江戸城天守閣の再建 菅前首相「まずは世論をつくらなければ」 インバウンド復活へ「活用しないのはもったいない」

菅義偉氏(資料写真)

 菅義偉前首相(衆院神奈川2区)は12日のフジテレビ「日曜報道」に出演し、インバウンド(訪日外国人客)の復活に向けた江戸城天守閣の再建構想にふれ、「推進するためにはまずは大きな世論と方向性をつくらなければならない」と述べた。「重い判断になる」と慎重姿勢を見せた一方、外観図などの資料の存在を引き「活用しないのはもったいない」と思いを明かし、揺れる胸の内をのぞかせた。

 江戸城天守閣の再建については、故安倍晋三元首相の第二次内閣でインバウンド推進策として水面下で取り沙汰された。当時を知る政府関係者によると、「東京観光の新たなランドマークになる」とする積極論と「皇居を見下ろす施設の新設は国民の疑義を招く」との消極論が交錯し、正式な議論にはならなかった。

 当時官房長官だった菅氏が、江戸城を焼いた明暦の大火(1657年)後に徳川家綱の補佐役・保科正之が「経費は町の復興に充てるべきだ」として天守閣の再建を見送ったとされる歴史を引き、「故事の検証や整理が先だ」として慎重姿勢を崩さなかったことも影響したとされる。

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