諫早のNPO有明支縁会 デジタル教材で不登校生支援 学習意欲高め社会的自立へ

画面に映し出された相談への対応を話し合う草野理事長(中央)らメンバー=諫早市、有明支縁会の活動拠点

 不登校の児童生徒が過去最多を更新する中、デジタル教材を活用して学習意欲や自己肯定感を高め、学校復帰や社会的自立につなげる民間レベルの取り組みが今月、諫早市で始まった。教育関係者もボランティアでメンバーに加わるNPO法人有明支縁会のオンライン学習支援。保護者の相談にも乗り、親子のコミュニケーションを促して改善を図る。自身も不登校の子を持つ親だった草野紀視子理事長(53)は「NPO法人だからこそ柔軟に対応できる面もあると思う。当事者家庭に寄り添っていきたい」と話す。

 ♦切実なSOS
 10月20日夜、市内の草野理事長の自宅敷地に整備した同会の活動拠点。「力を貸してください。日常生活の中に何か一つでも変化があればと思っています」-。集まったメンバーが見詰めるモニターには不登校の娘を持つ母親からの切実なSOSが映し出された。
 中学1年の娘は新型コロナ感染の後遺症から倦怠(けんたい)感を訴えて学校を休み、授業に遅れた焦りから不登校に。投げやりな気持ちになって自傷行為にも及んだ。メンバーからは「親子双方へのフォローが必要」との声が上がった。
 災害ボランティアなどに取り組む同会が市内外の不登校の小中学生を主な対象に新たな活動を始めたのは、コロナ感染後に不登校になったという複数の相談を受けたことがきっかけ。要件を満たせば、文部科学省が情報通信技術(ICT)などを活用した自宅学習も学校長の判断で出席扱いにすることを認めていることに着目した。

 ♦「救いの手を」
 不登校の理由や子どもへの接し方が分からずに悩む親も多い中、現職の小学校教諭や元中学校校長ら教育関係のボランティアメンバー、心理カウンセラーの資格を持つ草野理事長らが当事者家庭の状況を共有して助言、サポート。民間事業者が個々の学力に合わせて学べるよう開発・提供しているデジタル教材を活用し、各教委や学校、行政、外部のメンタルヘルス専門医らとも連携していく。生活困窮世帯には同会がデジタル教材利用料の一部を負担。趣旨に賛同する東京神田ロータリークラブの助成で整備した活動拠点は、自主学習などができる“居場所”としても開放する。
 文科省の2022年度調査によると、小中学校で病気や経済的理由などを除いて年間30日以上欠席した不登校の児童生徒は、29万9048人(前年度比5万4108人増)と過去最多を更新。本県も公立小で977人(同232人増)、公立中で2038人(同390人増)と増加傾向だ。
 全国調査では、小中学生の不登校の要因として「無気力・不安」が全体の51.8%でトップ。「親子のかかわり方」も7.4%いた。ICTなどを活用した学習で出席扱いが認められたのは小中学校で1万409人。「GIGAスクール構想」で全ての小中学生に1人1台のパソコンを配備していることもあってオンライン学習支援は広がりつつあるが、文科省によると、各地の教委による取り組みが主体という。
 「救いの手があれば不登校の子どもが心理的に追い詰められず、勉強を続けることができる。支援し合う形が本県でも進んでいけばと思う」。こう語るのはメンバーの公立学校教諭だ。
 20代の長女が小学校時代に不登校だった草野理事長は自身の経験を振り返り「不登校の子どもたちには『あなたは独りぼっちではない。支えてくれる大人は必ずいる』というメッセージを伝えたい」と話している。
 問い合わせはメール(info@tasukeaitai.org)で。

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