重い病気の子、家族と「子どもらしく過ごせる場所を」 小児がんと向き合ってきた医師が目指す「児童館のようなホスピス」 開設に向け沖縄市で18日イベント

 重い病気のある子どもたちやその家族が安心して過ごせる「こどもホスピス」の開設を目指す動きが県内で生まれている。中心となって活動しているのは、那覇市の小児緩和ケア医・訪問診療医の宮本二郎さん(51)。約15年間、小児がんと向き合う中で、施設の必要性を感じてきた。従来のホスピスのイメージにとらわれず、子どもたちが生き生きと遊んだり交流したりできる場所を目指す。18日には沖縄市内で啓発イベントが開かれる。(南部報道部・国吉聡志)

 こどもホスピスは、「最期を迎える場所」としての性格が強い大人のホスピスとは異なり、外出が困難な病児やその家族が日帰りや泊まりがけで気兼ねなく過ごせることを重視する。1982年に英国・オックスフォードで設立された施設が起源とされ、看護師などが常駐する。

 国内でこどもホスピスの名称で運営しているのは、横浜、大阪両市の計3カ所。病児の家族や医療従事者が、各地で開設に向けた準備を進めている。

 宮本さんは2006年に琉大医学部を卒業し、琉大病院や県立南部医療センター・こども医療センターで働きながら、小児のがん治療や緩和ケア、訪問診療に携わってきた。

 その中で感じたのは、自宅を除けば子どもたちが治療を受けながら親と「子どもらしく」過ごせる場所が県内にほとんどないこと。宮本さんは「大人の緩和ケアやホスピスは充実してきているが、子どもの場合はまだまだ。親はもちろん、小児科医の認識も不十分で発展途上だ」と指摘する。

 宮本さんは昨年12月、小児看護専門看護師や産業ケアマネジャーなど5人と協力し、任意団体「沖縄こどもホスピスのようなものプロジェクト」を設立した。本年度中にNPO法人化する予定だ。

 団体名に「のようなもの」と付けているのは、ホスピスには「最期を迎える場所」というイメージが強く、一般の人から敬遠されがちと感じるから。「目指す施設は児童館が一番イメージに近い。病気や障がいの有無にかかわらず、全ての子どもが自己肯定感を育める社会をつくりたい」と話す。本島中部への設置を軸に検討している。

 医療施設ではないため、寄付や自治体からの支援で運営する必要がある。目標は2026年度の開設だが、資金面の調整はこれから。宮本さんは「イベントで多くの人に趣旨を伝えたい。市町村職員や福祉関係者、教員など、多くの人に来てほしい」と語った。

■11月18日 沖縄市で啓発イベント シンポや遺族セッション

 宮本さんが代表を務める「沖縄こどもホスピスのようなものプロジェクト」は18日午後1~5時、沖縄市のミュージックタウン音市場で、イベント「はじまりのうた2023」を開く。参加料はワンドリンク付きで2千円。小学生以下は無料で、事前申し込み制。定員は300人。

 シンポジウムでは、大阪市鶴見区で「TSURUMIこどもホスピス」を立ち上げ運営する水谷綾さんや、ありんクリニック小児科院長の松田竹広さんらが、こどもホスピスの意義を語る。小児がんで子どもを亡くした遺族のトークセッションもある。

 申し込みはQRコードから。問い合わせは、chp.okinawa2022@gmail.com

子どもホスピスの開業を目指す医師の宮本二郎さん(後列左から3人目)ら「沖縄こどもホスピスのようなものプロジェクト」のメンバー=●日、宜野湾市内

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