再資源化率の向上へ 対馬市が効率的な生ごみ回収へ実証実験 対象地区に大型バケツ設置 長崎県

対馬市が実証実験で設置した大型バケツ=対馬市厳原町

 生ごみの再資源化を進める長崎県対馬市は、効率的な生ごみ回収に向けた実証実験を始めた。対象地区に大型バケツを設置。そこに住民が生ごみを入れ、市が一括回収する仕組み。ごみのリサイクル率が8割を超える先進地・鹿児島県大崎町をモデルにした。
 対馬市は生ごみを分別回収し、堆肥化する取り組みを2013年度に始めた。堆肥は条件付きで、無償配布している。
 市環境政策課によると従来の回収方法は(1)申し込みをした世帯に市が小型の白いバケツを配布(2)各世帯が白いバケツに生ごみを入れて所定の場所に出す(3)中身だけ回収されて堆肥化される-という流れ。
 ただこれでは、申し込みが必要な上、住民は回収のたびに、白バケツを持ち運ばなければならないため不評だった。このため、申し込み世帯は市全体の15%程度。22年度のごみ焼却量約1万トンのうち、生ごみは3分の1程度もあり、思うように効果が上がっていないのが実情だ。

従来の生ごみ分別回収で使用されている白いバケツ

 そこで市は、鹿児島県東部に位置する大崎町に着目。人口1万2千人ほどの同町は焼却施設がないため、20年以上前からごみの再資源化に力を入れている。リサイクル率の全国平均が約2割なのに対し、同町は驚異の約8割。「日本一」に14回輝いた実績もある。
 町や地元企業などでつくる「大崎町SDGs推進協議会」は、同町の生ごみ分別回収や堆肥化の取り組みを他自治体に広めるプログラムを展開。採択を受けた対馬市の担当者らが今年7月、現地を訪れ、研修に臨んだ。
 研修を踏まえ、同市は10月、同町の生ごみ回収法を導入。同市厳原町の久田道、白子両地区の計9カ所を実証実験の対象地区とし、それぞれに大型バケツを設置。住民に生ごみを直接入れてもらうことにした。
 申し込みやバケツの持ち運びといった手間が省けたことで、住民からは「便利になった」との声が寄せられているという。市は今後生ごみ回収量のデータを収集。住民へのアンケートを実施して使い心地などを尋ねた上で、全市的な展開を目指す。
 市環境政策課の龍井魅都主事は「大型バケツの設置は生ごみ回収業者の手間も省け良いことづくし。市民にとって何が便利かを考えつつ、効率的な回収で再資源化率を向上させていきたい」。大崎町の担当者も「生ごみの再資源化はCO2削減につながり、簡単に住民が脱炭素に貢献できる。行政としてもローコストというメリットもある」としている。

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