知られるハチ公の生誕100周年を祝う、大きな看板が設置されています」

11月10日に生誕100周年を迎えた忠犬ハチ公。渋谷駅前のハチ公像の周りにはきょうも多くの人の姿が…

20代学生:「東京といえばハチ公のイメージが強かった」「東京の象徴みたいなところがあるんで、ぜひ一度拝見できたらなと思って」

アメリカから来た人:「(Q:きょうはなぜここに来た?)日本の一つのシンボルだから。東京のシンボルでもあるので、子どもたちにも見て欲しくて来た」

国内だけでなく、今や海外にも知られる渋谷のハチ公。記念日を祝って、その渋谷では様々な行事が行われています。渋谷ヒカリエでは、ハチ公の生涯や歴史を振り返るパネルを展示。そして、渋谷スクランブルスクエアのハチ公グッズ販売店では、100周年を記念した文具やお菓子などが販売されていて、多くの人が訪れました。さらに、現在JR山手線のヘッドマークはこのようにハチ公バージョンになっています。

今や東京を代表する「人気者」となったハチ公。しかし、ハチ公がどんな犬だったか、知らない人も多いようです。

20代学生:「知らない、全く知らない」「全く知らないです」
カナダから来た人:「(Q:ハチ公は元々どんな犬なのか知ってますか?)いいえ」

そこで今回取材したのが、渋谷区内の博物館に勤めハチ公博士とも呼ばれる、学芸員の松井圭太さんです。すると早速、ハチ公にまつわる知られざるエピソードを教えてくれました。

松井さん:「今、国立科学博物館にある剥製は全身真っ白なんですけども、当時の証言からすると茶色とか黄土色みたいな、ちょっと茶色がかかった体だったという風に言われています」

1923年、100年前の11月10日、秋田県の家に生まれた秋田犬のハチ公。その翌年に、渋谷に住む大学教授上野英三郎博士に贈られ、その時に「ハチ」という名前を付けられました。博士との生活の中で渋谷駅を利用することが多かった、と思う人も多いと思いますが…

松井さん:「電車は使ってなかったですね。だから渋谷駅に毎日いくというのことはなかったし、ハチ公は徒歩で東大まで先生を送り迎えしていたんですね」

松井さん:「(Q:ではなぜ渋谷駅で待っていたんですか?)ハチ公はとても賢い犬だと言われていたので、東大に行かない日には、あるいは先生が長く戻って来ない日は(渋谷駅で待ってれば先生は戻ってくる)出張に行っているというふうに思って、渋谷駅で先生のことを待ち続けたじゃないかなという風に思っています」

その後、1925年に上野博士が亡くなり、渋谷駅前で博士を待つ日々が始まったハチ公ですが、なぜここまで有名になったのでしょうか。

松井さん:「昭和7年に朝日新聞にハチ公のことが載るんですね、そうすると、多くの人がハチ公のことを知ることになって、一夜にして全国的にハチ公が有名になるんですね」

こちらが当時実際に掲載された新聞です。タイトルは「いとしや老犬物語」。この記事によって、渋谷駅周辺では邪魔者扱いされていたハチ公が、一躍人気者になりました。

生まれて100年。今も世界に愛されるハチ公…

松井さん:「一匹の犬がですね、生まれて100年経ってそれを祝われるというね、これはほんとに奇跡的な、もうハチ公以外にないじゃないかなというぐらいのことですけども。この人気というのですね、100年先にも200年先にも続いてもらえればなという風に思います」

ハチ公にゆかりのある場所は、渋谷区の他にもあります。こちらにハチ公ゆかりの地をまとめてみました。

まずは渋谷駅前の銅像、こちらはみなさんおなじみですが、銅像は他にもあるんです。それが文京区にある東京大学農学部です。東京大学は飼い主の上野英三郎博士が研究を行っていた場所で、元気に出迎えるハチ公をほほえみながら受け止める上野博士が表現されています。ハチ公の没後80年にあたる2015年に完成し、開門中は誰でも見ることができます。

そして文京区のお隣、台東区上野にある国立科学博物館には、なんとハチ公の剥製が置かれています。ハチの亡骸は2代目の飼い主によって科学博物館に寄贈され、その姿が永遠に残される形となりました。こちらの剥製ですが渋谷の銅像と見比べると違いがあるのですが分かりますか?それは渋谷の銅像は左耳がたれているのですが、剥製はしっかりと伸びています。生前のハチ公は、ケガの影響で左耳がたれていて、亡骸が博物館に運ばれたときもそのような状態だったそうです。ただ、制作された当時は、制作者は後世に残すのにどうするか悩んだ結果、耳を立たせた秋田犬本来の姿で作られることになったということです。

そして渋谷区の隣、港区の青山霊園には、上野博士とハチ公のお墓があり、今もなお花が手向けられているということです。

© TOKYO MX