馬に乗りながら行う球技「ホースボール」

みなさんは、ホースボールというスポーツをご存知でしょうか?ホースボールは馬に乗りながら数人でボールをパスしてゴールを目指す競技です。今回の記事では、ホースボールのルーツやルール、日本での現状などを解説します!

ホースボールとは

日本ではあまりなじみのないスポーツですが、ホースボールとはどのようなスポーツなのでしょうか?まずは、ホースボールの競技概要やルーツについて解説します。

異名は「ケンタウロスのラグビー」

ホースボールは、2チームに分かれてボールをゴールに入れるという点ではバスケットボールやサッカーに似ているともいえます。しかし、それを馬に乗って行うので「馬といえば乗馬や競馬でしか見たことがない…」という方は、馬の機動力とプレイヤーの激しい動きに驚くはずです。

馬を巧みに乗りこなしながらの、上半身を使った力強いパスやシュート。さらに、ボールの奪い合いやゴールへ直進する両チームの競り合いなどから「ケンタウロスのラグビー」の異名が付きました。

ルーツになった遊戯「パト」とは

パトは現在、アルゼンチンの国技にもなっているスポーツです。もともとは、南米の「ガウチョ」と呼ばれる人たちが行っていた遊戯で、馬に乗ったままアヒルを奪い合って自分の牧場までアヒルを持ち帰ったものが勝者とされたといわれています。

パトは牧畜を行うガウチョたちの騎馬能力や度胸の見せ所でもありましたが、一方で生きたアヒルへの手荒な扱いや事故につながる無謀な競り合い・命にかかわる乱闘が批判されることもあったそうです。

そこで、同じく馬上で行う競技として歴史の長いポロなども参考に、しっかりとルールを決めてスポーツとして確立されました。このスポーツとしてのパトを楽しんでいたフランスの人たちが「さらに多くの人が楽しめるスポーツになるように」と規定に変更を加えたものがホースボールです。

興奮必至のスピード感×曲芸的プレイ

パトからホースボールが生まれる過程で、コートの広さ・競技時間・パス回数などの規定が変化しました。この変更によって、ホースボールはより展開が速い&見どころが詰まったスポーツになっています。

たとえば、馬に乗ったまま地面に落ちたボールを拾ったり、馬に乗った騎手同士が並走してボールを奪い合ったりといったパトの迫力はそのままホースボールにも引き継がれています。くわえて、チーム内でのパスのやりとり・狭い範囲での巧みな手綱さばきなどスピード感のあるゲーム展開がより楽しみやすくなりました。

ルール

ここまで、ホースボールについて大まかに紹介してきました。では、実際にはどのようなルールに沿ってプレイするのでしょうか?

プレイは1チーム4騎で

コート内で動くことができるのは、各チーム4騎。それに加えて、リザーブが2騎の合計6騎で試合に臨みます。交代のタイミング・回数は自由で、試合中は6人がローテーションを組むようにクルクルと交代しながら試合を進めることが多いようです。

ホースボールには女性のみが参加する試合もありますが、通常のチームは男女混合。ボールを奪い合う様子を見ていると「女性は不利なのでは…」と思われがちですが、ボールを地面から拾う際やパスなどでは身軽さや柔軟性も必要です。

ボールのピックアップは見所の一つ

ホースボールでは、ボールが地面に落ちても馬から降りる・スピードを変えるなどはNG。走っている馬の上で、馬にまたがったまま上半身をボール側に倒すようにして一瞬のうちにボールをピックアップします。

普段乗馬をやっている立場から見れば「もはや落馬必須では!?」と思えるほど重心を傾けた体勢になりますが、もちろん素早く姿勢を立て直して再びゴールを目指します!

ドリブルとパスでゴールを目指す

ホースボールでは、同じ選手が10秒以上ボールを保持すると失格です。また、ボールを確保したら直接ゴールに向かうのではなく、シュートまでにチーム内の3人に続けてパスを回さなければなりません。

こうしたルールがあるからこそ、ホースボールは個人の技術力だけでなくチーム力も楽しめるスポーツになっています。練習を積んだ選手たちを見ていると難なくパスを回しているように見えますが、おそらく実際に挑戦したら、手綱から両手を離して決まった方向にボールを投げるだけでも一苦労でしょう…。

ホースボールに使用される馬

馬は品種によって走るスピード・体力・性格などさまざまな特徴があります。そのため、馬術競技の中でも「種目によって優秀とされる品種が異なる」という場合もありますよね。では、ホースボールで活躍しているのはどんな馬なのでしょうか?

ホースボールの馬はサラブレッド

各国の伝統的な馬術競技では、それぞれの地域で生まれた固有の馬が使用されているのをよく見かけます。それを踏まえるとアルゼンチンにルーツを持つ競技ならアンダルシアンやクリオージョといった品種が活躍しているのかな?と想像しましたが…意外にもホースボールに最も使用されている馬はサラブレッド

もちろんアンダルシアンやクリオージョは方向転換の多い「横の動き」に強いので、小回りが必要なホースボールも器用にこなせるはず。しかし、パスを3回まわしてから一直線にゴールに向かうための「直進する速さ」は、やはりサラブレッドがピカイチのようです。

また、ホースボールは「地域特有の競技」でなく広く世界で楽しまれるスポーツを目指しているという点からも、多くの国で手に入りやすいサラブレッドは競技馬としてぴったりの品種といえます。

引退馬の活躍の場に

先ほどお話したように、ホースボールに出場する馬の7~8割はサラブレッド。しかも、競馬を引退した馬たちもたくさん活躍しています。日本ホースボール協会でも、ホースボールの普及だけでなく引退馬を乗用馬・ホースボールの競技馬として再調教することに力を入れているそうですよ。

日本ではまだまだヨーロッパ・南米ほど普及が進んでいないホースボールですが、もっと競技人口やサポーターが増えることでサラブレッドの引退後の選択肢も増えていきそうですね。2022年には日本もホースボールのワールドカップ初出場を果たしたので、今後さらに国内でも人気のスポーツになってほしいです!

まとめ

ホースボールはアルゼンチンで行われている「パト」から生まれたスポーツです。球技と馬術が組み合わさった新感覚のスポーツですが、きっと一度観戦したら「すごい!馬のスポーツってこんなのもあったの?」と釘付けになってしまうはず。

国内では千葉県富里市にある日本ホースボール協会の練習馬場で体験レッスンなどを受けることもできるので、この記事や競技の動画を見て気になった方は、ぜひ実際に挑戦してみてはいかがでしょうか?

日本ホースボール協会さんのホームページはこちらです→

© 株式会社ワールドマーケット