顔だけで100個近くのほくろに劣等感 探して、数えて、考えて…「醜いとしか思えなかった」

ごく小さいものも含め、顔だけで100個近くのほくろがあった。左頰の大きなほくろがあったところは、うっすらと白くなっている=兵庫県内

 子どもの頃から異常なまでにほくろが多く、コンプレックスで顔を隠して話すことが多かった。35歳を過ぎてほくろやしみを取ることがメジャーとなり、どんどん自分のお肌に自信が持てました。※ルッキズムを巡るアンケートへの回答

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 「なんかお姉ちゃん、顔にぶつぶつがある」

 全身にほくろができやすい佐藤舞さん(仮名、40代、兵庫県)は小学校高学年くらいのとき、近所の子どもにそう言われた。

 その子は一つ、二つと顔を指さし、黒い点を数えた。ほくろという言葉も知らないくらい幼い子どもだった。「もう、やめてよー」と笑って受け流した。悪意はないと分かっていたが、それから考え込むようになった。「私ってほくろ多いんや…」

 鏡の前でほくろを数えてみた。「あぁ、こんなにある」。小さいものも含めると、顔だけで100個近くあった。ため息が止まらなかった。

 「そうやって探して、数えて、考えて。でもどうしようもなくて」

 中学生になり、恋をした。自分の席は教室の右端、初恋の彼は左端だった。授業中にはいつも頰づえをつき、手でほくろを隠した。

 顔の左側にあるほくろが特に大きくふくらんでいて、嫌いだった。だから、見られたくなかった。

 「席も遠いのに、一方的に気にして、恥ずかしくなって。こんな顔やから、と」

■ピアスとほくろ

 自分で見るのも、誰かに見られるのも嫌で、なるべく顔が隠れるような髪形を選んだ。家族にも親友にも、気持ちを打ち明けることはなかった。

 「言うことすら恥ずかしくて、一人で抱えるしかない。今の子たちも同じじゃないですかね、そうやって悩んでるのは」

 ほくろの多さは父ゆずりだ。「お父さんに似てかわいそうに。ごめんな」と謝られたことがある。「悪いところが似ちゃったな」と思った。

 大学を卒業し、接客の仕事を始めても、羞恥心につきまとわれた。「私の顔、ほくろ多いと思われてるんやろうな」と考えながら働いた。

 知人の結婚式では、自分の左側に立つカメラマンが気になってしかたなかった。ビデオカメラを向けてほしくない。完成した映像が流れるとほくろが映っていて、嫌気が差した。

 街でほくろが目立つ人を見かけると「自分だけじゃないんだ」と、その瞬間だけはほっとすることができた。

 ピアスの穴は、左耳に一つ、右耳に二つをあけた。最大のコンプレックスの左頰から、なるべく視線をそらせるように。

 

■8ミリのほくろ

 

 30歳を過ぎたとき、直径8ミリくらいある左頰のほくろを取った。その美容クリニックでは1万円で3つを除去できた。

 「ほんとね、三つ減っただけで一気に印象が変わった。人には気付いてもらえなくても、自分は毎日見てるので分かるんです」

 今もどこにどんなほくろがあるか、だいたい把握している。普段から確かめるのは癖になっていて、大きくなっていたり増えていたりすると、すぐに気がつく。

 ほくろを取ったのは、誰かにひどいことを言われたわけでも、いじめられたからでもない。かつての自分に「周りはそんなに見ていないよ」と伝えてあげたい。

 「きっと、気にしていたのは自分だけ。全てが自意識だったのかもしれません」

 ただ、あのころは自分を客観視しようとしても、できなかった。醜いものだとしか思えなかった。

 「ほくろも個性だと言えるくらい強い自分でいられたら、もう少し楽に生きられたんですかね」

 (大田将之)

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 神戸新聞のシリーズ「すがたかたち ルッキズムを考える」では、容姿を巡る体験談やルッキズムに対する意見を募っています。私たちはなぜ、人の容姿にあれこれと口を出してしまうのか。なぜ、見た目がこんなにも気になるのか。どうすれば傷つけてしまう前に立ち止まることができるのか-。そんな問いについて考えながら、見た目にコンプレックスを抱く「当事者」や専門家にお話をうかがいました。

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